2010年1月27日水曜日

普天間基地移設問題-続


みんなの党の渡辺喜美氏が指摘する「鳩山政権は散々沖縄の人をあおりにあおっておいて、こういう(名護市長選挙の)結果になって、一体どうするつもりか!」という「あおりにあおって」というコメントが何よりも一番当を得ている。普天間基地移設問題はこれで解決するのが更に複雑になり、この問題が小沢闇資金問題よりも鳩山政権の命取りになる可能性が出て来た。

最早、鳩山政権としての落とし所として、「現行案の名護市辺野古沖合への移設」と決める方向にあるのは、外相、防衛相、官房長官の発言からみても充分読み取れる。しかし、鳩山首相の偽善的な性格、行動、言動がここに来て自らを自業自得、自滅へと追いやる結果となりそうである。この問題の結論としては、「普天間基地の移設先は決まらず、米国政府としてはそのまま居残りを決める」か、あるいは「鳩山政権が現行案を強行する」、以外しかないであろう。

そこで NHKのクローズアップ現代に登場した元外交官のあの田中均氏のコメントである。同氏はまず、普天間基地移設問題解決への選択肢としては (1) 現行案 (2) 県外、国外移設 (3) それ以外の案の検討、をあげたのである。ここまでは小学生でも出来るコメントであろう。問題は田中均氏が (1) も (2) も難しいから、(3) を検討すべきだと指摘した点と、その馬鹿げた具体案の内容である。まず、(1) は今回の名護市長選挙の民意の結果から国が現行案を強行する事は出来なくなったと決め付けた。更に (2) の国外移設はもとよりあり得ないが、県外となってもこれだけの基地のパッケージを引き受ける先は日本にはないだろうと、これも否定。従って (3) のそれ以外の案の検討だと、主張している。

それでは同氏の言う (3) の第三の道への検討とは何か言えば、①普天間基地の安全性を高める ②普天間基地の機能の分散 ③安全保障上の危機を弱める外交努力、という内容である。同氏の主張を聞いていると、一貫しているのは相手の米国政府がどう考えているのか、あるいはどういうリアクションに出るのか、といった点を深く読み取ったり、考慮していない事であって、これが外交交渉をしてきた官僚のコメントかと耳を疑う。

そもそも米国政府は一貫して上記の (1) 現行案しかない、との立場であって、今のところは「鳩山政権が時間をかけて、現行案に落ち着く様に日本国内でのコンセンサスを確立する」事に対して、まさにtrust him しているだけの話である。従って、(2) も (3) もあるなどとは全くもって考えていない。その理由はこの現行案が、米国政府の軍事作戦、軍事技術、及び軍事戦略上の観点からこれ以外の選択肢はないと言う長年にわたる日米両政府による充分なる検討の結果であるからだ。田中均氏の言う「日本側に新たに受け入れてくれる所がない」のが主たる理由ではなく、それよりも交渉相手の米国政府に軍事面で受け入れる可能性がないというのが理由だと説明しなければならない筈だ。

さて、肝心の第三の道の内容であるが、全くお粗末としか言い様がない。①の基地の安全性を高める努力というのは、それが散々なされてきたにも拘わらず、基地周辺に住宅や学校があるという事が基本問題であるから、飛行場というものが対象である限り、基地が移動するか、周辺の住宅や学校が大移動するしかなく、小手先の安全策などで解決できるのであれば、そもそも基地移設問題は起こる筈がない。移設せずとも良い位に安全性を高めるのはこれ以上、技術的には不可能な話であるのは沖縄の現地の人々のみならず、誰にも判る話だ。

②の基地機能の分散の問題は、むしろ米国政府側に決定権があるのであって、米国政府あるいは米軍側から軍事的に不可能と言われてしまえば、日本側は一体どう反論できるのであろうか。そもそもその点の更に突っ込んだ具体策さえなければ、空虚な論点だと言わざるを得ない。

一番の問題は③である。これこそが、田中氏の外交官としての誠に不適切な姿勢や見方が如実に現われているのである。何事も話し合えば解決できる、話合いだけで解決できる筈であるという考え、これこそが大いに国益を損ねている象徴的なものである。

何よりも普天間基地の機能は海兵隊による周辺事態への有事対応である。具体的には朝鮮半島、台湾海峡、東シナ海、それに不測のテロへの対応である。朝鮮半島も台湾海峡も東シナ海も当事者となる相手はいずれも国民の参政権も言論の自由も法治体制も民主主義も一切ない北朝鮮と中国という特殊な国である。そういう相手国には世論や政権選択と言うものが存在しないだけに、まさに強盗犯や誘拐犯に対する警察行動と同じで話合いだけでは何も解決できないのが基本である。事実、田中氏の発想で北朝鮮による拉致問題はあれからどれだけの具体的な成果があったというのだろう。ましてや交渉相手が北朝鮮や中国の様な政府ではなく、テロ組織の場合は一体何を話し合いや交渉の武器にしようと言うのであろうか。田中氏は不測のテロに対する対応が米海兵隊の重要な任務、機能である事を全く度外視しているのである。

いずれにせよ、外交は話し合いだけではなく軍事力(安全保障体制)に裏づけされたもの、これはいつの世も不変の大原則である。

0 件のコメント:

コメントを投稿