2009年11月17日火曜日

オバマのオジギ

オバマ大統領の皇居訪問の際の両陛下へのお辞儀の仕方が米国で批判されている。大統領があまりにも謙り過ぎるという事であろう。たしかに写真で見ると、どうみても屈みすぎでおかしい。写真というものはその背景にある様々な物語や出来事、歴史、文化までをも写しだすものであなどれない。

それではこの写真を見て、皆さん、500字以内に思いつく事を何でも良いから列挙せよとの設問をしてみよう。私ならアタリかどうかは別として即座にこう答えるだろう。

1. まずこの挨拶の仕方はおかしい。しかし決して失礼なものではないので日本側では問題にはしない。米国大使館員に教えられた通りのものを自分なりに実現したのだろう。
2. これはオバマ大統領の教養の問題であり、国家元首としていかに相手国の元首に振舞か、またそれがいかに重要かを知らない。
3. 米国内で批判されている。それは対等の国(防衛問題)ではない日本に何故かように謙ねばならないのだろうか。有事には日本の為に米国人の若者が血を流すというのに。
4. オバマ大統領は、従来の大統領と違って、日本人に対する拘りがあまりなくて、素直な気持ちでむしろ両陛下への尊敬と親しみを表現している。
5. オバマ大統領のお辞儀の仕方が例え変なものであって、何よりも両陛下の暖かく迎えられているお顔と立ち居振る舞いが大変立派で上品で美しい。
6. 終戦直後のマッカサー司令官と昭和天皇の写真を思い出す。敗戦国の元首が占領軍司令官よりも立派に見えた。歴史伝統の重さだ。

と、まあこんなところであろう。

こう書き出してみると、だんだんと的が絞れて来た。

オバマ大統領の変なお辞儀の写真を見て、敢えて一つだけに絞ってコメントを書くとすれば、これはオバマ大統領には歴史伝統というものに接してきた事で体得する「免疫」の様なものがない事を現しているのではないか、と見るのが私の意見だ。

昨年の選挙で思いがけず急に国家元首になって、訪日し、初めて歴史と伝統の象徴である両陛下のお姿を見た。そして意図せずああいう極端で不自然なものとなってしまったのではないか。大統領はたしかに成績優秀で演説がうまくて、それに知識はある。しかし、欧州の政治家と違って本当の「深い教養」なるものは持っていないのではないか。

食べ物はチーズバーガー、マイケルジャクソンの曲は全曲知っているファンと自称する大統領はその程度の薄っぺらい大衆文化しか持ち合わせていないのであろうか。その点、フランスなりイギリスなりドイツなりの政治家はこの点深い教養があるので、どう振舞うかは充分知っている。教養は単なる知識だけではなく、芸術や文化などから得られる感性をも加味した人間の精神性を高めるより高度の次元にあるものであろう。

さて、次の写真は 1945年9月27日に撮影された有名なものだ。皆様御存知の通り、この写真も多くのものを語っている。昭和天皇はこの時点では敗戦国の元首で死刑を宣告されてもなんら不思議ではないにも拘わらず、ごく自然にすーっと姿勢よく立たれている。なんら媚びる事もなく臆する事もなく。

一方、マッカーサー司令官はやはり歴史と伝統のない国のタダの戦争のプロだ。司令官のこの不思議な姿勢は何を物語っているのだろう。まず、日本の軍人なら敗戦国の元首と写真におさまる場合、こういう姿勢はとらない。武士道に基づく敗者への配慮と礼儀を考え直立不動だろう。おそらくむしろ昭和天皇の立ち居振る舞いに、その空気に押されたのではないか。こちらから見て陛下と反対側の左に傾いて、手が彼の心の状態を示す様に不安定だ。

これが米国人が絶対に手に入れる事に出来ない貴重な「歴史と伝統」の重さというものだろう。

総理も冒頭のオバマ大統領の写真を見て、まさか「そら見ろ、日米関係は対等だ」と確信されたのではないだろうが。

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