2010年11月29日月曜日

米国大学への留学生

今月15日に Institute of International Education (IIE、米国NPO、国際教育研究所)が ”Open Doors 2010” というタイトルで2010年度における米国の大学への留学生に関する数字を発表した。これによれば今年度の留学生(大学)総数は昨年比3% upであり、約69万人となっている。

この中でも目立つのが留学生の出身国別で第一位である中国である。全体の 18%を占める12.8万人で、昨年度一位のインドを抜いて昨年比 30% upの急増である。因みに第五位までは、インド(15%)、韓国(10%)、カナダ(4%)、台湾(4%)と続く。日本はそれに次ぐ第六位(4%)であるが、特筆すべきは昨年比 15% downしている事であり、昨年度の14% downに続いて急激な落ち込み傾向を見せていて、中国の急増との対比が明らかである。今や留学生総数では日本からの数は中国からの数の1/5以下の数となっている。

日本の新聞ではこの傾向は「日本の若者の内向き志向が反映されている」と評している。確かに今の世の中では大手商社においてでも若手社員の間で海外勤務を避けたがる傾向があるというのを商社出身の現中国大使の方がテレビで嘆いておられたから、そういう傾向はあるのであろう。しかし、もう一面では日本人の若者にとって米国そのもの、あるいは米国への留学が魅力のないものに変わりつつあるのではないかとの見方もできるのではないだろうか。

因みに西欧先進国の英独仏からの米国大学への留学生数は合計でやっと日本からのと同じ程度であって、順位ではそれぞれ13位、14位、18位である。この三ヶ国以外では 26位のロシアまで全てが西欧以外の国である。つまり日本も今や英独仏並みに最早米国に夢見をしたり、何でもかんでも依存する様な国ではなくなったと見るべきなのだろうか。

この面では中国、韓国、インド(この三ヶ国からで全体の43%を占める)の学生にとってはまだまだ米国は夢の国であって、留学後はそのまま米国に留まり就職して永住、更には市民権の取得までを希望する者が大半であろう。つまり留学が一番手っ取り早い合法移民への道であり、それは同時に留学生の受け入れ先の州としては最大の California州への移民全体の現状を見れば一目瞭然である。社会の底辺をなすメキシコ系の不法移民は別として、西海岸へのこの中韓印三ヶ国からの移民の急増は顕著である。

米国の大学が教育機関、研究機関として日本の大学とは比べものにならないほどに恵まれたものである事は度重なる日本人ノーベル賞受賞者の中に在米の研究者の方が毎回の様におられる事からもうかがわれる。しかいそういう環境であっても日本の若者は最早米国の大学は誰もが皆行きたがる先ではなくなっているのではないだろうか。逆に言えば、日本に居続ける事の方が心地よいのではないかという事でもある。しかしそれ以上にそんな居心地の良い日本とは違って様々な不条理や矛盾を抱えて脱出したくなる様な途上国の若者にとっては、米国留学は純粋な学問の道よりも現実的な現世利益追求と現状逃避への道でもあるのだ。

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