2011年4月29日金曜日

国勢調査結果に見る米国

米国でも国勢調査が10年ごとに行われるが、その2010 Censusの結果が公表されている。「州別」、「人種・民族別」の数字を見ると米国全体の人口変化の傾向がつかめるが、結論を簡単に纏めると以下の二点だ。

1. 州別では、「東部と中西部」から「南部と西部」へと人口比重のシフトがある
2. 人種・民族別では、民族別に見たヒスパニックの急激な増加傾向が見られる

人口の全体で見れば総人口は約 309百万人となり、2000年の約281百万人から約 27百万人、9.7%の増加である。増加率自体では前回の10年間(1990-2000年)の伸びの 33百万、13.2%を下回っているものの、1950年の人口である 151百万人からは60年間でおおよそ倍増している。

州別での全体に対する人口構成では、カリフォルニア 12%、テキサス 8%、ニューヨーク 6%、フロリダ 6%と従来からの big-4 で全体の人口の 32%で約1/3を占めている。この4州については企業の販売・マーケティング上や大統領選挙での集票の際には戦略上最も重要な地域である。更にこれに続くのが、イリノイ、ペンシルバニア、オハイオ、ミシガンの中西部 4州で合わせて全体の16%、その後はジョージア、ノースカロライナの南部2州が続きそれぞれ 3%づつとなる。

問題は州別の人口増加率である。増加率の高いものの順で見ると、ネバダ 35%、アリゾナ25%、ユタ 24%、アイダホ 21%と西部に著しい増加が見られる。その後はテキサス、ノースカロライナ、ジョージア、フロリダの南部がそれぞれおおよそ 20%増で続き、更に西部のコロラドと南部のサウスカロライナがそれぞれ 17%増と15増%で続く。要するに米国の人口増加は中西部や東部では最早見られず、南部と西部に集中しているという事である。この傾向は既に前回の調査時の1990-2000年の10年の間に同様に見られたが、それが20年間に亘り継続しているという事だ。

さて、注意すべき点は人種別・民族別の方である。この国勢調査では設問はまず二つに分けられる。第一は「Hispanic or Not」というもので、Hispanicという概念はrace (人種)ではなく、ethnicity(民族)に関するものである。Hispanicの中では更に 「メキシコ&メキシコ系」、「プエルトリコ」、「キューバ」、「その他」と分かれている。極めて大雑把に言えば、ニューヨークにはプエルトリコ、フロリダにはキューバ、テキサスとカリフォルニアにはメキシコからの移民が多い。

更に第二の設問で人種別の、「白人」、「黒人」、「アメリカインディアン」、アジア系の中の「ハワイ」、「中国」、「韓国」、「日本」、「ベトナム」等という風に分けられ、最後は「その他」となるのだ。従って、第一の設問でHispanicと答えた人は第二の設問で「白人」と答えるかもしれないし、「黒人」かも知れないという事だ。

例えば、メキシコの例をとれば、富裕層、インテリ層はスペイン系の白人であり、中間層にいわゆる我々が浅黒く口ヒゲをイメージする混血系があり、更に下層には小柄な原住民系のグループにと分かれる。この様に人種的には分かれていても「Hispanic or not」のethnic(民族性)な面では Hispanicという一つのグループとなる質問となっているのだ。

ここに米国と言う国の現状及び将来と人口動態の本質を見るべきであろう。今回の調査では米国全体では Hispanicは 16.3%であり not Hispanicは 83.7%である。増加率で見ると2000-2010年の10年で Hispanicは 43.0%に対し、not Hispanicは4.9% だけである。更に州別に見てHispanicの比率の高い順であげると、ニューメキシコ 46.3%、カリフォルニア 37.6%、テキサス 37.6%、ネバダ 26.5%、フロリダ 22.5%、と言う具合である。

つまりおおまかに言えば人口増加率の高い地域ほどHispanicの比率が高いという事である。こうなれば最早、白人がどれだけの比率を占めているかなどという区別は昔の話であって、まさにHispanicの比率が今後それだけ増え続けるのかという事で、この国の性格がどう変わっていくかの方を注視すべきであろう。

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