2011年3月31日木曜日

「したたかな国」日本へ

「甦れ美しい日本」になって欲しいと思うが、同時に「したたかな国日本」にも是非なって欲しいと提唱したい。政治、外交とは本来「したたかなに振舞う」という事ではないかと思う。誤解を恐れず言い方を変えれば、目的の為には手段を選ばない「何でもあり」の世界だ。政治も外交も結果が求められているのであって、高邁な理念があっても結果的に国民を幸せにし、安全、安心を守り、国益を最大限追求するという事が実現できなければ、政治家にしろ外交官にしろいくら「死ぬほど努力しました」と言ってみたところで、評価されない筈だ。それはまた結果責任を求められるビジネスに於いてもあてはまるのは言うまでもない。この「したたかさ」において、小沢氏、小泉氏は日本の政界においては両雄にも思えて来るが、おそらく両者間の間では、お互い深く理解しあっている部分があるのではないかと思う。

外国に於いては、「したたかさ」と「何でもあり」と言う面において米国人は実に良く鍛えられている。それも東部、中西部の人間よりも西海岸の米国人の若者はトップクラスだろう。「米国人はこうだ」というのは巨象をなでる様なもので様々な面があり、なかなか勇気のいるものだが、それでも日本人との比較において、あるいは欧州人との比較において、と考えるとある程度的が絞られて来る。例えば、米国の企業での毎年恒例の給与交渉の例を上げてみよう。特に中小の会社で米国人社員一人一人と新年度の給与について業績評価とともに交渉するとなると彼らのその「したたかさ」が如実に出て実にシンドイ。小さい企業やあるいは事業所ともなると、一致協力して目的を達成するという事から、普段は社員の間である種の連帯感なり親密感というのも生まれてくるのはどこの国でも同じだ。しかし、一旦給与、即ち個人レベルでのお金の話となると彼らの人格ががらりと変わってしまうのには感心させられる。

もともと米国人は「沈黙アレルギー」の様なものがあって、例えばマンションのエレベーターの中で見知らぬ人と一緒になっても、目が合うとスマイルするのは勿論、すぐに何らかの意味のない簡単な会話が成立する。彼らは数秒間でも沈黙でいる事は居心地が悪いのだ。そういう米国人との交渉ともなると普段にもまして饒舌になり、また感情表現も豊かになる。彼らの交渉の武器になるのは往々にして社員一人一人に対して責任範囲が明確に決められているJob Descriptionという職務内容記述書だ。That’s not my job! 米国人の部下からこの言葉を聞かない上司はいないであろう。勿論、そう来るのは判っているので上司の側でも理論武装等の対抗策は準備されている。それでもああ言えばこう言うと、まあこれがコミュニケーションだと割切るしかない。

更には自分の満足が行かない結果となるとわめき散らすは(泣き出すのもいるらしい)、おきまりの「他社からオファーがある」とか言い出だすやら(そんならどうぞと言うのが良いが)、騒がしい。それでも、翌日あたりになると昨日の給与交渉の時の騒ぎは無かった様にケロッとしてまた再びスマイル&冗談で働いてくれるという所がまるでガキの様でもある。こんなのはまだまだ「したたかさ」にも入らないほどの序の口ではあるが、解雇されそうになると女房と幼子を事務所に連れて来て泣き落としするとか、有名なセクハラ訴訟の落とし穴等々生き延びる為の「何でもあり」の実例は山とある。

米国で事業をやり、ある程度の成功と収益を得ようとすれば、こういう米国人達と米国流でお付合いしなければならず、またそれに対するある一定の知識なり、経験なり、技術なり、度胸なりといったものも身に付ける柔軟性が求められる。何事も日本流で日本人の美意識と倫理観で物事を進める事が出来ないのであるから、そこは日本人であれ、欧州人であれ、より「したかかさ」が必要となる。

政治もしかり、外交もしかり。勿論、ビジネスでもしかり。ただただ米国流金融帝国主義(そんなものがあるのかどうか知らないが)を嫌いあるいは恐れるのではいっその事また江戸時代の鎖国に戻るのが良いのかも知れない。事実、あの恫喝威嚇を繰り返す隣人中国様との関係でも江戸時代あるいは戦後の冷戦時代の様に日本とはお互い鎖国状態であった時期こそが最良であったなどという説も充分うなづける。しかし、もう相互依存の国際化がここまで進めば後戻りは出来ない。上記の米国人との給与交渉の時の様に日本人側では呆れかえる様なキツイ、シンドイ事に対しても抵抗力をしっかりつけて、彼らよりもより「したたかに」なるのが最良であろう。米国流「したたかさ」にある程抵抗力のついた米国に住む日本人の人達からすれば、慣れてしまえばそれはそれで「あいつ(米国人社員の事)ら馬鹿だな」と仲間内での笑い話のタネともなり楽しいものにもなるのかも知れない。

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