2010年1月12日火曜日

たかじん


久しぶりの日本で関西に滞在する時の楽しみの一つは東京では決して見る事の出来ないあるテレビ番組である。このテレビ番組とは読売テレビ(日テレ系列)で日曜日に放送される「たかじんのそこまで言って委員会」の事である。この番組での保守系タカ派的な政治表現の自由さは東京とは格段の違いがあり、東京では放送されないにも拘わらずどういうわけか東京では知れ渡っている。

既に出演者達からは「東京ではテレビ局側で政治的発言の自主規制があって、関西でのと同じ様な発言をすればたちまち降板させられたり、お呼びがかからなくなってしまう」というコメントも出されている程である。この一つの例が台湾問題である。台湾は実質上独立国である事は誰もが認めざるを得ないが、東京のテレビ番組で堂々と台湾問題が取上げられた事がどれだけあるであろうか。

従って、レギュラー出演者には三宅久之氏や宮崎哲弥氏の様により自由に発言する為にわざわざ東京から毎週のごとく出演しているものもいたり、橋下大阪府知事も知事になる前は頻繁に出ていて本音発言を繰り返していた。政治家も自民党、民主党いずれからも出ているが昨年末には安倍元首相が桜井よし子氏と一緒に出たりもしていた。

ホスト役の「やしきたかじん」は60歳の元歌手であるが、外見も中身も徹底した大阪人であり、今や日本全国の日テレ系列局でこの番組が放送されているにも拘わらず東京だけは絶対に放送しない(させない)という彼の強い意向が徹底されている。東京の熱心なファンの中にはわざわざ関西の友人にビデオ撮りをして貰ったり、あるいはSonyのロケフリを使ってinternetでつないでもらって見ているというものや、仕方なくYouTubeにupされるのを楽しみに待っているというものもいる。

この番組は日曜日のお昼過ぎというゴールデンタイムに放送されるのであるが、それでは何故これほどまでに関西でこの番組に人気があるのかと言えば、それは出演者のトークが本音であったり、時には過激であったりするところにある。もともと大阪という土地柄は東京と違って組織管理型の社会ではなく、建前よりも本音がベースにあって論点が分かり易いというのが特徴であり、それは例えば橋下知事の会見や発言を見てもうかがえる。

それと関西人にとって政治などと言うものは選挙結果が大衆人気によって左右されるところから、本来胡散臭いものである事を体感しているのであって、政治家が立派であるとか政治活動が崇高なものとはとても考えていない。従って東京地区で学者や評論家が様々な政治的配慮からいかに建前ベースで行儀の良い発言をしても「ええかっこするな」とたちまち見抜かれてしまうのである。

偶々年末にかけての関西での色々な番組を見たが鳩山首相の評判は極めて悪かった。というか完全に関西的お笑い風に馬鹿にされ切っているのである。鳩山首相がいかに偽善ぶってホテルのバーではなく居酒屋で酒を飲み、派遣労働者と握手しようが、鳩山ママからの巨額な子供手当てを貰って脱税していた事が露呈しても関西人は驚かないのであろう。「そら見ろ、ああいうエリートぶったカッコつけた奴こそ信用出来ない」とこれまた偽善ぶりをしっかりと見抜かれてしまっていて見事に嘲笑のネタとなるのである。

政治などというものが所詮その様なものであれば、真面目腐って建前論で討論するよりも本音で過激な発言をして何が悪いというのが関西人のメンタリティーであって、これが高視聴率を維持できている基盤でもある。同時に政治には権力という怪しげなものが潜んでいる事も関西人は常にその匂いを嗅ぎ取っていて、闇将軍の存在もこれもまた恰好のネタともなっている。関西からは決して小沢闇将軍的政治家は輩出されないのではないだろうか。

しかしながら、もとより関西人が保守的でありタカ派であるとはとても思えない。浅ましくも政権交代というものに安々と甘い期待をしたのも関西人の一面であろう。だが、そこにまずあるのは何よりも政治権力に対する根強い猜疑心と、政治家達の「ええかっこをする」という偽善に対する強い嫌悪感であろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿