2011年3月19日土曜日

入閣要請

この期に及んでなんという菅氏の姑息さか。菅首相が「電話一本」で自民党の谷垣総裁に副総理兼震災復興担当として入閣して欲しいと依頼した事だ。あきらかに「アリバイ作り」である。菅氏の頭の中にあるのは、谷垣氏に断られるのを承知で(それゆえに電話だけで)、「一応お願いはしましたよ」という事実を残す、これだけである。国家危機から真に心の底からの入閣を依頼するなら、きちんと会って話すべきである事は小学生でも判る話だ。

これに対する谷垣総裁の断りの回答は誠に見識あるものであり、またその理由は全くもって妥当であり理解できるものである。谷垣氏の言う通り、(1)既に自民党としては震災復興に関しては与野党合同会議で具体的協議をしており全面的な協力を惜しんできていない、(2)また野党第一党の党首の入閣を依頼するという事は連立の組替えを意味する事であるだけに政策協議もなしでいきなりトップ同士で決めるべきものではない、以上極めて筋が通っている。

リーダーとしてあきらかに失格で、会見では見ている側に不安を感じさせるオドオドとした腰の引けた菅氏とは違って、熟成した政治家としての谷垣氏の会見はさすがであった。もしこの谷垣氏が首相であれば、この震災対応もかなり違っていたであろうし、今後の復興も違うものとなると感じさせるほどの安心感を与えるものだ。

老朽化した福島原発の震災対策等については現在の民主党政権のみならず建設当時からの政権与党であった自民党にも責任は勿論ある。しかし野党としての民主党がこの問題に関して与党に対し具体的な提案で改善を求めたという話は耳にした事はなく、また論戦の対象ともなっていない。それどころか、政権与党になってからの民主党はその姿勢として、「事業仕分け」でこういった震災時の為のスーパー堤防の予算までをカットしてしまっているではないか。

「ズル」と言われている菅氏の姑息さは、とにかくその徹底した責任逃れの姿勢に見て取れる。我々組織に属している、あるいは属していたビジネスマンや官僚は、この「責任逃れ」という事には極めて敏感だ。それは組織の中での責任というものは本来役職や職務権限で明らかにされているものであり、そこにおいて責任が自らに降りかかるという事は組織人として官僚の昇進やビジネスマン人生に致命的なダメージを与えかねないからだ。そこから逃れる為の方策は既に国会での大臣答弁でも聞かされている様に、「聞いていなかった」「相談がなかった」「他組織の協力が得られなかった」等々のお決まりのものだ。

今回の谷垣氏入閣要請は、「この他組織の協力が得られなかった」という証拠を残す為だけのものである事は明白だ。おそらく谷垣氏の胸の中には、この国難にあたっては、菅氏側からきちんとした政策協議や政策提案が同時にあれば、多少政治的なリスクがあったとしても党の役員会にはかって前向きに検討をしようというフェアな気持ちがあったかも知れない。

こうなれば自らが「暴力装置」呼ばわりした自衛隊のその隊員達の命をかけた献身ぶりに対し、自らの発言については何一つ謝罪もせず、隊員の苦労に対し慰労もしない「震災復興担当」の仙石氏にはまさに「天に唾」の罰があたる事は必然であろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿