オバマ大統領は13日、今後12年間で4兆ドル(340兆円)の財政赤字削減策を目指す計画を発表した。現在の財政赤字幅の対GDP比 11%を2015年までに 2.5%以内に抑えるというものだが実現は難しいだろう。因みに2010年度で各国の財政赤字対GDP比は日本が 9.8%、米国が11%、PIGSのアイルランド12.2%、スペイン 10.4%、ポルトガル 8.8%、ギリシャ 8.1%である。
日本の場合の財政赤字は、国債の殆どを国内の金融機関が引受ける事で賄われており、その原資の殆どが国内資金である所が米国との違いだ。これがゆえに日本は政府債務残高が世界一でありながら、一方では対外純資産残高では世界一の債権国と言う結果となっている。米国の場合は国債の引受先を中国、日本はじめ諸外国に依存している為に、政府債務残高では世界でトップクラスであり、かつ対外債務残高でもダントツの世界一の債務国である。
米国の財政赤字額をグラフ化するといかに驚くべきものかが一目瞭然だ。それは 2008年9月のリーマンショック以降、2009年度(2009年9月末まで)が 1.4兆ドルと2000年以降の水準である 平均 0.3兆ドルの5倍近くに急増しており、続く2010年度も1.6兆ドルと更に過去最高記録を更新する見込みだ。また、これによって連邦政府の累積債務残高は昨年2月に米議会が連邦債務上限法で決めた上限の14.3兆ドルを4月には越えるほどの勢いで膨らんでいる。 また債務残高のGDP比ではこれも史上最高の100%(政府保有の金融資産込みのグロス)となる見込みだ。因みに日本の政府債務残高は約10兆ドルでGDP比約180%(同じくグロス)である。
オバマ政権側ではこの上限の引上げを議会に求めているが財政の健全化を主張する多数派の共和党は反対の姿勢を示しており、このままだと米国債の発行や利払いに支障を来たして米国債に対する信用問題につながりかねない危機的状況だ。
この財政赤字の悪化は言うまでもなく、(1) リーマンショック後の景気後退による税収減と7,870億ドルの景気刺激策の歳出増 (2) それ以前からの高齢化と医療費高騰による医療・社会保障費の増大 (3) 2001年、2003年に11年間総額 1.7兆ドルの大型減税を実施した事(1998-2001年の 4年間はいわゆる冷戦終結に伴う平和の配当として財政黒字になった事から) (4) イラク戦争、アフガン戦争の戦費は累計で1兆ドルに達している事、これらが主因である。
歳出面を項目別にグラフ化すれば、これも一目瞭然であるが、(1) 医療費(高齢者と低所得者への援助) (2) 社会保障費(年金等) (3) 国防費 (4) 国債利払い、これら4項目で実に歳出全体の 72%を占めていて、この中でも医療費と社会保障費の合計は42%と全体の半分近くになっている。歳出項目を大別すれば、Entitlementと言われる社会保障費等の「義務的支出」(法律で毎年の歳出額が自動的に決まる)と、国防費や一般経費などの「裁量的支出」(毎年ごとに立法措置で歳出額が決まる)となるが、義務的支出には Pay-As-You-Go条項という財源確保条件が付けられていて、支出を増加させる場合はそれに見合う増税か歳出削減がなされていなければならない。
オバマ大統領としては、この Entitlement(義務的支出)の削減に手を付け、更には裁量的支出の国防費等の伸びを凍結する計画である。いずれにせよ、共和党の主張する財政の健全化と大型減税か、あるいはオバマ政権の目指す景気と雇用の回復か、この辺のバランスが難しいところであり、これが当面の与野党の駆引きの焦点だ。
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