2011年2月25日金曜日

中国の不動産バブル

さて、いよいよ中国の不動産バブルが怪しくなってきた。パンダなどよりもはるかに重要なニュースがある。2月16日に中国の国家統計局が全国不動産価格指標の公表を取りやめると発表した。その理由がいかにも中国らしい。従来この指標の信憑性には疑問が持たれていた事と、最近の不動産価格の高騰に国民が怒りを示す指標であったからだと言うものだ。指標の信憑性については、ずばりその算出根拠や算出方法が全く不透明であるという事だ。もう一方の理由は、おそらく国家統計局の責任ある地位にあるお役人が「恐ろしくなってきた」と感じているのが本音ではないだろうか。つまり中国の経済指標なるものには信憑性がないという事は誰が考えても常識的に理解できる事だが、いざ実際にバブルが崩壊する様な事になれば、誰が責任を取らされるのか。それはまずかようないい加減な数字を発表して国民を惑わし国家に迷惑をかけた国家統計局だとなるわけだ。悪くすれば法治国家ではないかの国では責任者には見せしめの死刑が待っているかも知れない。

既に国内外の経済学者やアナリストの間では「中国の不動産バブルの崩壊は間違いない」が、それでは「それがいつになるか」という事について様々な見方があって、ここにポイントが集約されてきている。思い返せば、この米国でも華々しい不動産バブルがあったのはつい10年ほど前の話である。不動産バブルの絶頂を迎える頃には「いつか必ずやバブルははじけるから慎重に」との意見もあったが、「いやいや、これだけの急激な移民の流入は過去にはなかったもので、不動産需要は伸びるのは当たり前の事であり、決してバブルの様なものではない」との意見がまことしやかに伝えられていた。しかしバブル崩壊は見事に確実に起きた。

以前にも述べた事があるが、米国の不動産バブルをもたらせた要因は(1)低金利での余剰資金のだぶつき(2)住宅ローン債権の証券化、などが上げられているが、何よりもその根底にあるのは(3) モーゲージローン(住宅抵当権付きローン)がノン・リコースである点であろう。ノン・リコースとは一言で言えば、債権者のローンの返済義務が「抵当権が設定されている当該不動産の範囲内のみ」に限定されている事である。つまり債権者側でローンの返済が不可能となった場合は当該不動産のみを手放せば、(ローン残高が不動産価値以上の場合)その債権者がたとえ他に資産を持っていてもそこまでには責任は及ばないという事だ。それでは中国ではこの辺はどうなっているのでろうか。正直、米国にいる我々には詳しい実情は判らない。

米国の場合は確かにノン・リコースは債権者に甘い制度ではあるが、一旦ローン返済不能となって金融機関側で Short Sale(抵当物件の安値売却処分)やForeclosure(競売)となってしまうと、債権者の Credit Scoreは急落して、以降7年間はあらゆる金融機関から一切のローンを受けられなくなるというデメリットがある。果たして今の中国にその様な個人ごとの信用調査制度や Credit Scoreの様な全国的な仕組があるのであろうか。こういった様々な点を考えて行けば、中国の信用膨張度は桁外れのものとなり、バブル崩壊が現実のものともなれば、その激震度は米国のバブル崩壊の場合とは比較にならない程のギガトン級のものとなるやも知れない。

米国のバブル崩壊の過程を振り返れば、長期の景気持続のもと1997年頃から不動産価格が上昇しだしたが、2000年のITバブル崩壊と 2001年の 9.11テロの危機により景気失速を恐れたFRBが一気に金融緩和をしてしまった。それによってその後一気に価格上昇は加速され、住宅の平均価格は2007年のピーク時には2000年水準の約 2.5倍まで跳ね上がってしまったのである。既に 2005-2006年には不動産市場の過熱はピークを迎え、バブル崩壊説が出回っていたが実際に価格が下落傾向を示しサブプライムローン企業が相次ぎ倒産しだしたのがその2年後の2007年となる。更に3年後の 2008年のリーマンショックで完全な崩壊を迎えた。バブル崩壊というのは「危ない」という声が出てからも、実際には2年くらいは何とか持ちこたえてそれまでは崩壊に至らなかったという事だろうか。この辺が実は中国の現在の状況に似ているのかも知れない。

以上、中国経済に付いては何も知らない人間が、米国の例から類推した、あくまでも独断と偏見に基づく個人的な見解であるので、後は皆さんの自己責任での判断と経済行動をお願いする次第だ。

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