2011年2月23日水曜日

米国西海岸日本食品事情

「日本酒、豆腐、醤油」、これらの日本食品はアメリカ市場に順調に浸透してきて、以前から西海岸で日本のメーカーが現地生産を行っている。もう普通のアメリカのスーパーで普通の食品として販売されている。しかし、ここに来て日本食品は「味噌、緑茶、あずき」と更に市場でその支持基盤を拡大させた。リーマンショック前後から米国からの撤退が相次ぐ日本企業であるが、その動きとは反対にマルコメ、前田園、井村屋がいずれもロサンゼルス近郊のIrvine市に現地生産工場も含め次々と進出したのである。

金融業以外で米国の誇る産業を敢えて挙げるとすれば、石油・エネルギー産業、宇宙航空・軍事産業、IT・通信産業であろう。いずれも国家戦略と国防軍事に深く結びついた産業であって、世界的な市場での米国の地位は揺るぎ無い。平和国家日本はそうした産業の中で細分化されたニッチなエリアでの活躍の余地はあっても、大きな産業の流れでは軍事大国、米国にはとても太刀打ちが出来ない。一方従来の日本のお得意芸の自動車・家電・OA機器の分野では韓国・台湾・中国勢の追い上げが激しく、米国市場ではこれらアジア勢にじりじりと追い詰められてきている。そこで日本が米国市場に対し打つべき次の一手として注力すべき産業は何かと言えば、アニメ・漫画・ゲーム産業と並び健康食品がその有力候補となってくるのである。

振り返って考えれば、超大国米国の弱点は何かと言えば、それは日常の米国人の生活ぶりを見れば一目瞭然である。即ち食生活であり、はっきり言えば彼らはろくなものを食べていないという点である。料理として味覚や味付け、調理法でpoorであるというのみならず、食材としても健康面で大いなる問題があるという事だ。高コレステロール、高血圧、高血糖値、高尿酸値をもたらす食品を中心とする食生活から起因する動脈硬化、糖尿病、通風といった各種成人病疾患が国民的関心事だ。

そうした風潮の中で、昨年3月12-14日の三日間、Natural Products Expo West 2010(健康食品展示会)がロサンゼルス郊外のアナハイム市で開催され、1,700社が出展、56,000人の来場者を記録して、日本食品への注目度も更に飛躍的にアップした。今や米国では食品に関する限り、味覚やグルメや調理法には関心はなく、「ナチュラル、オーガニック、ヘルシー」がキーワードである。いわくコレステロール・フリー、ファット(脂肪)・フリー、不飽和脂肪酸・フリー、添加物・フリーがうたい文句でもある。

米国市場では企業ブランドとしてはヤクルト、ハウスカレー、伊藤園、キッコーマン、森永乳業豆腐等は既に市民権を得ているが、最近はこういった大手企業でなくとも家族経営の日本人のパン屋が注目されだしてきた。日本人が焼くパンはふっくらしていて、香ばしいのが人気なのだが、そのふっくら香ばしいパンに更に付加価値を付ける事で、この分野で先行するフランス系や台湾系のパン屋との差別化がはかられてきている。ご存知アンパン、クリームパン、メロンパン、カレーパン、カツサンド、コロッケパン、焼きそばパンのB級グルメ的品揃えである。

それではそういった特殊なパンは在米の日本人客だけを対象としたものかと言えば、そうでもない様だ。西海岸の場合はラーメン屋のケースと同様にまずは中国、韓国等のアジア系の人達が触手を動かしてくれ、更にそういう動きが必ずや白人系やラテン系にも波及していって、全般的に手軽な食事として人気が高まって行く事となるからだ。これはちょうどマンハッタンのグランドセントラル駅からオフィスへ向かう途中にオフィスで食べる為の朝食を皆が揃って買うといったあの懐かしい光景につながっていくのだ。

アニメ・漫画、日本食品といったものはどちらかと言えばその消費者としての対象を女性、子供、若者を狙いとする産業だ。平和国家日本はこの米国市場では次はそうした女々しい分野の産業でちまちまと生きて行くしかないのであろか。

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