2011年2月13日日曜日

米国西海岸ロシアン事情

最近のロシア政府の北方領土をめぐる新たな動きは、民主党政権による対米、対中の稚拙な外交のやり方が引き金になっている事は小学生でも理解できる事だ。そもそも市民運動家や国内法弁護士、あるいは地方議会議員から出身の現政権幹部はまさに「井の中の蛙」であり、米、中、露といった国々の「力が正義」の世界などは自らの人生で経験した事などはないのであろう。今時のビジネスマンであれば新入社員の頃から、海外ビジネスは善意、誠意、熱意などは交渉の現場で何の意味も持たない事はいやというほど経験させられているが、国内ローカル一本やりの現政権幹部では米、中、露の大国政府にとってはそれこそ赤子の手をひねる程御し易い事であろう。まさにロシアの様な国を相手の外交にはフリードリッヒ大王のDiplomatie ohne Waffen ist wie Musik ohne Instrumente.(軍事なき外交は、まるで楽器を伴わない音楽と同じだ)の基本原理が大王の時代の様に実際の武器などは使わなくとも何ら変わるものではない。

日本国民の意識調査で「嫌いな国」としていつも中国、北朝鮮と並ぶ国がそういうロシアと言う国ではあるが、ここ米国西海岸ではそのロシア人のプレゼンスと好感度が極めて高い業界がある。それは社交ダンスの世界だ。英語でBallroom Danceといわれるこの世界は欧州の歴史と文化が生み出したものであり、日本でも中高年の間では依然として根強い人気がある。この社交ダンスの総本山は英国のブラックプールであり、そこで毎年開催される競技会は世界の最高峰としての権威がある。従って、教師や選手は従来西欧人、特に英国人が中心であったが、冷戦体制崩壊後の近年にはこの業界にはロシア人の大量進出という大きな変化がおきて来ている。特に米国ではどちらかと言えばマイナーな分野であり、何よりも米国人のメタボ体質が社交ダンスなどという優雅なものは不似合である事から、欧州人の活躍しやすい分野でもあった。

そういう環境の中で、ロサンゼルス東部の近郊都市に暮らす財を成した中国系の富裕層の人達の間ではこの社交ダンスが日本の中高年以上の異常な程の人気で、そこにロシア人ダンス教師が大いに活躍できる「中露親善」のニッチな市場が存在する。彼らロシア人ダンス教師に共通するのは、何よりも一目で米国人とは見分けがつくほどのアスリートとして鍛えられ引き締まった体型と文化的な立ち居振る舞い、物腰である。おそらく彼らは母国では幼い頃からフィギュアスケートの真央ちゃん的にわき目も触れずその道一本で純粋に育てられて来たのであろう。顔付きも決して米国人の様にお金に卑しい顔はしておらず、素朴でストイックであり控え目でさえあって親しみを感じさせる。

そういった鍛え上げられた特殊技能を有して移民を希望する外国人に米国は極めて寛容で開かれた国である。まずはダンス教室に労働ビザで雇用され、特殊技能の経験を米国内で更に積めば短期に Green Card(永住権)への道が開かれ、あの極寒と貧困、物資不足の社会から逃げ出して、まさに天国のこの西海岸でそれなりの収入を得て暮らす事が出来るのである。そういう言わばエリートアスリートの男女の若者が口伝えで次から次へとロシアからやって来るのであるから、今や永住権申請を審査する移民局では最早「もうこんなに多数のロシア人ダンス教師はもう要らないだろう」と言われているほどのラッシュ振りである。

とは言え、そこはマルキシズムの伝統が残る「唯物史観」の国ロシア出身だけに、そういう純粋な社会から出てきたとは言っても中国系富裕層からお金をいとわず熱烈歓迎されれば、そこはそれで一気に「物欲、拝金」の世界にのめり込んでしまう事となる。彼らは永住権を取り2-3年もすれば高額の個人レッスン料が現金でしこたま入って、先ずは高級車ベンツを買い、豪邸を買うという悪しき「唯物」の世界をまっしぐらとなり、今度はダンス教室を経営するオーナーとなって米国化したメタボ体型へとなって行くのである。

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