2011年4月16日土曜日

原発問題と台湾

未だに収拾の見通しがつかない福島原発問題がきっかけとなり、今や原発の安全性の問題は世界的な規模での広がりを見せている。そんな中でWall Street Journalによる Scores of Reactors in Quake Zones(地震地帯にある原発の評価)と言う調査結果は一見に値する。WJSによれば World Nuclear Associationの原発に関するデータを使い、世界の 400以上の現存する原発と、更に100以上の建設予定の原発の中から地震活動地域に的を絞りその危険度の分析を行ったものだ。

その結果、世界の原発全体の約20%の90の原発が地震活動地域にあり、そのうちの8%である34の原発が高危険度であるとしている。問題はこの高危険度の34の原発のうちの 30が日本と台湾にある事だ。また更にその34の原発のうちの 17の原発(福島を含む)が海岸線から 1マイル以内の沿岸地域にあって地震と津波の両方の危険性があるとしている。

この34の高危険度の原発の中で日本と台湾以外としては、米国のカリフォルニア州の2箇所(1箇所は廃炉)とアルメニア、スロベニアの各一箇所がある。つまり事実上、世界の中で「地震と原発」という面からの危険度が日本と台湾に集中しているという事だ。日本の原発だけに限れば、福島、浜岡をはじめ女川、美浜、敦賀等とほぼ軒並みで高危険度とされていて、日本の原発のあり方についてはこれから国内で色々議論がなされると思うが、もう一つの危険国台湾での動きは参考になる。

台湾の原発は1970年代末から稼動開始し、既に3箇所あって北部の新竹市(旧台北県)に2箇所、南部の屏東県に1箇所が稼動中である。更に4箇所目が屏東県で99年に着工されたものの、その後原発反対の動きをしていた民進党政権の成立や、国民党が多数を制する立法院との対立から推進と反対が二転三転して現在も完工されていない。

台湾の原発論議でここに来ての新たな動きは、2012年の総統選挙で民進党からの最有力候補である蔡英文主席(女性)が「2025年までの原発全廃」を打ち出している事である。建設中の第4原発を運転させず、第1-3原発を40年の稼動年限ごとに区切って2025年までには全廃するという計画だ。

台湾は日本同様にエネルギー源の自給率が3%と極端に低く(日本は 5%)、果たして経済発展をした台湾が原発なしで充分な電力源を確保できるのかどうかが疑問視されているが、総統選挙を機会に日本の先を行くこの原発廃止議論が台湾国内で活発化されるのかどうか、日本も注視すべきだ。

蔡英文氏は台湾南部の屏東県生まれで、台湾大学法学部卒後コーネル大やロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで学んだ知的エリートであり、同じ客家出身の李登輝前総統の秘蔵っ子とも言われている民進党の若手ホープである。陳水扁政権では行政院副院長(副首相)を務め、2008年の立法院選、総統選での敗北後、野党となった民進党の主席に選ばれている。

台湾政治の舵取りは難しい。中国という大国とは政治面では対峙しつつも、経済面では今や切っても切れないパートナーであり、かつこの中国の存在で国際社会からは孤立状態に追い込まれ、また中国に併呑される危機にもある。そうした困難な局面の中で、野党の立場から政権復帰を狙うのが蔡英文氏の民進党だ。蔡英文氏の持つクリーンイメージと同様に台湾という近代国家が、その国のシンボルカラーである緑(中華民国を是とする国民党はシンボルカラーが藍)の様な「核なき緑の国」に果たして成り得るのかが今後注目される。

0 件のコメント:

コメントを投稿