マニュフェスト原理主義の鳩山政権で、マニュフェストに書かれていない重要施策は何と言っても社民党、国民新党との連立政権であろう。たしかに国民は選挙で民主党を選択した。しかし、社民党や国民新党を選択したわけではない。国民新党に至っては、綿貫代表と亀井久興幹事長までもが落選しているのだ。その国民新党から連立政権の閣僚となった亀井(静香)氏の掲げるモラトリアム(資金繰り悪化の中小企業に対し債務返済を3年程度猶予する)なるものは、国民新党のマニュフェストには書かれていても、一体民主党のマニュフェストのどこに具体的に書かれているのであろうか。
モラトリアムは資金繰りに苦しむ中小企業救済という面から、一見正当性がある様にも思えるが、実は日本経済全般に及ぼす悪影響は多大であろう。なによりも日本の金融機関に対する国際的な信用力を著しくおとしめる。既に株式市場では亀井氏の発言だけで金融株が下落傾向を見せている。そもそも借りたものは返すという私企業間の法に基づく契約に対し、政府が金融機関に公的介入するというのは、よほどの恐慌か危機的状況でない限りは許されない筈である。これによって金融機関は貸倒引当金の積み増しを行わねばならず、様々な悪影響が出てくる。これはまた一面では借手側の中小企業経営者のモラルにも影響しかねない。
米国の住宅バブルを作り出したサブプライムローン問題は、その根本にはモーゲージローン(住宅担保ローン)で借手側に返済能力がなくなった場合、住宅を手放すだけで借入額の返済が全て免除される、いわゆるノンリコース(物的担保はあるが人的担保はないという意味での不動産業界用語としての意味)がカリフォルニア州等の州で認められている事に問題がある。現在の様に住宅価格が下落してしまった状況では、借入額が住宅価格をはるかに上回る結果となっており、これは金融機関側に多大な損失をもたらす結果となっている。何もサブプライムに限らず、プライムにおいても、例え借手に他の資産や収入があっても、当該物件にはこのノンリコースは原則適用されるのであるから、今年になって100行以上にもなる米国で金融機関の破綻が続出するのは頷ける。金融機関の破綻は結果的には国による公的資金の投入等で国民の税金で負担せざるを得なくなるのだ。
新政権のマニュフェストに列記されているポピュリズム的政策では、「パイの分配」にあまりにも力を入れすぎるあまりに、「パイ全体の拡大」に努力する事をすっかり怠り、結局は各人への分配量を減らしてしまうという馬鹿げた事につながりかねない。この厳しい国際競争の中でいたずらに国の経済力を弱めてしまうポピュリズム政策はまさに麻薬の様に国家国民の体を蝕んで行き、国際社会における日本の政治力ナシ、軍事力ナシ、文化力ナシに加えて、最後の経済力さえナシの状態を作りあげてしまうであろう。国民はマニュフェストの甘い言葉に惑わされて愚かな選択をしたものだ。
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