OWS (Occupy Wall Street) 運動は9月に New York市で始まり、今では全米の主要な都市への進展の様相を見せている。彼らのスローガンである ”We are the 99%.” に象徴される様に高所得者層の top 1% との所得格差が拡大していることへの怒りと不満がこの運動の原点だと言える。先月、実際にこの top 1%が実に全体の17%の富を独り占め状態にしているとの数字が米国の公的機関から発表されたが、この数字を見て今更驚く米国人はおそらくいないであろう。
10月末に CBO(Congressional Budget Office、議会予算局)が1979年から 2007年の期間を対象に、家計数を所得額で5つに均等分割した各階層間での所得の伸びに関する分析結果を公表した。この分析は”Trends in the Distribution of Household Income Between 1979 to 2007” (1979年から 2007年の間の家計所得の分布傾向)というタイトルで、データはIRS(内国歳入庁)からの税収に関する各種の資料がベースとなっている。
この分析によると、1979年から 2007年の間に於ける、
1.各階層の税引後家計所得の平均額の増加率は(全体では 62%の増加)、
(1) Top 1% : 275%
(2) Top 1%を含む Top 2割(81%-100%) : 65%
(3) これに続く中間層の 6割(21%-80%) : 40%
(4) 最下層の低所得者層の 2割(1%-20%) : 18%
2.各階層の税引後家計所得が所得全体に占める割合の増減は、
(1) Top 1% : 8% から 17% (+ 9%)
(2) Top 1%を含む Top 2割(81%-100%) : 35% から 36% (+ 1%)
(3) これに続く中間層の 6割(21%-80%) : 50% から 43% ( -7%)
(4) 最下層の低所得者層の 2割(1%-20%) : 7% から 5% ( -2%)
つまり、「30年間の間に所得格差が急激に拡大している」という事と、「Top 1%の家計が全体の所得の17%をも押さえている」という事であり、益々格差社会に向かう傾向を示している。
家計所得には給与所得や労賃、個人業からの所得、キャピタルゲイン、配当収入、その他等がある。給与所得の面では、この30年の間での技術革新が熟練(中間層)と非熟練(最下層)の労働者の給与格差の拡大をもたらしたのは間違いない。
しかし、そうした事よりも top 1%の所得の中のいわゆるストックオプションによるキャピタルゲインが更なる格差拡大に大きく影響していることは言うまでもない。また、スポーツ選手、俳優、音楽家等のいわゆるsuper star達の収入が飛び抜けたものである事と、企業経営トップ、取り分け金融業界のトップの報酬が飛び抜けた額である事も同時に指摘されている。
OWS運動には現在では様々な団体やグループが加わり、その主張も様々で怪しげなものになってきているが、当初の主張の中核をなす「富裕層優遇税制の是正」と「投機的金融取引の規制」の根拠はオバマ政権が対策を講じてきていなかっただけに、それなりに明確ではある。
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