クリントン国務長官が17日に来日する予定である。ヒラリー・クリントン氏に対する2008年大統領選予備選での反対陣営からの批判は、「冷たい、見下す、傲慢」の「上から目線」の3点セットであったが、国務長官就任後の彼女の評判は決して悪くはない。2009年4月のオバマ大統領のプラハでのいわゆる「核廃絶宣言」の直後には、滞在先の中東ですかさず「中東の同盟国が核の脅威にさらされる様な場合には米国は同盟国に対し、核の傘の供与を躊躇しない」と明言した。つまりイランによるサウディ、イスラエルへの武力攻撃を牽制したのである。もとよりオバマ大統領の「核廃絶宣言」なるものはルーピー首相の国連での 25 by 25 (2025年までにCO2排出量を25%削減する)宣言と同様、実現性のない空虚な政治ショーにすぎない。その点、クリントン国務長官の方が国際政治の現実をより理解していると思われる。
さて今回のクリントン氏の訪日目的は何か。まさかわざわざ大震災のお悔やみと励ましに来るのではあるまい。ある元外交官氏によれば、ルーピー首相辞任の前にはキャンベル国務次官補が来日したので、今回は菅首相に引導を渡しに来るのではとの解説をされていたが、そんな事は絶対ないと言い切れないのが菅政権の現状だ。しかし間違いなく言える事は、今回の大規模な米軍の支援の日本政府への大きな「貸し」に対する何がしかの見返りを求めて来るという事であろう。国際政治の現実は善意や同情などの甘い感情が入り込む余地のない、国益の激しいぶつかり合いだ。現在米国が日本に求めるものは2点、それは普天間基地移設問題の解決(外交軍事)と米国の財政赤字縮小への協力(経済協力)である。
民主党政権になってからはすっかり日本政府の外交音痴が諸外国にあからさまに知れ渡る結果となった。菅政権では尖閣海保問題に始まり、ロシア政府の北方領土問題への対応姿勢、そして極め付きは今回の大震災での福島原発問題での後手後手の対応振りである。国際社会はこぞって菅氏の指導者としての能力に疑問を感じ、不信感さえ抱いている。そういう中での米国の国益を一身に背負っての国務長官の来日である。それはもうクリントン氏にとっては外交経験などなきに等しい無能の菅氏、松本氏とは何事を交渉するにしても「赤子の手を捻る以上にた易い」事であろう。
ヒラリー・クリントン氏と言えば誰もが思い出すのが、2008年の民主党大統領候補予備選の時にテレビで流された彼女の感情の起伏である。最初は1月のアイオワ州での予備選初戦でオバマ、エドワーズの両候補に敗れて最下位になった後、集会で支持者からの質問を受けて珍しく涙ぐんだ事である。それまでの彼女のイメージは何事も強気一辺倒であり、米国人の間では「これではビルが浮気するのも判るな」とささやかれるほどの人物だ。その彼女が前人気にも拘らず予備選初戦で最下位になった事のショックが大きかったのであろう。
次はその2ヵ月後、オバマ陣営側からの negative campaignに対し、演説の最後で“Shame on you, Barack Obama.”(バラク・オバマ、あなたみっともないわよ!)と怒りを露わにして結んだ事だ。これは3月のオハイオ、テキサスでの予備選を控えての劣勢挽回の為の強気姿勢のイメージ作りでもあった。その後各地での予備選では一時は盛り返したが、結局はオバマ候補優勢の流れとなってしまったのである。選挙戦でのテレビで映し出されるイメージはあなどれない。こうした彼女の感情の起伏が、終始冷静なオバマ氏との対比でマイナスになったのではないかと思われる。
しかし、国務長官になってからの彼女は政治家としての成熟度も増し、大統領夫人時代からの国際舞台での経験と本来の強気キャラがプラスに作用したのか、なかなかのご活躍ぶりである。国連人権委員会ではIt is time for Gaddafi to go. と強い調子でのカダフィ批判を表明した一方では、リビア空爆には消極姿勢を示すなど外交面でのしたたかさを見せている。さて、これを書き終わって Twitterを見てみれば「クリントンさん、早く来て菅氏に引導を渡して欲しい」との書き込みあり。一日一日ごとに国益を損ねているという菅政権の終わりは近い。
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