2009年11月29日日曜日

バーミツワ


銀座にあるバー「ミツワ」ではない。ユダヤ教徒の13歳になった男子の成人式 Bar Mitzvahの事である。女子の方は一歳早く12歳の時に同様のベネミツワの儀式がある。日本ではユダヤ系の人達との交流の機会はそうないであろうが、米国でビジネスをすると必ずといってよいほどめぐり合うのがユダヤ系の人達だ。米国ではビジネス分野のみに限らず、医師、弁護士、政治、学問、メディア等の専門分野で数多くのユダヤ系の人達が活躍していて、一般的に彼らは能力が高く優秀であるとの評価だ。

そういうわけで、私も取引先のユダヤ系の M社長から彼の一人息子が13歳になった時に、このバーミツワのお祝いの会に招待されて出席した事がある。このM社長の会社とは当初は複数の代理店の一つとしての取引であったが、最終的にはこの会社を総代理店にして全米での流通の合理化と売上業績のアップを図った。M社長は私と同じ世代で、ニューヨーク生まれであるが、若い時に「僕はドジャーズと共にロスアンゼルスに移ってきた」というほどのドジャーズファンである。ロサンゼルスでの幼友達と共同で現在の会社をゼロから立ち上げてきたのであるが、今では業界ではトップクラスの流通専門の会社に育て上げた。

例えば日本企業がスポーツ用品の様な大衆消費商品を全米の小売店や量販店網で販売して行こうとなれば、その対象地域の大きさにまずは地図を見てため息をつく。カリフォルニア州だけでも日本の国土の 1.1倍の広さであり、米国全体では25倍ともなって、日本国内の様に「ちょっと小売店の売上状況でも調査してきます」というわけにはとても行かない。

西海岸から東部、あるいは中西部に出張するには時差もあって往復の時間だけでも行きに一日、帰りに一日余計に見ておかねばならない。長時間のフライトで空港についてからでも、更にレンタカーで 1-2時間という所もあり、複数の有力小売店を見て回るとなると、実際に訪問して色々話を聞き調査する時間よりも道中の時間の方が圧倒的に長い。つまり恐ろしく効率が悪い事となる。

従って、米国では全米各地に広がる多数の小売店に商品を販売していく場合は、流通の合理化に特化し、優秀なセールスレップ(Sales Representative)を抱える組織に依存せざるを得なくなる。また近年ではこういう小売店を通さず、顧客から直接 internetで受注し、販売する形態も急増してきているが、これも多くの電話オペレーターと配送組織を持たねばとても対応できない。つまり、この米国市場と言う巨大な空間の広がりにはとてもメーカー直販なるものは不可能であり、そういう流通を一手に引き受ける卸売業の輸入代理店の存在は不可欠となるわけだ。

米国の流通市場では、狭い日本市場での旧態依然とした卸売業の様にメーカーの営業の人間とゴルフと飲食で取引関係を維持すればよいというものではなく、何事にでも全て合理的な努力の積み重ねをしていかねば、とても業界では生き残れない。一般に、輸入代理店の機能と役割は、受注、在庫、配送、与信、回収、販促と多岐にわたるものとなるが、中でも販売面でその手足となって小売店との接点となるセールスレップの教育と維持管理がその代理店活動の成否を決めるものとなる。そこにはいかに米国とは言え、人間関係が強く作用する領域であって、M社長の会社の成功はひとえにこのM社長の人柄に負う所が大きい。

このM社長の人柄とは一言で言えば、契約社員であるセールスレップも含めて従業員達を家族同様に心から大事にしているという事であって、珍しく日本企業の様に終身雇用的である。そこから生まれる従業員の仕事への熱意は年に一回開かれるセールスレップの大会の雰囲気や、日常の我々とのコンタクトでも如実に感じ取れる。私がたまたまそういうM社長の様な人物にめぐり合ったからかも知れないが、米国在住の日本人からは同様の話をよく耳にするので、私の中のユダヤ系米国人のイメージはすこぶるpositiveなものである。

ところでこのユダヤの民の国イスラエルを日本の現職首相としては珍しく訪問し、この国が要ともなる独自の中東外交を推し進めようとしたのが小泉氏であったが、その後国内内向き姿勢一途の新政権の中東外交なるものがいかなるものかを聞いてみたいものだ。

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