2009年11月9日月曜日

政権交代

鳩山政権の掲げるマニフェストが早くもインチキである事が露呈しはじめた。「脱官僚」の筈が日本郵政新社長には既に天下りをした大物大蔵官僚を起用し、更にワタリをさせんとする事や、税金の「無駄使いカット」の筈が最高額の概算要求など。いやそれよりも重大なのは普天間基地移設問題である。今までの鳩山新政権とオバマ政権のやりとりを見てくると、何やら「出来レース」的なものさえ感じる。事実、ゲーツ国防長官の頑なな姿勢と昨日からの米国紙で報道され、また日本の新聞各紙でも紹介された”the hardest thing right now is not China, it's Japan"の高官発言である。日本の政界とジャーナリズムはこれに微妙に感じるのである。

そもそも欧米各国の政権交代と比較してみれば、今回の政権交代に国民が興奮している様自体が滑稽である。ドイツ、フランス、イギリス、あるいは米国の政権交代とは本質的に異質なものであるからだ。つまり、民主党政権の 5人のリーダーのうち、菅直人氏以外の小沢、鳩山、岡田の 3氏は田中角栄全盛時代の自民党員経験者であったという事実。残る前原氏は日本新党出身ではあるが、細川政権成立なければ、政治家を目指す以上自民党員になるしか当時の選択肢はなかったであろう事である。こういう幹部の「出自」そのものから現政権は自民党政権の亜流そのものである。その辺を完全に米政権に読まれてしまっているのであろう。つまり政権交代したのだから、ノムヒョンの時の様に多種荒い鼻息のガス抜きくらいは多めにみてやろうではないかという親心である。日米同盟の機軸はびくともしない。普天間基地移設もそもそも橋本政権時代に日本からお願いして言い出した話であり、それがいやならこのまま海兵隊は普天間基地に居座るだけという極自然な話である。米国側は多少鳩山政権が鼻息荒くごねたところで失うものは何も無いので威嚇などはもとより不要なのである。

本当の政権交代の例と言えば、1998年、それまでの16年の長きにわたり続き政権の座にあり、ドイツ統一という偉業を成し遂げたコール CDU/CSU政権(キリスト教民主同盟、社会同盟)に変わり政権交代を果たしたシュレーダー氏率いるSPD(社会民主党)と緑の党の連立政権の
例の様なものであろう。このシュレーダー氏というのは母子家庭で貧困の中で苦労して育ち反体制的な活動をしていた人であり、ドイツ赤軍テロリスト裁判では弁護士まで勤めた筋金入りの人物である。また一方の緑の党の代表のヨシカ・フィッシャー氏は80年代初めに緑の党が議席を得た際、議会でヒゲ面、スニーカーと薄汚いジャケット姿で登壇し、副議長に向かって「尻の穴」を意味する下品な言葉を吐きかけた(それがテレビで放映された)これまたバリバリの反体制派である。

そんな二人が首相と外相として仲良く政権の中枢で国家を運営していくとなれば、選んだ側のドイツ国民はさぞや心配したであろうと思うかも知れない。しかし、当時ドイツ人達は、「なーに、政権についたとなればそのうちにコロッと180度変わるから心配無用、いつまでも反体制的な発言、行動をするほど馬鹿な奴らではないよ」と断言していた。確かにその通りである。新政権は早速コソボ紛争ではそれまでタブー視されていた戦闘部隊を域外に派遣し参戦し、更にはアフガン戦争ではいち早く米国を支持し、ドイツ連邦軍戦闘部隊をアフガニスタンに派兵したほどである。 もともとドイツは平和ボケした日本とは違い、そういう筋金入りの反米、反体制政治家達が政権をとろうが、依然として12ヶ月の徴兵制をしき、NATO軍に加わって、集団的自衛権の元に自主防衛体制をしいている国である。万一、米国が手を引いても核兵器を保有するイギリス、フランスと集団的自衛権で守られているのである。そういう自主防衛の国だからこそ、例えばイラク戦争では国連決議がない事を理由にフランスと共に堂々と派兵をしないという様に米国に対しても対等な立場でものが言えるのである。この辺が鳩山、岡田の世間知らず坊ちゃん外交とは根本的に違う所である。集団的自衛権等での自主防衛体制さえなくて、自国を一方的に守ってくれている米国とどうして対等に話が出来るのだろうか、小学生でも判る話である。そう言えば、貧困母子家庭で苦労して育ったシュレーダー氏と、14億円の資産でぬくぬくと何の苦労も無く育った鳩山お坊ちゃんとでは、もともと政治家としての素質と根性を比較する事自体無理な話かも知れない。

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