2009年11月23日月曜日

技術は二番目では駄目

「技術は二番目でも良いではないか」、民主党議員によるあきれた発言だ。技術力というものは一番でなければ早晩市場から消え去るかも知れない、というのが厳しい国際競争の現実だ。これを検証し裏付けるものは中々ないのであるが、ちょうど自動車業界の方から第三者の中立機関による米国市場における「メーカーブランド別 2010年モデルの品質評価データ」というものが送られてきたので、これを御紹介しよう(現物は権威ある”Consumer Reports” で、一目瞭然のグラフで示されている)。

まず第一の点は、対象となる30数ブランドのうちのトップ7位までが日本のメーカーで占められている事だ。これは日常の米国での生活の光景から見てごく自然で当たり前だと思う。南カリフォルニアでの日常の光景という大まかな表現で言えば、目にする車の半数以上は日本車である。

第二の注目点は第8位に韓国 Hyundaiが入っている事だ。これも不思議ではない。日本で韓国車に乗る機会というのはそうないだろう。しかし米国内を仕事で頻繁に出張する際に使う空港からのレンタカーの中には数少ないながらHyundaiの選択肢というのが実に12-13年以上も前からあったのである。当時はレンタカーだけは嫌でも米国車を使わなくてはならないので、毎回何か故障が起こらぬかと心配な事もあり、予約の際は無理を承知で日本車 requestを毎回出していた。そこでレンタカー会社の受付で「残念ながら日本車はありませんが、Hyundaiならご用意できます」と言われた時はつい、Lucky!と喜んで OKしたものだ。乗り心地とエンジンの静かさは日本車と同等であり(当時、エンジンは日本から`韓国に輸入していたかも知れない)長距離運転でも全く疲れない大変満足のいくものであった。

第三の注目点こそが本来の主題であるが、ドイツ車の品質評価が相対的に低い事である。まずドイツ勢の中ではトップのポルシェの第9位は例外として、VWが第21位、Benzが第23位、Audiが第24位、BMWが第26位とポルシェ以外は軒並み 20位以降である。更により注目すべき点はグラフで見ると品質のぶれの幅を示す横棒がドイツ車の場合は際立って長い事、つまりぶれが大きい事であり、これこそが技術力が劣化し出す兆候だ。これは日本のドイツ車ファンの方には意外に思われるかも知れないが、私が二回にわたるドイツ勤務の際に経験した BMWとBenzの使用体験からもついうなずいてしまうものである。つまり故障が日本車よりも間違いなく多いという事だ。ドイツ人社員に言わせると、「ああこれはトルコ製なんですよ。だってベンツのドイツの工場では Gast Arbeiter(外国人労働者-主にトルコ人)が車を作っていますから」と。そういう事で、二回目のドイツ勤務から再び米国に戻り、米国では 4台目の日本車のリースを決めた時は全く迷いは無かった。現在の車で米国では 5台目の日本車となるが3年のリース(米国では個人でもリースが普及)期間中に故障なんてものはいかなるものも想定されていない。事実、いずれも毎回見事に故障は皆無である。

それでは日本人が今も固く信じている「ドイツの技術力」がなぜ今や韓国の Hyundaiや Kia(第14位)までに負けるに至ったのか。その遠因はやはり、民主党的「高福祉・高負担」と民主党的「技術力追及に対する甘やかしの姿勢」ではないだろうかとついこじつけてしまいたくなる。

私自身以前転職した先がその分野では世界一の技術力を持つという中小のメーカーであったが、日本の製造業の現場はすざましい。その技術開発と品質管理の厳しさは自衛隊、いや帝国陸海軍並みかそれ以上のものであろう。日本に出張したおりに、トヨタ生産方式の改善コンサルタントの方と数回東北地方の工場に同行した事があるが、現場の責任者への問題点指摘と改善要求の際の怒号罵声のすざましさは殴りかからんばかりの迫力だ。会社としては中小企業だけに賃金水準や付加給付などは「中福祉」企業であるが、それでも現場の作業員には、その分野では世界一の技術力を持ち続けるという強い自負と誇りが態度に表れており、彼らは高温、騒音、油まみれの作業環境などは全く気にしない。これこそが技術立国日本の力の源泉だと思う。間違ってもドイツの自動車産業のケースとならぬ様、民主党に替わる早期の政権交代を期待したい。

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