2009年11月9日月曜日

郵政改革

新政権のマニュフェストには「郵政事業の見直し」が書かれている。まさか郵政の民営化をまたもとの完全国営に戻すという話ではないだろうが、具体的には郵政事業の4分社化を見直し、郵便事業、簡易保険、郵便貯金の郵政三事業を一体化する事に戻す様だ。民主党はサービスの一体化で地方などでの顧客の利便性と公共性を確保すると説明している。

現在の日本郵政は民営化されたといっても株主は 100%財務大臣で、国営のままである。それでこの会社をまず民間の経営手法を取り入れて経営的に自立させ、競争力をつけさせた上で、自力で資金調達なり、上場する様にさせるのが当初の狙いであった様に思う。そうする事によって、昔の様に郵便貯金や簡易保険で郵便局に集まる 300兆円もの巨額のお金が国債購入を通して、無駄な公共事業や特殊法人に流れ、赤字垂れ流しとならぬ様にしようとしたものであろう。最終的には赤字のツケは国民の負担となるからである。

小泉内閣での郵政民営化のもう一つの狙いは、従来から自民党内で田中角栄氏の流れをくむ派閥が地方の特定郵便局のネットーワークを使って自民党支持の組織票固めをし、それを背景に党内派閥での圧倒的な力を堅持し、300兆円のお金の流れを田中派が仕切っていた事を壊滅させる事にあった様だ。まさに郵便局にからむ組織と金を断ち切る事が反田中派の小泉氏にとっては怨念にも似た政治的情熱でもあったわけだ。そこに来て金融バブル開花途上のアメリカからの「経済の構造改革」への要求と圧力であったので、それに小泉氏は乗ったのであろう。

そうなってくるとあれだけ大騒ぎした郵政民営化反対の動きにはどうやら二通りの流れがある様に見えてくる。第一のグループは、田中派の流れを組む一団、即ち郵便局で恩恵を蒙ってきたグループ、あるいは選挙区の事情で特定郵便局の組織票に頼らざるを得ないグループである。第二のグループは、300兆円もの国民の財産を金融や保険の形で易々とアメリカの拝金・強欲社会に取り込まれてしまっては国益を損ねるという平沼氏ら保守派の考えを持つグループである。いずれもが、「日本の地方での伝統的な共同体や価値観を守る」という事では一見同じ様に見えるが、前者はあくまで「自己利益の為」、後者は「国益の為」であり、その二者の重複や中間というのもあって複雑である。

この面では新政権での小沢氏の「郵政民営化見直し」は、現在の民主党政権の権力基盤を磐石のものとし、自らの権力を堅持する事の狙いから、共産党や公明党の様な強固な組織票固めの基盤をもう一度再構築する事を意味するものである。しかし、民主党全体での各人の本音はどうなのだろう。そもそも政権につく前からの小泉氏による郵政民営化への動きは、当初は民主党の松沢氏(現神奈川県知事)、前原氏、上田氏(現埼玉県知事)らとの超党派での郵政民営化研究会からであったから、今後どう民営化を見直していくかについては、民主党内での小沢氏以外の各人の思惑と本音は複雑であろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿