2011年3月2日水曜日

TED会議

昨日から西海岸の Long Beachで TEDコンファレンスというユニークな会議が開催されている。TEDとはその頭文字で表される Technology, Entertainment, Designの各分野からの人々が毎年春に南カリフォルニアの Long Beachと Palm Springsに集まり、自由な発想とアイデアに基づく講演とプレゼンテーションを行うという NPO組織の会議である。技術、エンタメ、デザインというソフト産業は米国が最も得意とする分野であるが、これらの分野に拘らずこの集まりでは環境問題、エネルギー問題、病気・貧困対策等地球規模の問題も取り上げられている。

この会議の特徴は、組織や肩書が重視される日本社会の会議とは違って、あくまで個人としての参加が前提であり、組織や国家の枠には捉われず、各人の持つアイデアや主張がしっかりと絞り込まれている事だ。米国で開催されるメインの会議には月500ドルの会費を払うだけで誰でもが参加できるが言語は英語だけである。また講演者の発表内容は YouTubeで無料で公開されおり、参加者でなくともその内容を知る事が出来る。この会議はちょうどスイスで毎年開かれるボス会議の様なデファクト的なものではあるが、既に日本の外ではこういう大きな流れが始まっているのだ。

この公開されている講演の一例を上げて見よう。今やPhilanthropist(慈善事業家)と紹介されるビル・ゲーツ氏による 2009年の「マラリア撲滅の為の蚊の駆除」というテーマの講演である。ゲーツ氏はこの動画の冒頭でThe market does not drive scientists, communicators, governments and thinkers to do the right thing. と述べている。つまり市場経済では現在の地球規模の問題は解決できないと断言しているのである。従ってこの会議が「いかに次の時代の商品開発をやれば儲かるのか」といった次元のものではない事を示している。もう一つの例は、ある若手音楽家が YouTubeを使って世界中からの多くの人々が同じ曲を歌う動画映像を集めて virtual chorusというものを実現している。実際のコーラスの練習は息を合わせるのが中々難しく練習に時間がかかるものらしいが、そういう音楽技術的なものも乗り越えて完成させたものは多くの見知らぬ人々の繋がりを感じさせて感動さえ与えるものである。

今年は慈善事業家としての Bill Gates氏と Harvard大学で生命科学分野の研究で有名な Juan Enriquez氏の話が目玉とされているが、講演者の中には韓国人等のアジア人の名前も見られものの、日本人の講演はここでも皆無、ゼロである。日本からは脳科学者の茂木健一郎氏はじめこれらの分野に詳しい人々が個人で参加し、こういう日本の「蚊帳の外」の現状を嘆きつつも、早速現場からツィートしている。今までに政界からはクリントン元大統領やアル・ゴア元副大統領が講演を行っているが、ゴア氏は今年も顔をだしている様だ。

振り返って日本のメディアは朝から晩まで大学入試の携帯でのカンニングのニュース一色だ。本当に日本のマスメディアは民主党政権同様、揃いも揃って末期的状況である。一社でもこの 重要なTED会議のニュースを伝えている所はあるのであろうか。

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