2011年2月26日土曜日

米国の新幹線計画

オバマ政権が2009年の政権発足と同時に打ち出した米国内の東部、中西部、フロリダ、カリフォルニア、テキサス等での高速鉄道計画は環境対策と雇用機会創出というのがうたい文句だ。これに対しJR東海等の日本企業が日本の新幹線売り込みへの期待感を大いに持っていると報じられている。しかし、結論から言えば日本の新幹線売り込みには何重ものハードルがあって、ほぼ実現性はないと見ておいた方が良いだろう。

そのハードルを順序良く説明していけば、財政面、経営面、費用対効果面、競合面で次の通りとなる。

1. オバマ政権の連邦政府が各州の高速鉄道計画に約130億ドルを拠出し、そのうち 80億 ドルをフロリダとカリフォルニアに使うというものらしいが、果たして連邦と州いずれもがそれぞれ巨額の財政赤字を抱える中、費用対効果がはっきりしないこの計画が最終的に認められるかどうかは疑問である。昨年の中間選挙では「小さな政府」を掲げる共和党が圧勝した結果、既にフロリダ州の様に新任知事が早々とこの計画自体を取りやめ、連邦政府の資金援助を返上する所も出てきている。

2. そもそも過去の米国の歴史で長距離旅客鉄道を開発してきたのは全て民間会社であり、また鉄道自体が今では一部の大都市近郊の例を除きその殆どが貨物専用列車となっていて、連邦政府や州政府に旅客用長距離高速鉄道の安全管理や保全技術に関する知識と経験は全く蓄積されていない。また民間会社がこの高速鉄道計画に協力するという事も考えられず、むしろ反対の意向さえ示している。

3. まず何よりも日本の新幹線が発展した輸送環境と米国の輸送環境は全くもって違うものであり、費用対効果に関しては調査するまでもなく国民経済全体としても採算の合うものではないだろう。その理由はカリフォルニア州だけでも日本以上の面積であり、国土が広すぎて、結局は高速鉄道を利用するのは一部の低所得者層か自動車運転が難しくなる老人世代だけとなる可能性がある。一例を挙げれば、ロサンゼルスやサンフランシスコといった大都市間だけを例え高速鉄道で結んだとしてもそれぞれのターミナルから郊外の自宅やオフィスまでの間の距離が長く、そこまでの公共交通機関が整備されていないので、結局は航空機か自動車を使った方がトータルでは安くて便利となる事が容易に予想される。

4. 仮に万一、上記の財政面と費用対効果の両面が何とかクリアされて、高速鉄道整備が実現化される事となったとしても、一番のハードルは韓国と中国との厳しい価格競争に勝たねばならないという点だ。日本の新幹線の様に 5-10分刻みの過密スケジュールで新幹線を走らせるという高等な技術は米国の鉄道にはオーバースペックで全くそぐわないという事だ。要はこの高速鉄道が中間層・富裕層や要人、ビジネスエリートが日本並みに頻繁に利用する基幹の交通機関とならなければ、安ければそこそこのもので良いという事になる筈だ。従ってまずはコスト面から中国(川崎重工が供与したブラックボックスなしの技術をそのまま使える)が最有力候補であり、次の候補が韓国であろう。それにこの両国関係者による米国の地元でのロビー活動は強力で、日本勢はこの面ではとても勝てない。もとよりカリフォルニア州では両国からの移民数が圧倒的に多い事もある。

前原さん、無駄な新幹線売り込みの政治パフォーマンスなどはもうおやめなさいという事だ。

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