2011年3月17日木曜日

原発問題

今回の大震災の国家非常事態においても「政治」というものは水面下で様々な動きを見せているのを見逃してはならない。まずは辻元氏の「災害ボランティア担当」首相補佐官任命とそれに続く仙石氏の「災害復興担当」官房副長官任命である。既に民主党政権の中では落ち着きを取り戻した時期での解散総選挙が念頭にある。そこでは何としても政権維持を図らねばならないのであるが、その際には最早バラマキの「マニュフェスト」などでは国民を釣る事は出来ない。

次回総選挙では災害復興に焦点が当てられる事になるが、これについての具体的政策等では与野党間に大きな隔たりというものは差ほど出て来ないであろう。そこで民主党が間違いなく選挙のテーマとして掲げるのが「原発全廃」政策であろう。

勿論、早期に今すぐの話ではない。例えばドイツのシュレーダー政権の時の原発全廃政策の様に20年先の 2021年までという様な形が選挙公約として現実的であろう。今回の未曾有の放射能危機で日本国民はあの第二次大戦敗戦の悲劇に対するのと同様に「原発の存続」には大きな反応を示す事は間違いない。民主党の全く現実性のない「原発全廃」の掛け声には、前回全く現実性のないバラマキ「マニュフェスト」に見事に騙された様に、多くの日本国民はまたもや見事に騙されてしまう事であろう。

日本と同様に「選挙の季節」の動きを見せているのが、エネルギー事情が日本と同じで原発先進国のドイツである。現在の CDU/FDP連立のメルケル政権は SPD/緑 連立のシュレーダー政権が打ち出した「2021年までの原発全廃」方針を平均で12年間延長する修正方針を打ち出しているのであるが、今回の日本の災害で政治的に大きな見直しを迫れている。今年はドイツ16州のうちの 7`州において州議会選挙が行われる選挙の年である。既に2月のハンブルク市(ハンザ同盟都市として州と同列)議会選挙があり、CDUはSPDの約50%に迫る得票率の半分以下という大敗を喫してしまった。これは勿論欧州の PIGS危機に際してのドイツ政府としての多大な財政支援の負担に対する国民の大きな不満が根底にあるのが理由であろう。落ち目のメルケル政権にとって今回の福島原発の事故は政権維持の面では明らかに大きな政治的マイナス要因となっている。

従って、例えば横浜のドイツ人学校の閉鎖と本国への早期の生徒全員引上げなど今回の福島原発事故に対するドイツ政府の反応は他外国に比べてもより敏感である。また原発事故に対する現地の報道でもこれを政治的に利用する為に意図的とも思えるほど危機感をあおる報道もある様である。以上のドイツの原発に関する政治問題についてはドイツ事情分析に関してはこの面での第一人者であり、また私が常々尊敬しているクライン孝子女史の意見をあらためてお聞きするのがベストであろう。

それでは今回の福島原発事故の収集処理が何とかうまく行ったと仮定すると(そうあって欲しいと祈念するのは言うまでもない)、民主党政権側にとっては、事故発生から事故対応における全ての責任を東京電力に負わせ、全ての功績を政権担当者とする事で総選挙に望もうとするであろう。実際は事故対応での全ての努力と功績は自衛隊・警察・消防・東電を中心とする現場の方々の命をかけての作業である事は言うまでもない話である。そこでもう既に明らかな見通しとしてはリーダー失格の菅氏を退陣させ、表舞台から下げて、次の顔は現在連日会見に登場する枝野氏となる事が予想される。本命の前原氏の足が救われた後、次世代の人間として表舞台は全てこの枝野氏が受け持っている。それを支え、裏から操る二人が辻元氏と仙石氏となって、ここに反体制運動を原点とするトリオの(非現実的)「原発全廃」政権が確立される方向となる。これこそが次ぎの国難であろう。

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