2011年4月8日金曜日

中国人留学生

新聞報道によると、中国ジャスミン革命の発起人が実は米国の大学や大学院に留学する中国人留学生である事が判ったらしい。これに対し、中国国内の民主派からは「海外の安全な所に身を置いて行動を求める声には同調出来ない」との反発も出ている様だ。しかし、言論の自由が保障されている米国にいる留学生が internetというツールを使って行動を呼びかける事は民主化を求める側に残された数少ない手段だ。例え「安全な所に身を置いて」と批判されても、何ら恥じる必要はない。彼らには彼らにしか出来ない役割があるのだから。

昨年11月末の拙ブログの「米国への留学生」というタイトルで、Institute of International Education (IIE、米国NPO、国際教育研究所)が ”Open Doors 2010” というタイトルで発表した2010年度における米国の大学への留学生に関する数字を紹介させて頂いた。今でもこのタイトルにはアクセス数が多くいつもトップグループに入っている。この数字の中で顕著なのは中国からの留学生が昨年比 30%アップの急増で全留学生全体で最大の18%を占めている一方、日本からの留学生が昨年比14%ダウンで年々急激な落ち込みを見せている事だ。これを学生に限らない日本の若者の「内向きと引きこもり」現象と捉えるのも正しいだろうが、中国の場合はその留学生の急増の背景は複雑だ。

中国の若者で勉学の道を進むものであれば、多少なりとも自国の体制が矛盾と欺瞞に満ちたものである事に気付くだろう。しかし、それを指摘し改革しようと思っても中国国内には言論の自由がないどころか、自らの身に危険さえ及ぶ。彼らにとっては勉学という大義名分でいち早く中国から逃げ出し、米国と言う自由の国に住み、出来ればそのまま永住し、更には米国の市民権を取得してしまう事が何にも増しての個人としての最優先希望事項であり、また死活問題でさえある。この点については、言論の自由が当たり前で、何事にも恵まれすぎている日本の若者にはあまり理解されないであろう。

米国西海岸では今や中国からの留学生を見ない日はないというほどの押し寄せぶりだ。同じ中国語を喋る「中華系」と言っても、(1) 昔労働移民として大陸からやって来た中国人の子孫、つまり米国生まれの中国人、(2) 戦後香港や東南アジアから移住してきた中国人、(3) 更には中国人ではない台湾人であるが台湾からの移民、と合わせると大別して4種類になる。現在押し寄せてきている中国人留学生の場合は、その服装や英語、立ち居ふるまいから他の3種類の中華系との違いは歴然としている。しかし、一様に彼ら留学生は勉学の機会が与えられたという事よりも何よりもこの自由の国米国に来ている喜びをあらためて感じている様に見受けられる。

米国はもともと国外の圧政、弾圧、迫害、言論封殺、政治的差別、宗教的差別から逃れてきている人達を暖かく迎え入れる国である。西海岸だけでも古くは国民党支配から逃れてきた台湾人、旧フセイン政権から逃れてきたイラク人、イランの現体制から逃れてきたイラン人、旧南ベトナム政権の人々、ミャンマーの軍事独裁政権に対抗する人々、チベット解放運動のチベット族、天安門事件以降逃げ出した中国人と様々なグループがあり、彼らが一様に安心して暮らせる場所であり、また反体制運動の国外拠点にもなっている国だ。

ドイツもまた、最近その受け入れの条件はかなり制限されてきているとは言え、西独時代からドイツの憲法に該当する基本法の第十六条二項で、政治的な理由で迫害を受けた人々の亡命受け入れを保障して来ている。それは言論の自由のない東欧社会主義体制の国々と接してきて、厳しい国際政治の現実に直面してきた事によるのは言うまでもない。「安全と自由」はタダという平和ボケ日本人も、本国で迫害を受け米国や欧州に逃げてきた様々な人々と接する事で Freedom is not free (自由はタダではない).をあらためて認識させられるのだ。

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