tag:blogger.com,1999:blog-23907237105473944902024-03-05T08:12:09.376-08:00グロス孝夫のブログTakao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.comBlogger120125tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-67915792107332708502011-11-29T23:33:00.000-08:002011-11-30T09:26:09.893-08:00ドイツ人と自然<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEipNV5cNa3UuJ1nrDmcX8PcWlSdnz3Ip55nEPNM7OIiK6HMRav3y4Y-N5gzW4a_SLKd0ASbGVROFLHEOHqiUZ-W_Ty8oh1ZpTOQ0eXFgFw-peAqq5pWqNW-E_cc3FNty1FhyltBxHziNzs/s1600/Spazieren.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" dda="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEipNV5cNa3UuJ1nrDmcX8PcWlSdnz3Ip55nEPNM7OIiK6HMRav3y4Y-N5gzW4a_SLKd0ASbGVROFLHEOHqiUZ-W_Ty8oh1ZpTOQ0eXFgFw-peAqq5pWqNW-E_cc3FNty1FhyltBxHziNzs/s1600/Spazieren.jpg" /></a></div>ドイツ人の身の丈に合った暮らしぶりという視点では、その原点はやはり日本人と共通する「自然に対する敬い、親しみ」というものがある。ドイツは言うまでもなくキリスト教国である。おおまかに言ってカトリックとプロテスタントが半々であろう。しかし、そのドイツ人の心の奥深くに眠るゲルマン精神はむしろ多神教から来るものであろう。例えばあのワグナーの楽劇では「神々の黄昏」に代表される様に神々、即ち複数の神々を描いているのである。ワグナーの楽劇は同じオペラの形式でもイタリア歌劇と違って、森深くや岩山といったものの自然が舞台装置だ。また本来、欧州のキリスト教国でも例えばギリシャ神話、アイルランドのケルト神話、北欧神話などむしろ多神教の方が自然発生的で多数派である。<br />
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一方、日本の稲作農業は天候や水といった自然に左右される事が多いので、植物・動物の自然を支配せんとする小麦農業や牧畜業とは違った「自然への敬い」の宗教観が醸成されたとされている。日本のある有名な仏教哲学者が「ものつくり大学」を提唱し、初代総長になった事は興味深いものがある。というのも、日本人のモノ作り文化というものには、職人、作業員達自らが作る製品そのものをまるで仏像や神様に対するがごとく本当に大切に扱ってきている精神が基本にあるからだ。製品というのは種種雑多であり、その一つ一つがモノ作り従事者にとって仏像、神様のごとき「魂を入れて作るもの」であれば、それはまさに多神教の世界以外の何物でもない。<br />
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もう一つ日本人の精神性を表す逸話がある。この米国の大リーグでも活躍した野球の新庄剛志選手は日米を通しての現役時代に、一貫して新人の時に 7,500円で購入したグラブを使い通した事である。それもその古いぼろぼろのグラブに補修に補修を重ね、引退の日までの 20年近い期間に使い通したのである。あの派手なプレーとパフォーマンスぶりの新庄選手にでさえ、ものを大切にするという日本人の精神が貫かれていたのだ。スポーツの本場の米国ではゴルフの一流選手でさえ、ミスショットの後はクラブを叩きつける(へし折る選手もいる)投げつけるなど野蛮な振る舞いが普通だ。米国人にとってのモノは所詮使い捨てなのである。<br />
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こうした違いを我々は今一度はっきりと認識しておく必要があるだろう。工業先進国の中で際立つドイツの「脱原発」の動きにも、実は「自然を敬う」というゲルマン精神に根ざしたものがあるのであろう。もう30-40年も前から活動してきているドイツの環境保護運動の政党はその名も「緑の党」 Die Grünenである。緑、即ち木々の緑の森や林は日本人にとっての鎮守の森に等しい大切で貴重なものなのである。またドイツ人にとって最も身近で日常的な運動は spazieren (散歩する)である。郊外の森の中の散歩道を一人思いにふけりながら、あるいは愛犬と、家族、恋人、友人と静かに会話をしながらひたすら静かに歩くのである。<br />
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一方、ドイツ人が心から軽蔑し、深くため息をつくのは彼らがグランドキャニオンを訪れる際に泊まるラスベガスの光景である。これほど全てが人工的なもの、偽物、虚飾の街を作る米国人とはいかなる哲学を持つ国民なのであるかと。その米国が全てだと言わんばかりに留学で、ビジネスで学んだ米国式を盲目的に崇拝し、政治的には隷属姿勢を示し続けてきた日本人は、本来精神性に共通のものを持つドイツ人の様に米国との距離を一定に保つべく、今こそ覚醒すべき時であろう。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-72809990655203068532011-11-25T22:55:00.001-08:002011-11-25T22:59:04.602-08:00ドイツいじめ<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj996oXHfxH0bvxOc-bsEf3h7xj-1FzLw2vbNmTsQ3H0SWJxJWIDYHX42pEHpy94-ZIpZAF36K97IlY2JdDTSAAzrYLSSa4JHqup9n-F3HbhKgLIbYbodALCOVyKCePpt5edjKNgas1iW0/s1600/ECB.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" hda="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj996oXHfxH0bvxOc-bsEf3h7xj-1FzLw2vbNmTsQ3H0SWJxJWIDYHX42pEHpy94-ZIpZAF36K97IlY2JdDTSAAzrYLSSa4JHqup9n-F3HbhKgLIbYbodALCOVyKCePpt5edjKNgas1iW0/s1600/ECB.jpg" /></a></div>孝子様、「言いたい放談」拝見しました。全く同感です。<br />
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ドイツ人にとって「あんただけには言われたくない」と言いたくなるのが英国の論調です。英誌、エコノミストあたりでもECBによるユーロ共通債にドイツが反対姿勢を示している事に対して、「ドイツ厳格主義が欧州統合を潰してしまう」と批判しています。一体自国の都合でユーロに参加さえしていない英国に欧州統合に向けあらゆる努力をしてきているドイツを批判する資格があるのかと。ここで ECBが安易に財務問題を抱える国に共通の資金を大量につぎ込む事になれば、そういった国は本来財政規律を厳格化して、自らが「自律と自立」に向かう様な努力をすべきであるところ、これを怠ってますます事態を悪化させるのは眼に見えています。<br />
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そもそもドイツは落日の英国と違って、経済力と技術力、市場の大きさと成熟度では欧州域内では圧倒的です。これが現在のギリシャ、スペイン、イタリア問題で象徴される財政危機にあたってのドイツの存在感に出ています。そのドイツの圧倒的な国力をもたらす源泉には日本と共通するものがあります。「勤勉、努力、向上心」というものを基礎に、「誠実、正直、几帳面」という国民性、何よりも「自然に親しみ、身の丈にあった暮らし」というものがあります。もうひとつは先日のブータン国王の国会での演説の中にもあった「規律」、これこそが両国に共通するものでもあります。ドイツもこの規律を重視するからこそ、それに対して厳格な姿勢でのぞむのです。<br />
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また、日独両国は英米のいわゆるアングロサクソン系と違い、決して「カジノ資本主義」には走らないという点でも共通です。英国はご存知の通り、今や自動車も家電製品もIT機器も外資は別として自国では全く作れない技術力なき後進国です。国民が勤勉ではなくなると経済が低迷し、財政悪化につながっているという基本構造ではイギリスもギリシャと何ら変わりません。財政悪化の結果、過度の民営化によってロンドンは観光客にとっても一目で判る様な情けない姿となっているのです。例えば、旧ロンドン市庁舎を日本の不動産業者に売却した為に議事堂対岸には景観を損なう醜く巨大な観覧車の塔が設置されて遊園地化し、バッキンガム宮殿が今やロイヤルグッズを販売する土産物屋化し、ロンドン市内西部にできた欧州最大のショッピングモールの客の大半は中東系で埋め尽くされているという状態です。<br />
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先日、米国の大手銀行のセミナーでエコノミストの人が「ギリシャでは 58歳で年金がもらえ(55歳とも言われている)、富裕層は脱税に走り、政府は財政数字をごまかす」「そこまでいい加減であればギリシャは自業自得、救済してもらうならばその見返りに独仏には彼らの休暇先として人気のクレタ島あたりを差し出せ」などとの金融界での冗談話を紹介していましたが、笑い話ながらもついつい頷いてしまいました。<br />
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これが企業であれば倒産と言う事ですから、どこかの企業に合併されるか吸収されてしまうという事につながります。何故、国家であれば生き残る事が出来るのであろうかと。実際に敗戦国であるドイツや日本などは領土の一部を奪い取られているではないですか。まずは独立主権国家であれば、国民に負担を強いて財政規律を立て直す事が先決であり、そういう努力を政府がリーダーシップで示していくのがごく当たり前の話です。あの金融危機の際の韓国で国民が自主的に金の製品を拠出したなどという精神は全くないのです。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-68342488505933826242011-11-20T21:51:00.000-08:002011-11-20T21:58:43.479-08:00TPPと日米同盟<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEibkNFHBv5qd5us2Apia7ZxhOfFWlF7BFgh72LVsKxAv0m9ZabYz5AT_x2y5JnqCyR1CJcRPNhyxd1xPDTq3ethDoLDX4-tgvGHg3wmf-_atEc0skgTlAqvBgMah0dX0EgXmyVps_iUsKo/s1600/ASEAN+P-Three.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" hda="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEibkNFHBv5qd5us2Apia7ZxhOfFWlF7BFgh72LVsKxAv0m9ZabYz5AT_x2y5JnqCyR1CJcRPNhyxd1xPDTq3ethDoLDX4-tgvGHg3wmf-_atEc0skgTlAqvBgMah0dX0EgXmyVps_iUsKo/s1600/ASEAN+P-Three.jpg" /></a></div>TPP参加賛成論の中に安全保障面での日米同盟の観点から、参加すべきだとの意見もある。日本の安全保障政策での基軸は日米同盟であるという事は大多数の政党と国民の共通認識だ。しかしながら、東アジアにおける安全保障上の最大の懸念材料を持つ中国という国に対して、同盟国米国は日本をしのぐ勢いで経済面、財政面、投資面、貿易面でますます深いつながりを築き、ますますその依存度を高めてきている。米国債保有高、ドル建て外貨準備高、輸入相手国、貿易赤字の相手国、これら全てにおいて米国に対して中国は日本を抜いてのダントツトップの強い位置にあるのだ。いずれにせよ本来、TPPと日米同盟に関しては全く違う次元での議論である筈だ。<br />
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日本をTPPに引き込みたい米国は、おそらく野田政権に対して、日米同盟を意識させる事で無言の圧力の様なものをかけてきている事は容易に想像させられる。野田首相が APECで TPP交渉参加を表明すべきかどうかまさに国論が二分されている時期に、安全保障の専門家であるジョセフ・ナイ氏やアーミテージ氏、それにキッシンジャー氏までが相次いで訪日してきているのは単なる偶然ではない。米国は野田首相がそういった外交交渉の駆け引きの経験が浅い事やしたたかさに欠けるとみて、ここぞとばかりの攻勢をかけてきているのである。<br />
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それでは百歩譲って、安全保障と日米同盟の観点から、TPPへの参加を決めたとしたところで日本の安全保障面、防衛力は盤石なのかと言えば、とてもそう安心はしておられない様に環境が激変してきている。まずは上記の通りの米国の中国に対する経済的・財政的な依存度が極めて高い事、更には米国の財政赤字の面からの軍事費用の大幅削減が見込まれる事がある。仮に本当に中国との有事となれば、集団的自衛権さえも認めていない(日米安保条約では米国は日本を守る義務があるが、日本は米国を守る義務はない)日本という同盟国の防衛の為に米国の若者が血を流す事に対して米国内で米国民の理解を得るのは難しいと理解しておくべきだろう。<br />
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こうした米国の国力の弱体化の一方では、米国内での中国パワーの飛躍的な伸びが顕著である。米国への諸外国からの留学生数を見れば、毎年中国がこれまたダントツの一位であり、しかも人数の増加率が昨年30%、今年22%の大幅 up である。今や米国への中国人留学生数は16万人近くとなり外国人留学生の5人に 1人は中国大陸からの学生である。また、中国の富裕層が米国の投資移民プログラムを利用して大挙して米国の永住権、市民権を得ようとする動きが活発化してきている。ちょうどカナダに香港からの移民が大挙して押しかけた様に中国人は本来自らの国家を信頼していないのであろう。<br />
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この様に米国、特にもともと中国系が多く住みついている西海岸では「中国化」が着々と進み、本当に米国が中国と事を構える事などは米国の国内事情からして果たして可能であるのだろうかと思えてくる。仮にいざ有事となっても、米国という覇権国家としては同盟などという「義」よりも自己中心的な「利」を優先させるのが、衰退過程での生存本能であろう。米中の軍事衝突というのは現実的ではない様に思われてくる。<br />
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こういう状況下では、日本としては当然の事ながら「自主防衛」と「集団的自衛権容認」への道を着実に推進するのが正しいであろう。中国の軍事的プレゼンスの拡大を脅威として捉えているのは日本だけではなく、台湾は言うまでもなく、韓国、フィリピン、ベトナム、インドなどである。我々は今一度尖閣問題の時の中国のとった行動を思い出すべきだろう。日本人社員を言わば人質状態にし、中国からの観光客は止め、レアアースの輸出を制限し、と何でもありの国である。中国は関税よりも何よりも人民元を不当に安く操作している事自体から、TPP参加の交渉をする資格さえないのである。中韓抜きの TPP構想では、アジアの成長を取り込むなどという標語は全くのインチキであると言わざるを得ない。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-66683177615457854152011-11-16T10:21:00.000-08:002011-11-16T20:18:52.499-08:00米国から見るTPP参加問題<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgmd7XvfpduC1igwbfp9adHKK4XgwTWGk4xbwg79y4yL9Wp7sm65cTLdTXplD0m9eNfo5HzZQi2zzQ-JYSutcOpllKzywLOUlZNVFoWk_P1-edXiyYmIuyFY8tGfqdSrOGAUEIoJpzOP6Y/s1600/%25E9%2587%258E%25E7%2594%25B0%25E3%2582%25AA%25E3%2583%2590%25E3%2583%259E.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" hda="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgmd7XvfpduC1igwbfp9adHKK4XgwTWGk4xbwg79y4yL9Wp7sm65cTLdTXplD0m9eNfo5HzZQi2zzQ-JYSutcOpllKzywLOUlZNVFoWk_P1-edXiyYmIuyFY8tGfqdSrOGAUEIoJpzOP6Y/s1600/%25E9%2587%258E%25E7%2594%25B0%25E3%2582%25AA%25E3%2583%2590%25E3%2583%259E.jpg" /></a></div>現在の日本が直面する課題に原発問題と TPPがあるのは言うまでもない。いずれも日本の先行きを決める重要なものであるだけに種々議論がなされてきている。その中で従来と少し違った様相を見せて来ているのが、こういった課題に対して、今までのいわゆる保守 vs 革新といった対立軸では見られなかった新たな動きがあることだ。例えば、保守層の中から脱原発を強く主張したり、TPP参加に強く反対する意見が出ている事である。また一方革新層(民主党での)では財界と一緒になって米国主導の TPP参加を強く後押ししている事である。先日も参議院予算委員会で社民党の福島党首が TPP問題で野田総理に厳しく詰め寄った際に、後ろに控える自民党議員が大声で「その通りだ!」とヤジを入れるなど思わず苦笑させられる場面もあった。そもそも保守や革新などという言葉自体、メディアが作り出した誤ったものであるのには違いがないが。<br />
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それでは何故こういった新たなねじれ現象が出てきているのであろうか。それは原発もTPPも米国的なもの、米国的価値観に基づくもの、あるいは米国主導のものであるからだろう。そういった米国中心的ものに対する日本人側での見方に変化が現れているのではないだろうかと思われる。特に、2007年後半のリーマンショックとそれに続くオバマ政権の誕生で明らかに日本人の米国に対する見方が変わってきている様だ。2000年頃を前後して、米国経済が「インフレなき高成長を維持出来るNew Economyの時代に入った」などと言って賞賛されたのが、実は米国民が浅ましくも身の丈知らずの過剰消費や住宅バブルに踊らされただけであったという事や、連邦債務残高問題がデフォルト寸前までに追い込まれ、議会での混乱で今日現在与野党間での合意さえ達成できていない事など、とても米国が世界のリーダーたるお手本の国ではないという事が次々と明らかになってきているのである。<br />
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特にオバマ政権が当初Change などという掛け声で変革を大いに期待されたにも拘わらず、こうした深刻な問題に対して、全くもって解決の方向性さえ示す事ができていないのには、米国内のみならず国際社会からのその落胆と批判の度合いは大きい。あの大統領就任直後のプラハでの核兵器廃絶宣言なるものや、ウォ―ル街の経営者に対する厳しい言葉は一体何だったのであろうか。そもそも当初オバマ大統領が国民に実現への努力を公約した、医療の国民皆保険制度や、投機に走らない銀行、格差社会是正(貧富差を示すジニ係数では米国は先進国で最高レベルの0.46に対し日本は最低レベルの0.30未満)、こんなものは日本に既に長らく当たり前のものとして存在するものではないか。<br />
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こうした事を思い起こせば、日本国民にとっては戦後から長く続いてきた「米国従属姿勢」をそろそろ見直しすべきだとの「覚醒」の機会となってきているのであろう。こうした覚醒というものは保守層では明確に見られるが、一方の政権政党では明らかに真逆の動きを見せているのがこの TPP参加問題だ。民主党内でのTPP参加交渉反対の署名をしなかった 133名の議員のリストを見ると、つい最近まで何かと反米姿勢を貫き通してきたであろう旧社会党系の議員も多く見られ、このTPP参加問題を理解しようとする国民の頭の中は混乱してしまう。彼らは今や財界・経団連と一緒になって日本の農業を壊滅させてしまう危険性を大いにはらむこの米国主導のTPPへの参加を目論んでいるのだ。<br />
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野田首相はじめ前原政調会長、枝野経産相といった現在の政権与党の首脳陣の経歴を見ても、彼らが米国に留学したり米国に住んだりという経験はなく、果たしてどこまで米国というもの米国人というものを自らが体験し理解しているのであろうか。今時ビジネス社会では米国で仕事をしたり住んだりといった経験はごく普通の事である。ビジネスマンであれば仕事を通じて米国人がその仕草、外見や社交辞令とは違っていかに(日本人的に見れば)あくどいと言えるほど自己利益に厳しいかを充分体験している筈だ。日本人ビジネスマンの米国での体験を通じてのとても「信じられない!」逸話は数多くあるが、何でもありのここ米国社会では実際に日常で起こっているのだ。そうした体験の積み重ねから、それを充分理解し割り切った上で、そういう相手ともうまくわたり合っていけるだけの免疫力、したたかさ、知恵や実力が養われるのだ。<br />
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実は、保守層の側でTPP参加問題への抵抗感、警戒感が強い背景には、現政権幹部よりもよりこうした「米国体験を通じた免疫力が多い」事にあるのだろう。G20のオバマ大統領との会談で野田首相が「TPPが全品目対象」と言ったか言わなかったかで早くも両政府の発表内容が違う事に対し、自民党幹事長が「危なっかしい!」と野田首相の甘い姿勢を批判するのは当たり前の事だ。オバマ大統領にとって外交交渉音痴の野田首相を相手にする事などは赤子の手を捻るよりも御し易い事なのだ。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-68361201959724600632011-11-04T01:23:00.000-07:002011-11-04T01:31:32.228-07:00We are the 99%.<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEitewh1aUmNb5JyhhkWhsF04Ke8iqncs-tLXFJZws8ax4PanG-QJ-BNZn14P2NzXh70u_66Q3q_i1hNG2fp_1cMnqddYNL2vRDFsiX3EquFynDmavnuM2KplnLjeOaIBDZXwTinRHdg6V8/s1600/99%2525.bmp" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" ida="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEitewh1aUmNb5JyhhkWhsF04Ke8iqncs-tLXFJZws8ax4PanG-QJ-BNZn14P2NzXh70u_66Q3q_i1hNG2fp_1cMnqddYNL2vRDFsiX3EquFynDmavnuM2KplnLjeOaIBDZXwTinRHdg6V8/s1600/99%2525.bmp" /></a></div>OWS (Occupy Wall Street) 運動は9月に New York市で始まり、今では全米の主要な都市への進展の様相を見せている。彼らのスローガンである ”We are the 99%.” に象徴される様に高所得者層の top 1% との所得格差が拡大していることへの怒りと不満がこの運動の原点だと言える。先月、実際にこの top 1%が実に全体の17%の富を独り占め状態にしているとの数字が米国の公的機関から発表されたが、この数字を見て今更驚く米国人はおそらくいないであろう。<br />
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10月末に CBO(Congressional Budget Office、議会予算局)が1979年から 2007年の期間を対象に、家計数を所得額で5つに均等分割した各階層間での所得の伸びに関する分析結果を公表した。この分析は”Trends in the Distribution of Household Income Between 1979 to 2007” (1979年から 2007年の間の家計所得の分布傾向)というタイトルで、データはIRS(内国歳入庁)からの税収に関する各種の資料がベースとなっている。<br />
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この分析によると、1979年から 2007年の間に於ける、<br />
1.各階層の税引後家計所得の平均額の増加率は(全体では 62%の増加)、<br />
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(1) Top 1% : 275%<br />
(2) Top 1%を含む Top 2割(81%-100%) : 65%<br />
(3) これに続く中間層の 6割(21%-80%) : 40%<br />
(4) 最下層の低所得者層の 2割(1%-20%) : 18%<br />
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2.各階層の税引後家計所得が所得全体に占める割合の増減は、<br />
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(1) Top 1% : 8% から 17% (+ 9%)<br />
(2) Top 1%を含む Top 2割(81%-100%) : 35% から 36% (+ 1%)<br />
(3) これに続く中間層の 6割(21%-80%) : 50% から 43% ( -7%)<br />
(4) 最下層の低所得者層の 2割(1%-20%) : 7% から 5% ( -2%)<br />
<br />
つまり、「30年間の間に所得格差が急激に拡大している」という事と、「Top 1%の家計が全体の所得の17%をも押さえている」という事であり、益々格差社会に向かう傾向を示している。<br />
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家計所得には給与所得や労賃、個人業からの所得、キャピタルゲイン、配当収入、その他等がある。給与所得の面では、この30年の間での技術革新が熟練(中間層)と非熟練(最下層)の労働者の給与格差の拡大をもたらしたのは間違いない。<br />
<br />
しかし、そうした事よりも top 1%の所得の中のいわゆるストックオプションによるキャピタルゲインが更なる格差拡大に大きく影響していることは言うまでもない。また、スポーツ選手、俳優、音楽家等のいわゆるsuper star達の収入が飛び抜けたものである事と、企業経営トップ、取り分け金融業界のトップの報酬が飛び抜けた額である事も同時に指摘されている。<br />
<br />
OWS運動には現在では様々な団体やグループが加わり、その主張も様々で怪しげなものになってきているが、当初の主張の中核をなす「富裕層優遇税制の是正」と「投機的金融取引の規制」の根拠はオバマ政権が対策を講じてきていなかっただけに、それなりに明確ではある。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-2382772321016078472011-11-01T21:57:00.000-07:002011-11-02T00:32:01.101-07:00「脱原発」に関するクライン孝子さんの新著<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhA3Qhjsh48O1TEXgJ6oZPQkEB7s9INACCEFpTACKccPbamy1E0TWBT6RV3B6K_SjzDtu40OexXCHCGvjDMzqs3qnAwShb0tHLPVkn7a37Ee17l-BkGDJlMxRCkUQZJ3tEADoPiri30bTg/s1600/%25E3%2582%25AF%25E3%2583%25A9%25E3%2582%25A4%25E3%2583%25B3%25E5%25AD%259D%25E5%25AD%2590%25E3%2580%2580%25E8%2584%25B1%25E5%258E%259F%25E7%2599%25BA.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" ida="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhA3Qhjsh48O1TEXgJ6oZPQkEB7s9INACCEFpTACKccPbamy1E0TWBT6RV3B6K_SjzDtu40OexXCHCGvjDMzqs3qnAwShb0tHLPVkn7a37Ee17l-BkGDJlMxRCkUQZJ3tEADoPiri30bTg/s1600/%25E3%2582%25AF%25E3%2583%25A9%25E3%2582%25A4%25E3%2583%25B3%25E5%25AD%259D%25E5%25AD%2590%25E3%2580%2580%25E8%2584%25B1%25E5%258E%259F%25E7%2599%25BA.jpg" /></a></div>ドイツ政府があらためて脱原発の方向性を打ち出した事が注目されているが、そこに至る背景や環境といったものが詳しく説明された書評は日本では意外と少ない。そんな中で在独 42年になるというクライン孝子さんの新著「なぜドイツは脱原発、世界は増原発なのか。迷走する日本の原発の謎」は極めて明解であり、また時期を得たものである。というのも、現在この脱原発問題のみならず、ギリシャの財政危機問題がユーロ圏全体の経済危機へと発展するのではと危惧される中で、EU全体に於けるドイツの自己抑制的で主導的な役割が一段とあきらかになってきているからだ。<br />
<br />
この著書の中での中核は、第4章「ドイツの脱原発事情」と第 7章の「何がドイツを脱原発に踏み切らせたか」の、この二つの部分にあると思う。最初の「脱原発事情」の部分では、何よりもドイツが欧州全体で経済的、科学技術的には圧倒的な地位にあり、そこからの「自信」が脱原発という新たな方向へと歩ませているという点がまず指摘されている。実際にその科学的な成果としてもこの著書での資料によるとドイツでは太陽光、風力、バイオマスの自然エネルギー源の割合は既に全体の14%(日本は1%)を占めるに至っているのである。<br />
<br />
日本人でも実際に欧州に住んでビジネスの経験でもしない限り、欧州域内での圧倒的なドイツの国力というものはなかなか実感できないかも知れない。近年アジアを中心とする新興国が急成長でその存在感を示すまでの先進国経済は「日米欧」の時代だと言われた。しかし極論を言えば、これは実際上、「日米独」の時代であったと言っても過言ではない。先進国市場で自動車、機械工業、化学工業の分野での供給側の主役は何と言っても日米独なのであって、英仏の産業は決してその地位にはない。また欧州を需要側の市場として捉えても、自動車、家電、高級雑貨に至るまで統一後のドイツ市場は仏・英・伊とは大きく差をつけてのダントツの成熟した最重要市場でもあるのだ。<br />
<br />
しかし、そのドイツも二度の敗戦を経験することで戦後は欧州各国、特にフランスには常におおいなる「気配り」をするという処世術をしっかりと身につけている。そうした気配りが出来るのもフランスには経済力・技術力では到底追いつかれないという大いなる自信というものがあるのは言うまでもない。その自信があってこそ、フランスが国をあげて原発開発・推進をする中での、ドイツによる脱原発への真逆の「方向転換」である。日本でもドイツは原発推進国のフランスから電力の供給を受けているから「脱原発」政策が取れるのだと言う誤った情報が流されている事がこの本では指摘されている。実際はドイツからフランスへのエネルギー供給の方がフランスからドイツへのそれを上回っているのだ。まさにドイツの圧倒的な国力を知る者であれば、これまた充分納得の出来る話だ。<br />
<br />
第二の部分の「脱原発に踏み切らせた背景・経緯」こそ、この著書の中で最も注目すべき点だ。戦後米国がその主導的な地位にあるロケットと核兵器の近代兵器の技術はいずれももともとドイツ人が発明・開発したものである。それが現在では大量殺戮兵器として世界規模で利用されるに至っているという事への原罪意識の様なものがドイツ人エリート層にあるというのは充分理解出来る事でもある。ドイツも日本と同様、核兵器は製造も保有もせず自己抑制的である。<br />
<br />
更にこれらの点に私なりに付け加えさせて頂けるとするなら、ドイツ人の持つ「清潔感」というものが環境保護や脱原発といった動きの根底にあるのではないかと思う事である。具体例をニ三挙げれば、日本人駐在員の奥様が近所から窓が汚れていると注意されるという話を聞くほど、家々の窓は常に磨かれていてピカピカである事。ドイツ人ビジネスマンと長時間の会議でもしようとなると、休憩時には窓を開けて直接外気を取り込むという換気には充分気をつけねばならないという事。またドイツでは電子レンジの人体に及ぼす影響が判らないということで長らく普及していない事。ドイツの地方を旅行して、どんな安宿でもシワひとつないシーツと磨かれて清潔なバスルームが用意されている事、などなどだ。<br />
<br />
3.11の震災後、福島原発からの放射能漏れの危険性が判るやいなや、横浜にあるドイツ人学校の生徒が数回に分かれて4日後の翌週の火曜日までには全員がチャーター便で本国ドイツに帰国、避難したという事実は我々には驚きであった。しかし、今から思えば震災後の日本政府首脳の対応が「人災」だと指摘される中で、実はドイツ政府の迅速かつ周到に準備されてきた「危機管理」対応が正しいものであったという事が判ってきたのである。<br />
<br />
ドイツ人と日本人の共通点、それは勤勉、質素、努力、向上心といった「実直さ」というものであろう。しかし、違う点もある、それはドイツが欧州大陸の中心にある関係から、政治的には極めて「したたかである」ことだ。ドイツはもとより EU と NATOという共同体の一員であり、周辺諸国とは地続きであり、また歴史・文化・伝統にも共通するものがある。それがゆえにそのしたたかさというものが充分醸成されていて、例えば冷戦中であってもドイツはロシアからの天然ガスの安定供給を密かに交渉したり、また東西ドイツの統一に向けては英仏両国からの警戒と牽制を巧みにかわして、共同体の一員である事を優先させるという政治的に大なる決断をしているのだ。<br />
<br />
日本の政治が混迷する中で、環境保護にはじまり、首都機能分散、更にはこの脱原発問題という問題を通しても、国のあり方はいかにあるべきかという面で日本がドイツから学ぶべきものはまだまだ多い。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com1tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-78563362921961345742011-08-16T18:27:00.000-07:002011-08-16T18:31:36.843-07:00政治のリーダーシップ <div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgS-YMnpyEQZ8p5Hi4U-pDfAJtgXu4L-Rla9WMXW5oUTQcdHkL0s8wTPb1HYpKBpSNhbasEy3lWpaoHVZi6VcUBwR1CYCngk_p5siGUMevQ3ohMDRa84QvPx7Txg6HW1d1sqdxDRhmonp8/s1600/Turning+Japanese.bmp" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" naa="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgS-YMnpyEQZ8p5Hi4U-pDfAJtgXu4L-Rla9WMXW5oUTQcdHkL0s8wTPb1HYpKBpSNhbasEy3lWpaoHVZi6VcUBwR1CYCngk_p5siGUMevQ3ohMDRa84QvPx7Txg6HW1d1sqdxDRhmonp8/s1600/Turning+Japanese.bmp" /></a></div>現在、日米両国でリーダー選びの選挙戦への動きが活発化している。と言っても、米国はまだ1年以上先の来年11月の大統領選挙に向けての共和党内の候補者選びの闘いであり、一方日本ではたった1ヶ月先の来月9月に予定される民主党代表選挙である。<br />
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そうした中で、今回の連邦政府の債務残高上限切り上げ問題では、米国政治システムの様々な実態を我々に見せつけてくれた。<br />
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まず、第一点は大統領と議会の与野党との関係である。日本の様な議院内閣制では与党は政権の首班である首相を一体となって支えるのであるが、米国では国民から(事実上)直接選ばれた政権首班である大統領が議会からはより独立した力を与えられていて、必ずしも議会の与党首脳部とても大統領と一体ではないという事である。<br />
<br />
事実、今回の債務上限切り上げ問題での下院の議決では民主党議員の間では表決が賛成 95、反対 95、棄権 3と真二つに割れる結果となっている。この点は重要法案の採決にあたっては表が割れない様に党議拘束をかけ、造反者には罰則が別途決められるという日本の議会では全くあり得ない光景である。<br />
<br />
第二点は、上院内では民主・共和のそれぞれの院内総務(与党majority leader と 野党minority leader)が代表を務め、一方下院では多数党から議長(House Speaker)で選ばれるものの、やはりそれぞれ majority leader と minority leaderというまとめ役が存在する。要は、日本の与野党の様に党幹事長や党国対委員長が実質的に衆参両院全てを横断的に取り仕切るという事ではないのである。<br />
<br />
従って、今回の問題では大統領の主たる交渉相手は野党共和党が多数を占める下院議長のベイナー議長となった。この場合、下院議長の立場は日本の衆参両院の議長の様に党籍を離れての中立的なものではなく、実質的には野党側での代表的な立場となった。つまり野党側(共和党)では日本の野党である自民党の総裁の様な上下両院を通じての党を代表するリーダーは存在しないという事である。<br />
<br />
第三点は、何と言っても大統領の veto、拒否権である。例え上下両院揃っての法案可決となっても大統領の賛成がなければ法案は法律として有効なものとはならないという一方的な特権が大統領にある点である。この拒否権を覆すには上下両院での 2/3以上の多数による再可決が必要であり、実質的には相当高いハードルが設定されている。<br />
<br />
以上の通りの教科書的な三点が大統領と議会の緊張関係をもたらしているのであり、そうなれば大統領職というものはそもそも政治家としてよほどのリーダーシップの素質と能力を備えていなければ務まらない役割であろう。しかし、そういう制度に支えられている米国でさえ、英エコノミスト誌の7月31日版でTurning Japanese、「欧米の日本化」と皮肉られている様に欧米でのリーダーシップの欠如がまるで日本政治の様であると指摘されている。つまり更なる財政問題悪化が懸念される欧米でも選挙民の目を気にして、政治家は問題の先送りで更に問題を悪化させてきていると指摘しているのだ。<br />
<br />
事実、Gallupによる大統領支持率調査の最新の結果では、オバマ大統領の就任後でははじめて40%を切って39%となり、不支持率も52%となった。大統領就任時の 2009年2月には民主党支持層の 9割、中間派の6割、共和党支持層でさえも 4割がオバマ大統領の Yes, You can と Changeの掛け声のもとにそのリーダーシップに大いに期待して、全体では 7割近い支持率を示したものであった。現在の4割という支持率の内訳は、民主党支持層の8割、中間派での 3割、共和党支持層での 1割となっており、やはり中間派の支持率落ち込みが顕著である。<br />
<br />
さて、日本でも首相公選制が叫ばれた事があったが、単に国民が総理大臣を直接選挙で選ぶという制度そのものもさることながら、リーダーシップの創出には首相の地位の独立性と与野党との緊張関係をいかに作り上げるかにもそのヒントがある。実はそうした緊張関係というもが日本型合意形成システムにはなじまないのではないかとの意見も出かねないが、そういう考えは政治における精神的な堕落腐敗であろう。日本国内においても都道府県知事の立場が大統領に近いものである事を忘れてはならない。その典型である大阪府の橋下知事と議会との厳しい緊張関係の例からも、学び取れるものが多々あるのだ。<br />
<br />
「今こそ政治に真のリーダーシップが求められる」、我々はこの言葉を何度となく目にしてきた。政治家が国民に向けてそのリーダーシップを示すのに必要なものはまずは Messageと Passionであろう。またその messageと passionというものは厳しい緊張関係を強いられる政治の場においてこそ自ずと醸成されるものであろう。最早、政権交代当時のマニュフェストを打ち消す事で自民党との対立軸を見出せず、ただただ大連立に頼る民主党代表選の候補者に一体いかなる messageとpassionを読み取る事が出来るのであろうか。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-42711827299832946842011-07-19T10:35:00.000-07:002011-07-19T10:39:05.441-07:00FST (Financial Speculation Tax) <div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgjwv2-tB9ql-cGXXP6TAjcADGGW3zPR5aroGeHalrsgul2hJDHbci59V2aPc2ORW8oCetM6_IfFXG2T-4196n6xUnywTe4ENV7gKYJrA3mWNIhsx_RDZTQh37cq_YHRrm2UBeBgfSbb2U/s1600/obama_boehner.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" m$="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgjwv2-tB9ql-cGXXP6TAjcADGGW3zPR5aroGeHalrsgul2hJDHbci59V2aPc2ORW8oCetM6_IfFXG2T-4196n6xUnywTe4ENV7gKYJrA3mWNIhsx_RDZTQh37cq_YHRrm2UBeBgfSbb2U/s1600/obama_boehner.jpg" /></a></div>現在、オバマ大統領と議会指導者の間でやりとりが行われている Debt Limit(連邦債務上限額)引上げ問題は8月2日の default期限まで 2週間となったにも拘らず、未だに解決の糸口が見えて来ない。オバマ大統領が提案している 2.4兆ドルの上限額引上げの条件としての3兆ドルの歳出削減と1兆ドルの増税の組合せの案に対し、増税を一切認めない共和党が主導する下院議会では cut, cap and balanceという歳出削減、上限額規定、財政均衡を義務付ける憲法改正、これらの三本柱での議決を行う構えを見せている。当然の事ながら合衆国憲法の改正には上下両院の supermajority(2/3の賛成)が必要であるところから、この議決自体は現実的なものではあり得ない。<br />
<br />
オバマ大統領側での妥協策としては Medicare (高齢者医療補償)や Social Security(年金)という entitlement と言われる義務的歳出項目の聖域にも削減の手を付ける方向を検討中であると言われている。従来、民主党は高齢者や低所得者の弱者の立場に立って社会的 safety netの拡充を目指す政策をとってきたが、defaultの危機を迎え増税を一切認めないとする野党共和党側との妥協策としてやむにやまれぬものなのであろう。<br />
<br />
そもそも今回の Debt Limit問題の根源である巨額の財政赤字は、バブル崩壊による不況対策として景気刺激策に膨大な財政資金を投入した事が引き金である事は言うまでもない。しかもそれだけの巨額の財政支出にも拘らず経済状況は好転せず更に悪化の兆しさえ見せている。そうなると、そもそもそのバブル崩壊をもたらした Wall Street の金融界に対する規制や管理というものはオバマ政権ではいかなるものとなっているのであろうか。<br />
<br />
オバマ政権での金融規制改革法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act)は一年前の 2010年7月21日に成立した。この法律は、金融安定監視協議会(FSOC)と金融消費者保護局(CFPB)の新たな設置と、ボルカー・ルールと言われる銀行が自己勘定取引行う事とヘッジファンドやプライベート。エクイティー・ファンドに出資する事を禁じる事が三本柱の内容となっている。<br />
<br />
しかし、新たな組織や制度やルールを作ったところでそれらが果たしてどれだけバブル対策としての機能を発揮するかは今後の事であって、これで問題解決という事ではない。それ以上にオバマ政権として、どこまで本気で突っ込んでこの Wall Streetの暴走に歯止めをかけるかのその姿勢が大いに問われているのである。むしろオバマ大統領の実際の動きとしては、大統領再選も目指しての選挙資金確保の為の Wall Streetへの歩み寄りが目立つだけであり、どこまで弱者の味方であるかは大いに疑問視される所でもある。<br />
<br />
財政危機は米国に限らず欧州各国とて同じだ。ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領は既に金融投機の規制に関する税制である FST(Financial Speculation Tax)の導入に前向きだ。FSTは株式や先物、オプション、CDS等の金融取引に対し課税する事によって、過度な金融投機を抑制し、同時に新たなる税源を確保する事が狙いであるが、この概念としては既に FTT (Financial Transaction Tax) として古くは 1930年代にケインズが主張していたものでもある。<br />
<br />
しからば政権発足当初に何故あれほど Wall Street の横暴を批判していたオバマ大統領はこの FSTの導入に言及さえしないのであろうか。それどころか、Wall Streetの金融業界が作り出したバブル投機とその崩壊を根源とする今回の財政危機問題では、結果的にそのしわ寄せの犠牲となるのは社会的弱者である低所得者や高齢者となるのであろう。我々の眼からは、肝心の元凶であるWall Streetはオバマ大統領によって聖域の様に守られているとしか見えない。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com1tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-12216437486741226172011-06-15T18:52:00.001-07:002011-06-15T18:58:50.293-07:00共和党予備選候補討論会<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg6029skaa8ER_9brIBOb3eR8orgh9y7zmDNXd2cagvmCZieFFcray2Rxu7rlEv3Fon_E_cQMOrwwW02umCJdsaXQTqPvRa6GyPwXf_bYb24me4ghc-GNLs7xcyFqHlMsUtNvqHnpV9JMQ/s1600/gop-candidatez.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="161" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg6029skaa8ER_9brIBOb3eR8orgh9y7zmDNXd2cagvmCZieFFcray2Rxu7rlEv3Fon_E_cQMOrwwW02umCJdsaXQTqPvRa6GyPwXf_bYb24me4ghc-GNLs7xcyFqHlMsUtNvqHnpV9JMQ/s320/gop-candidatez.jpg" t8="true" width="320" /></a></div>来年の大統領選挙に向けての共和党予備選候補者の討論会が6月13日にニューハンプシャー州で行われた。2時間に亘るこの討論会は CNNで中継されたが、今回は実は第二回目の討論会である。第一回目は先月サウスカロライナ州で開かれているが、本命とされるミット・ロムニー氏、元下院議長のニュート・ギングリッチ氏、それに今回直前に新たに名乗り出た女性のミシェル・バックマン氏が不参加であったから、今回が実質的には第一弾と言えよう。<br />
<br />
今後共和党予備選に立候補が見込まれるのが、前中国大使のジョン・ハンツマン氏、元ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニ氏、テキサス州知事のリック・ペリー氏などである。一時騒がれたサラ・ペーリン候補は今の所立候補の動きがない。<br />
<br />
さて今回の討論会の見ものはなんと言っても本命とされて先頭をダントツで走るロムニー氏に他候補がどれだけ迫る事が出来るかであったが、結果はどうやらロムニー候補の1人勝の様相であった。ロムニー氏以外の 6候補の顔ぶれは、ニュート・ギングリッチ氏、ロン・ポール氏の古参組とハーマン・ケイン氏(経済人、黒人)とミシェル・バックマン氏(女性)の新参組、更には元上院議員のリック・サントラム氏と前ミネソタ州知事のティム・ポーレンティー氏の有力組の3派に分かれている。<br />
<br />
今回の討論会でのロムニー氏の実質的な対抗馬はポーレンティー氏である。同氏はかねがねロムニー氏のマサチューセッツ州知事時代の医療制度をオバマ大統領の医療制度と重ね合わせる事で批判してきたのであるが、今回は初戦である事もあり、敢えて表面だった対決姿勢は見せない作戦をとっていた。ロムニー氏側も今回はもっぱら批判の矛先をオバマ大統領の「雇用機会を創出しないままに財政赤字を巨額に膨張させた」失政に向ける事にしていたので、結果的にはロムニー氏の独走体制は依然揺るぎない。<br />
<br />
今回ロムニー氏の最も注目を浴びた発言は、当面の与野党間での争点である政府債務残高上限の引き上げ問題である。ロムニー氏の立場は「オバマ大統領が歳出削減へのリーダーシップを取らない限り引上げには賛成しない」と共和党内に共通するもので明確である。<br />
<br />
今後ロムニー氏が最も注意し、かつある種の妥協が求められる相手は党内右派、つまり Tea Partyのグループであろう。今後党内右派はロムニー氏の候補擁立に対しあらゆる反対工作をしかけてくるであろう。現在のところの世論調査ではロムニー氏が右派のサラ・ペーリン氏をはるかに上回っているものの、今後のペーリン氏の動きが注目される。次回の討論会は 8月11日にアイオア州で行われる予定だ。まだまだ共和党内での長い戦いは始まったばかりである。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-9845795600949393012011-06-13T16:11:00.001-07:002011-06-13T16:14:33.937-07:00オバマ大統領の再選への動き<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjHiFMx-EPoqcJmSeWydpTga8K5k3EAUHOU2IZj6CCsaBVfndLuAgfwvT8RbQUXrsfPqJIAP9EkfIBU_6yYcHYQEwyBl4k03EFG3DOl9lRwyHR2Ou0mgglL6sLfgAFV1pHz4flfYAcc5-E/s1600/Obama.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="214" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjHiFMx-EPoqcJmSeWydpTga8K5k3EAUHOU2IZj6CCsaBVfndLuAgfwvT8RbQUXrsfPqJIAP9EkfIBU_6yYcHYQEwyBl4k03EFG3DOl9lRwyHR2Ou0mgglL6sLfgAFV1pHz4flfYAcc5-E/s320/Obama.jpg" t8="true" width="320" /></a></div>選挙民が常に移り気である事は米国であれ日本であれ洋の東西を問わない。来年の大統領選挙で再選を目指すオバマ大統領の人気は米国経済の雲行きが怪しくなってきているのと同時に、このところ更に下降気味だ。ちょうど 2009年の日本での総選挙での「政権交代」騒ぎの様に、2008年末の米国での「Change」の熱狂振りは一体何であったのであろうか。<br />
<br />
オバマ大統領が選挙戦に勝利したのはリーマンショック直後の 2008年11月である。人々は不動産バブルの崩壊により自ら保有する株・証券・債券・住宅等の資産の壊滅的な目減りを嘆き、今こそこのバブルの張本人である Wall Streetのヘッジファンドや金融機関を厳しく規制すべきだとして、庶民の味方であるオバマ氏を選んだのかも知れない。<br />
<br />
当時、オバマ大統領はこの Wall Streetの銀行家達を「Fat Cat」として厳しく非難したものだ。Fat Catとは政治用語で、選挙資金の大口献金により自らの利益の為に何かと政策に口出しする「御用商人」を意味する。オバマ大統領はまた同時にこうした銀行家達が驚くべき高額の所得を得ている事についても酷評していたのである。<br />
<br />
しかし、その同じ大統領が今回は何と大統領再選出馬の正式発表を前にて、この Wall Streetの銀行家達をわざわざ White Houseの夕食会に招いたのである。更に近々ニュヨークの高級レストランに更なる数の銀行家達を招待して選挙戦への資金協力を訴える予定でもある。この背景にあるのは、ここに来て来年の大統領選での共和党の最有力候補とされるミット・ロムニー元マサチューセッツ知事が精力的に選挙資金集めのキャンペーンを開始しているからである。ロムニー氏こそは Venture Capitalの経営者としての経験からも、より Wall Street寄りのイメージが強い。また最近の世論調査ではオバマ氏よりもロムニー氏がその支持率において優勢だ。<br />
<br />
オバマ大統領に対しては、その半アフリカ系という人種的な面と、貧困層の出身、更には弁護士として貧困地域でボランティア活動をしていた市民運動家という経歴から、日本人はともすれば庶民の味方との誤った印象を受けがちだ。<br />
<br />
しかし、オバマ大統領こそは 2008年の大統領選で史上まれに見る最高額の$380百万(約304億円)という巨額の選挙資金をかき集めたまさに小沢氏もびっくりの「お金こそが全て」の金権なのである。小沢氏と違うのは表面上 internetでの個人献金という新しい手法を使うという事でよりクリーンなイメージを前面に出しつつ、実際はヘッジファンドやあらゆる既存組織からの献金が大きい事をうまく包み隠せていた点である。前回の大統領選挙での選挙資金拠出で協力したのは、ヘッジファンドのみならず、従来の民主党の支持基盤である労働組合、黒人・ヒスパニックのマイノリティー、環境保護団体、メディア、映画界であろう。<br />
<br />
しかし、今回はいずれのグループにおいてもオバマ大統領への大きな落胆ぶりは隠せない。そこにおける実態というものは日本の民主党政権と同様に、「Change」の掛け声のもとにバラマキの空約束で選挙民をうまく釣れたとしても、現実の政策としては外交面でも財政面でもそう思い切った変革というものは出来ないという事だ。特に米国はオバマ政権に移行した以降の 2009年と2010年に巨額の財政赤字を積み重ねて、政府は今や経営破綻同然であり、世界の超大国の地位から滑り落ち様としている状態である。<br />
<br />
政治の世界はまさにリアリティーの世界である。また政治は結果責任を問われる世界でもある。想定外の災害、想定外のバブル崩壊、いずいれも全く言い訳が効かない。果たして来年の選挙戦は ABO(anyone but Obama)となるのであろうか。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-38016138360636330362011-06-08T21:55:00.000-07:002011-06-08T21:58:22.128-07:00Debt Ceiling(米連邦債務残高の上限規定)<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgF9rR_dkmScjXNBAn8g7ixrGEqjYivyz9XLgfuMy7k8lgp8T7b47pSr6xPC3NEaBGNdZUKgE6v6YBdxkehuES7XG280u7KmJtEEo4q2alRUHUni8lanMmFz432akISgzSJaAMzRvkiSko/s1600/%25E3%2583%2580%25E3%2583%258B%25E3%2582%25A8%25E3%2583%25AB%25E3%2582%25A4%25E3%2583%258E%25E3%2582%25A6%25E3%2582%25A8.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgF9rR_dkmScjXNBAn8g7ixrGEqjYivyz9XLgfuMy7k8lgp8T7b47pSr6xPC3NEaBGNdZUKgE6v6YBdxkehuES7XG280u7KmJtEEo4q2alRUHUni8lanMmFz432akISgzSJaAMzRvkiSko/s1600/%25E3%2583%2580%25E3%2583%258B%25E3%2582%25A8%25E3%2583%25AB%25E3%2582%25A4%25E3%2583%258E%25E3%2582%25A6%25E3%2582%25A8.jpg" t8="true" /></a></div>米国では連邦政府の債務残高、つまり国債発行額の上限が議会により規定されている。 1917年の国債発行時に設定された115億ドルの上限以来、実に100回以上にもわたり、この連邦政府の債務残高の上限引上げが議会により繰返し承認されてきている。最近では 1995年から 12回にわたり上限引上げが行われているから、ほぼ毎年の恒例行事と言えるかも知れない。<br />
<br />
しかし、今回は政府がリーマンショック後の金融危機回避の為に巨額の緊急対応を行った結果、2009年と2010年の各単年度赤字額は2年連続で2000年代に入っての年間平均赤字幅の4倍にもなる突出した額になってきている。まさに経営破綻寸前とも言える極めて異常で深刻な事態である。<br />
<br />
既に米国政府の債務残高は現行の上限額である14兆2940億ドルに達している模様である。しかし、これが即 default、債務不履行の宣言となるかは別であり、政府としては何とか二つの年金支払いを先述べする事で二ヶ月先の 8月2日をその上限切上げ決定の期限としているのである。<br />
<br />
そこでオバマ大統領としては、2023年までの約 2兆ドルの歳出削減と増税との組合せで4兆ドルの赤字削減案を提示する事で、何とか上限引上げを議会に承認させ様としているが、一方では下院で多数派を占める野党共和党は6兆ドルの歳出削減案を掲げての財政健全化を、上限引上げへの条件とするなどの揺さぶりをかけている。<br />
<br />
歳出面を見ると(1) 医療費(高齢者と低所得者への援助) (2) 社会保障費(年金等) (3) 国防費 (4) 国債利払い、これらトップ4項目で実に歳出全体の 72%を占めていて、この中でも医療費と社会保障費の合計は42%と全体の半分近くになっている。<br />
<br />
歳出項目を大別すれば、Entitlementと言われる社会保障費等の「義務的支出」(法律で毎年の歳出額が自動的に決まる)と、国防費や一般経費などの「裁量的支出」(毎年ごとに立法措置で歳出額が決まる)となるが、義務的支出には Pay-As-You-Go条項という財源確保条件が付けられていて、支出を増加させる場合はそれに見合う増税か、歳出削減がなされていなければならない。そこで四つの重要項目の中で歳出削減の手がつけ易いのが裁量的支出である第三番目の国防費である。<br />
<br />
現在の上院仮議長(大統領、副大統領に次ぐ地位)であり、また上院歳出委員会委員長である日系のダニエル・イノウエ議員が来日した際に普天間基地移設問題に関し苛立ちを隠さない発言をしているのは、実は米議会内部で大幅な軍事費削減の圧力がある事を示唆しているものと思われる。つまり、米国は日本防衛、極東アジア防衛の為にいつまでも巨額をかけてまでその軍事的プレゼンスを維持できないぞという事であろう。<br />
<br />
そうなれば中国は以下の三つの点から、米国に対しては格段に優位な地位に立つ事となる。<br />
(1) 本来、米国債保有残高とドル建外貨準備高の両面から見れば、いずれも全体の 1/4を占める最大の債権国の地位にある<br />
(2) 米国が財政危機から軍事費を削減せざるを得ず、極東アジアの軍事プレゼンスを後退させる可能性がある<br />
(3) 日本が震災復興費用捻出の為にドル建外貨準備高の削減や米国債を売却する様な事になれば米国の中国への依存度が更に突出して高まる<br />
<br />
安全保障面での日米関係を考える上では、米国は米国で財布の事情がある事を日本は充分認識しておくべきであろう。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-29631997773511515402011-06-07T20:01:00.000-07:002011-06-07T20:23:37.989-07:00QE2<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhas-tudhqk1LGrbcPwyTUXTX7Zn-pqX_B0Ur3DJ-nksayWZ8bRON8FKlnya_dtAjQ9qtYtWKopCA6ppooDcUkr75-jVnZ9ywj5gitkY5B9EH5LkcbhXLz5vdOcHNqd-fAUuJk0RBmy8kM/s1600/%25E3%2583%2590%25E3%2583%25BC%25E3%2583%258A%25E3%2583%25B3%25E3%2582%25AD.bmp" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhas-tudhqk1LGrbcPwyTUXTX7Zn-pqX_B0Ur3DJ-nksayWZ8bRON8FKlnya_dtAjQ9qtYtWKopCA6ppooDcUkr75-jVnZ9ywj5gitkY5B9EH5LkcbhXLz5vdOcHNqd-fAUuJk0RBmy8kM/s1600/%25E3%2583%2590%25E3%2583%25BC%25E3%2583%258A%25E3%2583%25B3%25E3%2582%25AD.bmp" t8="true" /></a></div>FRBによる QE2が今月末に終了しようとしている。QE2とは量的緩和策(Quantitative Easing)第二弾の事である。量的緩和策とはFRBが国債やMBS(住宅ローン担保証券)を購入する事によって民間の金融機関に代わり、直接かつ多量に市場に必要資金を供給するものである。第一弾のQE1はリーマンショック後の金融危機が懸念された 2009年3月から 2010年3月までに実施され、国債のみならず MBSの買取りも行われた。一般的な量的緩和策は日本の日銀も2001年から 2006年の 5年間にわたり実施したが、QE2ほどの短期間に集中して大規模に行うものではなかった。<br />
<br />
今回の第二弾では、昨年11月に、失業率の更なる悪化を懸念したFRBが8ヶ月間にわたり総額 6,000億ドル(約50兆円)もの国債の追加購入を行う事を決めたものである。これにより株価が若干回復して消費が伸びたものの、一方では余剰資金が原油市場に流れてガソリン価格の高騰(オバマ政権発足時から二倍の 水準の$4/ガロンを越した)を招き、米国内での消費を冷やすという副作用が出てきている。<br />
<br />
それでは日本の国家予算の半分以上にもなる資金を市場に注いで、果たして失業率が改善され、住宅価格の下落が止まったのであろうか。現時点での答えはNOである。失業率は昨年11月の9.8%から今年3月の8.8%までに4ヶ月連続して下落してきたものの、4月からはこれが反転して5月との2ヶ月間は連続して再び 9%台へと上昇傾向を見せてきている。雇用者数に関しては、オバマ政権の景気刺激策により過去 5ヶ月間順調に回復してきたものの、その規模はリーマンショック後失われた600万人とも言われる雇用の回復には依然その足元にも及んでいない。それどころか、ここにきて雇用者数の増加率が縮小してきている。<br />
<br />
また、S&PのCase-Shiller住宅価格指数によると、全米主要20都市での住宅価格は今年 3月にリーマンショック後の最安値を更新した。S&P 住宅価格指数は 2000年1月を100とした数字で毎月表されるが、そのピークは 2006年7月の 206.52 であり、今年3月時点での最安値での指数、138.16はピーク時の2/3となっている。<br />
<br />
リーマンショック後の価格下落を見れば、2009年4月で価格は一旦底をついたが、その後のオバマ政権の住宅取得優遇策もあって若干の回復傾向を見せた。しかし、この優遇策も昨年前半で終了した事もあって、昨年 7月から 8ヶ月間連続で価格が下落してきており、今回の最安値更新はまさに二番底だと言えよう。<br />
<br />
価格下落の主たる要因は、明らかにローン返済の滞りによる差押さえ(Foreclosure)物件の増加であろう。差押さえ物件の住宅販売全体に占める割合は、第一四半期における全米平均では約3割にもなり、州別では住宅バブルの激しかったネバダ州が53%、続くカリフォルニア州とアリゾナ州がそれぞれ 45%にものぼっている。これら差押さえ物件の価格は通常大幅に値引きされており、これが住宅価格全体を引下げるという悪影響を及ぼしている。<br />
<br />
米国の抱える問題は金融政策の行き詰まりのみではない。より大きな問題は経営破綻寸前とも言われるほどの米国政府が抱える巨額の財政赤字問題である。米国では議会が国債発行額の上限を決めているが、既に現在の国債発行額は上限の 14兆2,940億ドル(約1,172兆円)に達してしまっている。今後議会があらたに上限額を引き上げない限り、政府は今期末までに必要とされる約 7,380億ドルの支出が出来なくなり、機能マヒに陥ってしまう事となる。<br />
<br />
現在、米議会ではこの「国債発行上限額の引上げ」が「財政赤字削減額の幅」とからめての政治課題となり、来年の大統領選を見据えての共和・民主両党間での争点の中心となっている。従って、オバマ政権としては、2009年に実施した総額 7,870億(約65兆円)にものぼる景気刺激策の様な思い切った財政措置は最早打てる状況にはない。<br />
<br />
以上、金融・財政両面での米国政府の打つ手は極めて限られてきており、今後の景気動向を見極める上での大きな懸念材料となっている。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-58575105293024010012011-05-01T16:20:00.000-07:002011-05-01T16:27:17.720-07:00英国問題<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiLmrD10sAxl-P__7bgaCDcjZ4M51RBOPpmYtQcdfgKObW8wtXE_TNlG_v8gmDzAorjXyYRaJB2uGHEFJgJLTvPja-FYvygX8hUgLy9hbIbcpm-LwigY8hoV1A0kuLhv0YkL07c-Du4sbU/s1600/%25E3%2583%25AD%25E3%2583%25B3%25E3%2583%2589%25E3%2583%25B3%25E3%2582%25A2%25E3%2582%25A4.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" j8="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiLmrD10sAxl-P__7bgaCDcjZ4M51RBOPpmYtQcdfgKObW8wtXE_TNlG_v8gmDzAorjXyYRaJB2uGHEFJgJLTvPja-FYvygX8hUgLy9hbIbcpm-LwigY8hoV1A0kuLhv0YkL07c-Du4sbU/s1600/%25E3%2583%25AD%25E3%2583%25B3%25E3%2583%2589%25E3%2583%25B3%25E3%2582%25A2%25E3%2582%25A4.jpg" /></a></div>英王室での結婚式の様子を見て、今回は30年前の熱狂はなく、国民の関心はすっかり冷めてしまっている様に思われる。近代国家においての王室や皇室は、「伝統と威信」というものが無ければ最早存在意義がないのではないだろうか。伝統も威信も守るべき立場の人間がそれを何よりも尊重し、引き継いで行くという強い意志と覚悟が無ければ時代とともに消え失せてしまうものである。ダイアナ妃に同情しようがしまいが、イギリス王室の次世代での一連の問題が王室の威信を著しく落としてしまったのは間違いない。30年前の結婚式の事を思いだせば、荘厳な教会における大司教の前での宣誓などはかえって心配にさえ思えて来る。<br />
<br />
威信を保つ上でのもう一つの問題は経済的な裏打ちだ。昨今のイギリスの財政赤字は労働党政権下で一気に膨張し、一時はギリシャよりもイギリスの方が危ないと言われたぐらいの破綻寸前である。キャメロン政権になって消費税率の引上げや公務員給与の引上げ停止など思い切った超のつくほどの緊縮財政措置が取られて来ている。しかし、結論から言えばもう二度とイギリスが復活するなどという事はないだろう。それは一般的にではあるがイギリス人が競争を忘れて、額に汗して働かなくなったからだ。これは国際ビジネスの観点から見ても例えば、日本人、米国人、ドイツ人とイギリス人を比較すれば明らかだ。国際社会を知るものなら誰もこの三国の人々よりもイギリス人の方が良く働くという人はいないだろう。<br />
<br />
この深刻な財政赤字問題の結果、バッキンガム宮殿は今や内部までもが観光地化して、宮殿敷地内に安っぽい王室グッズのお土産品を売る売店が設けられている。国からの予算を大幅にカットされて、王室は王室で独自の収入源が必要となったからであろう。イギリス人の友人に言わせれば、「政府は王室も民営化するのか」と言うものだが、もう無い袖は振れない状態であろう。<br />
<br />
これは何も王室だけには限らない。ロンドン市内の例えば議事堂の対岸にある歴史的建造物である旧ロンドン市庁舎は20年ほど前に売却される事となり、日本の中小の不動産業者に買い取られた。今やここには伝統の景観を損なう巨大な観覧車の塔までが設置されていて一帯が遊園地化している。またロンドン西部地区に新たに建設された欧州一とも言われる巨大なショッピングモール(2008年にオープンの Westfield)はオーストラリア資本によるものであり、その中はほとんどと言っても良いほど中東系の若者であふれかえっている。<br />
<br />
ビジネス面から見ると、例えば日本企業が全欧40数カ国以上の市場に何かハイテク製品を売ろうと考えた場合、欧州市場は独英仏伊のトップ4カ国でおそらく全体の需要の半分以上を占めてしまうであろう。その中でもダントツにトップなのがドイツである。人口の面でも、近代化の面でも、社会の高度化の面でも、購買力の面でも、イギリスはもう二度と追いつけない。何よりもドイツ人は少なくともまだ勤勉であり、向上心があり、計画性があり、物事の進め方が緻密でもある。イギリスの自動車産業はことごとく国外企業に敗れ去り、今や海外資本の傘下で細々と名目的に残っているだけである。家電や電子製品や IT関連商品はすべからく日台韓中に押さえられていて、既に20年以上にわたり全く出る幕すらない。<br />
<br />
俗に言う、テニスの本家イギリスに変わる東欧、野球の本家アメリカに変わる中南米、相撲の本家日本に変わるモンゴルだ。生活をかけたハングリー精神がないと、厳しい競争社会には生き残れないのだ。日本もイギリスの事を批判できる立場にはない。バラマキ政策だけの民主党政権はイギリスの歩んだ道を歩もうとしているだけだ。そう言えばイギリスの児童手当は廃止になったかも知れない。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-81686541515901398642011-04-29T18:54:00.000-07:002011-04-29T23:45:52.271-07:00国勢調査結果に見る米国<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEguD0MJAuP_0OI0FCupwlv1jYKJ9yGKuEWXDgKZod1OK_OZKMYRW6SX7rElvWWy7NSnSaEWXcd92rmAflhaudR4FG8b0qXuEU9idj0JeFCaDyvr8Hdk23PkoJdf838QPqpCnXeadZRfSok/s1600/census.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" j8="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEguD0MJAuP_0OI0FCupwlv1jYKJ9yGKuEWXDgKZod1OK_OZKMYRW6SX7rElvWWy7NSnSaEWXcd92rmAflhaudR4FG8b0qXuEU9idj0JeFCaDyvr8Hdk23PkoJdf838QPqpCnXeadZRfSok/s1600/census.jpg" /></a></div>米国でも国勢調査が10年ごとに行われるが、その2010 Censusの結果が公表されている。「州別」、「人種・民族別」の数字を見ると米国全体の人口変化の傾向がつかめるが、結論を簡単に纏めると以下の二点だ。<br />
<br />
1. 州別では、「東部と中西部」から「南部と西部」へと人口比重のシフトがある<br />
2. 人種・民族別では、民族別に見たヒスパニックの急激な増加傾向が見られる<br />
<br />
人口の全体で見れば総人口は約 309百万人となり、2000年の約281百万人から約 27百万人、9.7%の増加である。増加率自体では前回の10年間(1990-2000年)の伸びの 33百万、13.2%を下回っているものの、1950年の人口である 151百万人からは60年間でおおよそ倍増している。<br />
<br />
州別での全体に対する人口構成では、カリフォルニア 12%、テキサス 8%、ニューヨーク 6%、フロリダ 6%と従来からの big-4 で全体の人口の 32%で約1/3を占めている。この4州については企業の販売・マーケティング上や大統領選挙での集票の際には戦略上最も重要な地域である。更にこれに続くのが、イリノイ、ペンシルバニア、オハイオ、ミシガンの中西部 4州で合わせて全体の16%、その後はジョージア、ノースカロライナの南部2州が続きそれぞれ 3%づつとなる。<br />
<br />
問題は州別の人口増加率である。増加率の高いものの順で見ると、ネバダ 35%、アリゾナ25%、ユタ 24%、アイダホ 21%と西部に著しい増加が見られる。その後はテキサス、ノースカロライナ、ジョージア、フロリダの南部がそれぞれおおよそ 20%増で続き、更に西部のコロラドと南部のサウスカロライナがそれぞれ 17%増と15増%で続く。要するに米国の人口増加は中西部や東部では最早見られず、南部と西部に集中しているという事である。この傾向は既に前回の調査時の1990-2000年の10年の間に同様に見られたが、それが20年間に亘り継続しているという事だ。<br />
<br />
さて、注意すべき点は人種別・民族別の方である。この国勢調査では設問はまず二つに分けられる。第一は「Hispanic or Not」というもので、Hispanicという概念はrace (人種)ではなく、ethnicity(民族)に関するものである。Hispanicの中では更に 「メキシコ&メキシコ系」、「プエルトリコ」、「キューバ」、「その他」と分かれている。極めて大雑把に言えば、ニューヨークにはプエルトリコ、フロリダにはキューバ、テキサスとカリフォルニアにはメキシコからの移民が多い。<br />
<br />
更に第二の設問で人種別の、「白人」、「黒人」、「アメリカインディアン」、アジア系の中の「ハワイ」、「中国」、「韓国」、「日本」、「ベトナム」等という風に分けられ、最後は「その他」となるのだ。従って、第一の設問でHispanicと答えた人は第二の設問で「白人」と答えるかもしれないし、「黒人」かも知れないという事だ。<br />
<br />
例えば、メキシコの例をとれば、富裕層、インテリ層はスペイン系の白人であり、中間層にいわゆる我々が浅黒く口ヒゲをイメージする混血系があり、更に下層には小柄な原住民系のグループにと分かれる。この様に人種的には分かれていても「Hispanic or not」のethnic(民族性)な面では Hispanicという一つのグループとなる質問となっているのだ。<br />
<br />
ここに米国と言う国の現状及び将来と人口動態の本質を見るべきであろう。今回の調査では米国全体では Hispanicは 16.3%であり not Hispanicは 83.7%である。増加率で見ると2000-2010年の10年で Hispanicは 43.0%に対し、not Hispanicは4.9% だけである。更に州別に見てHispanicの比率の高い順であげると、ニューメキシコ 46.3%、カリフォルニア 37.6%、テキサス 37.6%、ネバダ 26.5%、フロリダ 22.5%、と言う具合である。<br />
<br />
つまりおおまかに言えば人口増加率の高い地域ほどHispanicの比率が高いという事である。こうなれば最早、白人がどれだけの比率を占めているかなどという区別は昔の話であって、まさにHispanicの比率が今後それだけ増え続けるのかという事で、この国の性格がどう変わっていくかの方を注視すべきであろう。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-20892479306369777372011-04-28T09:18:00.000-07:002011-04-28T10:44:36.130-07:00あらためてドイツとは<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjun12NeK4QfCaHkIgrQMZ6LV6r5-xUo7vi4csxad04afdoJ06FcD05llJO236gXEIguAmaGYEs2ahi6HLEHBoHAQcl1wk4sUHOdwkB6jcbUHKUvjDz_nV10EBpwZzWWwvKQtfKXY2NjTw/s1600/%25E3%2582%25AF%25E3%2583%25A9%25E3%2582%25A4%25E3%2583%25B3.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" j8="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEjun12NeK4QfCaHkIgrQMZ6LV6r5-xUo7vi4csxad04afdoJ06FcD05llJO236gXEIguAmaGYEs2ahi6HLEHBoHAQcl1wk4sUHOdwkB6jcbUHKUvjDz_nV10EBpwZzWWwvKQtfKXY2NjTw/s1600/%25E3%2582%25AF%25E3%2583%25A9%25E3%2582%25A4%25E3%2583%25B3.jpg" /></a></div>今まで数回にわたり教科書のごとくドイツの歴史を駆け足で触れて来たのは国会での馬鹿げた「日独友好決議」なるものがあったのが発端だ。この決議の根底には、ドイツと言う国は軍事国家一筋であり、好戦的で周辺国に侵略ばかりを続けて来たという誤った解釈があるからに違いないと感じ取ったからだ。今回、衆議院での決議の際に退席し、反対した議員の見識を高く評価する。<br />
<br />
「勢力均衡による平和」「列強時代に学ぶ」「神聖ローマ帝国」と一貫して触れてきているのは、ドイツの歴史は陸続きの欧州で周辺にフランス、イギリス、ドイツという絶対王政、専制君主の中央集権国家に囲まれて、それらの国々と食うや食わずの生残り競争を続けて来たという背景がある事をまず理解すべきだと思うからだ。そもそもドイツは神聖ローマ帝国の様に皇帝自体が勅書でもって選挙で選ばれると規定された様な存在であったから、地方分権のまことに緩やかな牧歌的な統治形態であったかと言えよう。<br />
<br />
侵略という言葉を使うなら、その度数と面積を計算すれば、世界での侵略チャンピオンはイギリスとフランスであろう。それでは日英友好決議なるものがあれば、わざわざ「お互い中国に侵略しました」などと書き込むのであろうか。ドイツは欧州諸国の中で海外での植民地は圧倒的に少ないではないか。<br />
<br />
ナチス政権によるポーランド侵攻をとっても、プロイセンとその後のドイツ帝国が戦勝の結果正当に獲得した領土を第一次大戦の敗戦で失い、それをまた取り返しただけの話である。それを単に侵略という言葉で片付けてしまうと、それ以前の歴史を黙殺してしまう事となる。また同時に、英国を除く欧州諸国は日本と違って陸続きである。従って、常に他国に侵略されるか、あるいは侵略するかの繰返しでもあったのだ。<br />
<br />
現在フランス南東部のアルザス地方などは何回ドイツ領とフランス領の間をいったりきたり繰り返した事か。つまりは侵略しないと侵略されてしまうというのが現実であったのだ。ドイツとてやたら周辺諸国と戦争ばかりしていたのではなく、戦争を極力避けるべく、あらゆる「外交努力と策略と同盟」をやり尽くしたという事実を忘れてはならない。<br />
<br />
ただ一点の大きな汚点はヒトラーのナチス政権でのユダヤ人大量虐殺である。これはもう言い訳のきかない、原爆投下に等しいまさに人類に対する罪であろう。しかし、このナチス政権の非道だけをとってドイツと言う国があたかも好戦的な歴史を繰り返して来たと理解するのは誤りだ。そう理解するのは作られた「軍国日本」のイメージと同様に、戦勝国米国による巧みな「イメージの刷り込み」が功を奏している結果なのだろう。<br />
<br />
米国による巧みなイメージの刷り込みという面では、米国に永住している日本人の多くにとって、欧州諸国を見る時の目は米国人の目を通して見たものに影響され易い。しかも悪い事にそういう米国在住の日本人が日本から見れば国際通だという事で通用してしまう事だ。これを例えて言えば、東京の高級フランス料理店で米国在住の国際通の紳士がさも物知り顔でクラムチャウダーをオーダーする様なものだ。また、日本人が欧州にやってきて、あの米国風の発音の英語をさも得意顔で喋るのほど欧州人の軽蔑の対象となるものはない。ドイツ人の同僚達は一応、慇懃に表面上は取り繕っていても、裏に回ればいつもブフッ!だ。<br />
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話が随分それてしまったが、ドイツに関してはなかなか言い尽くせないので、あらためてクライン孝子女史の名著「大計なき国家・日本の末路」を是非お薦めする。見出しに書かれている、「戦争で負けて失ったものは、戦争で取り返すしかない」という現実を熟知していたドイツ、この一行が全てを語っている。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-4642971509724065002011-04-27T11:37:00.000-07:002011-04-27T15:49:24.020-07:00神聖ローマ帝国<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj44o47ReI1-ggoyjCdVuydjhVPm5z8DblE5tqtPHtGX7hnCVqoYzodsJN-j-zEjQFh0IFgKl5ZJrQ_cadX4JjUldxYeltKfNMOX14bNOrLUtOWb6PDl-TzslZe0tF6fxnTWbIS5XLL7QY/s1600/%25E7%25A5%259E%25E8%2581%2596%25E3%2583%25AD%25E3%2583%25BC%25E3%2583%259E.bmp" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" i8="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj44o47ReI1-ggoyjCdVuydjhVPm5z8DblE5tqtPHtGX7hnCVqoYzodsJN-j-zEjQFh0IFgKl5ZJrQ_cadX4JjUldxYeltKfNMOX14bNOrLUtOWb6PDl-TzslZe0tF6fxnTWbIS5XLL7QY/s1600/%25E7%25A5%259E%25E8%2581%2596%25E3%2583%25AD%25E3%2583%25BC%25E3%2583%259E.bmp" /></a></div>ドイツの歴史を学ぶ上でまず最初に戸惑うのは「神聖ローマ帝国」と言う名称だ。ドイツ語では確かにHeiliges Römisches Reichであるからそのままの和訳である。この神聖ローマ帝国は962年のオットー大帝の即位から 1806年のナポレオンのフランスによる征服で解散されるまで実に九百年近くの長きにわたり欧州大陸の中央に君臨するのである。この帝国はローマという仰々しい名前にも拘わらず実態はドイツ人の帝国であった。従って、ヒトラーの時代のドイツを第三帝国と言うのは、この神聖ローマ帝国が第一、1871年のプロイセンによるドイツ帝国が第二という事となる。<br />
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そもそもこの帝国は簡単に言えばフランク王国の流れを汲む東フランク王国がその前身と言えよう。フランク王国がライン川とアルプスという地形によって三分割されて、現在のフランス、ドイツ、イタリアの原型となったが、東フランクはそのうちのライン川の東側、アルプスの北側の部分である。しかし当時、北はバイキングのノルマン人、東はフン族のマジャール人の襲来と侵略で、外部異教徒との戦いもあって、帝国はゲルマン人の軍隊指導者を封建領主として征服地をその領地としていったのである。そしてこのゲルマン人の帝国の皇帝は血統ではなく有力領主による選挙により選定される形となっていく。<br />
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とは言え、帝国としてのその皇帝の権力はまだまだ脆弱であった為、簡単に言えば、カトリック教会の権威、つまりローマ教皇の伝統と権威を利用したという事だ。これがこの「神聖ローマ」なる仰々しい名前の由来である。この帝国はまた、中央集権的な国家ではなく、領内各地に分散された王国や公国等の領邦によって成立っており、その実態は帝国と言えるものかは、はなはだ疑問である。<br />
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この帝国はザクセン朝・ザーリア朝からホーヘンシュタウヘン朝へ、更にはハプスブルグ家にと王朝は事実上、世襲がらみで受け継がれていくが、この帝国の特徴をなんと言っても、ローマ教皇の権威とドイツ諸侯との権力との間における絶妙なバランスにある。つまりイギリスやフランスの様な中央集権的な絶対王政とはまた違った権力構造になっているのである。その一つの表れが、1356年のカール4世時代に出された「金印勅書」である。この勅書は31条からなり、一言で言えば「皇帝の選挙規程」と「帝国議会の法的根拠」を示すものである。そもそもゲルマン人の社会では昔から皇帝さえも選挙で選ぶと言う慣わしがあった事が驚きであり、また皇帝自身が自らの地位を律する勅書を出すと言うのもこの時代の事を思えば極めて近代的な事である。<br />
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長い帝国の歴史の詳細は割愛するとして、17世紀に入りこの強固な帝国の存在を大きく揺らがす事態が生じるのである。16世紀のルターによる宗教改革とそれを促進したグーテンベルグによる印刷技術の発明に事の発端を見る事が出来る。従来聖職者が独占的に支配してきたラテン語の聖書のドイツ語版を印刷技術により大量配布する事が可能となって、これが新教徒勢力を作り出したのと同時にドイツ人としての国民意識を芽生えさせたのである。こうなれば帝国はなにもなすすべもなく、ドイツ国内は分裂状態となって諸外国勢力を巻き込んでの30年の宗教戦争となるのだ。後の国民国家の成立へとつながるあの有名なウェストファリア条約(1648年)はこの30年戦争の終結と戦後処理の為に66カ国もが参加し署名した。これにより帝国は形骸化し弱体化して、帝都のあるオーストリアはオスマントルコやナポレオンフランスに侵略されてしまうのである。<br />
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こうしてドイツの歴史を見てくると、日本の隣国の大国の事を思わざるを得ない。世界の人口の 1/5を持ち、5年後には米国を抜いて世界一の経済大国になろうとするこの現代の帝国においては、国民の選挙権がない事はおろか、言論の自由も、インターネットを使う自由もない。共産党という一つの政党による古典的、専制的な政治体制が続いている国である。しかもその共産党内部においてでさえ、皇帝たるトップを決める選挙規程も明らかにされていないのであるから、金印勅書が出された14世紀ドイツよりもはるかに遅れているのである。国家財政破綻による落日の米国が東アジアからの軍事的プレゼンスの後退を余儀なくされ、勢力均衡のバランスが大きく崩れて、この大国の「歯止めの利かない暴走」の向かう先がこの日本となるのは目に見えている。もうグーテンベルグの印刷技術に匹敵するインターネットにしか、この暴走を少しでも抑える手立ては残されていないのであるが。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-21670140988020251512011-04-26T15:44:00.000-07:002011-04-26T16:17:19.036-07:00列強時代に学ぶ<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj0EhhvNQoTdDr-ZM8YcS64uPbgRmMjx3WrmX5a1nsNMFwD9FYueR-O51uwHrVEWBqcT7XQfvGicsfyPnneTfoB52HRsq1M80bUhtgTKAFwLCduhrR0ublzI433Ch2fR9hXhon4-ROq0hE/s1600/%25E3%2583%2595%25E3%2583%25AA%25E3%2583%25BC%25E3%2583%2589%25E3%2583%25AA%25E3%2583%2583%25E3%2583%2592.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" i8="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj0EhhvNQoTdDr-ZM8YcS64uPbgRmMjx3WrmX5a1nsNMFwD9FYueR-O51uwHrVEWBqcT7XQfvGicsfyPnneTfoB52HRsq1M80bUhtgTKAFwLCduhrR0ublzI433Ch2fR9hXhon4-ROq0hE/s1600/%25E3%2583%2595%25E3%2583%25AA%25E3%2583%25BC%25E3%2583%2589%25E3%2583%25AA%25E3%2583%2583%25E3%2583%2592.jpg" /></a></div>ドイツの歴史はイギリスやフランスの歴史と違って、時代時代によってその領域の地図が変わるので複雑だ。1871年のプロイセン主導によるドイツ帝国成立までは、その領域は同じドイツ圏の覇者オーストリア・ハプスブルグ家による神聖ローマ帝国のもとに王国、公国等に小さく分かれていた。ドイツ帝国成立に至る決め手はプロイセンによるナポレオン三世のフランスとの普仏戦争(1871年)での勝利であるが、それに先立つオーストリアとの普墺戦争(1866年)での勝利も、ドイツ圏の領域での足固めとして大変重要であった。<br />
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普墺戦争に至るまでのドイツ圏での覇権を求めてのオーストリアとの戦いで、プロイセン側での主役は何と言っても1740年に即位したフリードリッヒ大王(Friedrich der Große)であろう。最近では米国のゲーツ国防長官が演説で引用したDiplomatie ohne Waffen ist wie Musik ohne Instrumente. 「軍事なき外交は楽器なき音楽のごとし」の名言を残したプロイセンの専制君主である。歴史上の大人物を今の近代社会の価値判断に基づいて評価を下す事は出来ない。このフリードリッヒ大王の名言は憲法9条により平和ボケをした現代の日本では好戦的であるとして危険視されていて、それこそ外交官の間では禁句であろう。しかし、時代を問わずこれが外交の本質だ。<br />
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フリードリッヒ大王は即位の年の年末には、早速オーストリア継承戦争(1740年)を仕掛ける。オーストリアのマリア・テレジア王女が神聖ローマ帝国の皇帝に即位する事に反対し(王女の皇帝即位は前例がなかった)、この名目での戦争に勝利してプロイセンは隣接するシュレジア地方(現在のポーランドの東部)を獲得した。しばらく後に、挽回をはかるマリア・テレジアのオーストリアは宿敵フランスと、更にロシアとも同盟を結ぶ事でプロイセンに挑んだ。この7年戦争(1756-63年)は長期戦となりプロイセンは苦戦し敗戦まで覚悟したが、結局、フランスと対抗する同盟国イギリスの支援を得て何とか持ちこたえるのである。<br />
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その後一時的にはプロイセン、ロシア、オーストリアの三国間では勢力の均衡が保たれ、緩衝地帯であるポーランドの三分割が進められた。また、プロイセンはイギリス・オランダ連合軍と一緒に戦ったワーテルローの戦い(1815年)でフランスのナポレオンを破り、ウイーン会議(1815年)を経て、ドイツ圏の盟主であるオーストリアをしのぐ勢いとなる。一方では、プロイセンはロシア、オーストリアとの間の神聖同盟を結び、国内での革命勢力を押さえると同時に、フランスからの産業・商業の担い手である新教徒ユグノーを積極的に受け入れて、軍備の近代化と国力の充実を図った。この結果が最終的には普墺戦争(1866年)での圧倒的な近大軍事力での勝利である。<br />
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その後、前回述べた通り、ドイツ帝国が成立した 1871年から第一次大戦勃発の1914年までの 44年間にわたり、「英仏露墺普」の欧州列強間の勢力均衡が保たれ、それが複雑に絡み合う列強間での同盟関係を作り出した。ここにこそ外交・安保の本質が隠されていて欧州の歴史で最も面白い時期である。またそれは同時に、日清戦争後の空白地帯となった満州・北支地域で南下を目論むロシアと対峙していた日本にとって、露仏同盟に対抗するイギリスとの日英同盟(1902年)を結ぶ結果に至った事は恵まれた環境であった。<br />
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多極化に向かう現在の世界の列強は「米露中欧」である。そして舞台は欧州から東アジアに移った。19世紀の領土拡張と、現代での産業・資源と金融・財政での競争と、国益のぶつかり合いの内容の違いはあっても、その根底には軍事力(核武装の)がある事は何ら変わらない。今回の大震災での原発事故で、放射性物質の汚染がかくも恐ろしいものであるのかを日本国民は知らされた。列強側では日本国民の災害に対する resilienceを絶賛しながらも、裏では菅政権の狼狽する対応の無能ぶりを見て、「日本を陥れるには核での威嚇がかくも有効なるものか」という事を冷徹な眼で学び取ったであろう。<br />
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18世紀末の「普露墺」の列強によるポーランド分割の様に、近い将来の「米中露」間での非核地帯の日台韓の共同管理に向けての動きは既に始まっている。それが落日の大国米国にとって取り敢えず取り得る唯一の勢力均衡の構図なのであろう。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-51354545117947078702011-04-24T19:08:00.001-07:002011-04-24T21:30:00.391-07:00勢力均衡による平和<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj0xSrLtjGHHyrlbdYk7x_nemxuFCBLerKM24YjFlncr6kbmcV8BDS7sKGu0dKItCQUtbpLOWH_jPXuYQKnwE5eC6zdMYQ6UhZYmkk1gtxc7zQ09N8txdxyw8QWm8ta_r3FRdTMOTlmr9U/s1600/%25E3%2583%2593%25E3%2582%25B9%25E3%2583%259E%25E3%2583%25AB%25E3%2582%25AF.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" i8="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj0xSrLtjGHHyrlbdYk7x_nemxuFCBLerKM24YjFlncr6kbmcV8BDS7sKGu0dKItCQUtbpLOWH_jPXuYQKnwE5eC6zdMYQ6UhZYmkk1gtxc7zQ09N8txdxyw8QWm8ta_r3FRdTMOTlmr9U/s1600/%25E3%2583%2593%25E3%2582%25B9%25E3%2583%259E%25E3%2583%25AB%25E3%2582%25AF.jpg" /></a></div>1861年の日本とプロイセンとの修好通商条約締結から150周年という事で先日の何ともピントの外れた国会決議と相成ったわけだが、そもそもこの時代のプロイセン(Preußen)は地図上から見ても現在のドイツとはやや性格が異なる国家だ。プロイセンは北ドイツ、ポーランド、バルト海沿岸を拠点とするドイツ騎士団領とブランデンブルグ選帝侯領が合体して出来た新興の軍事国家だ。この時代のプロイセンの東アジア遠征艦隊が日本にやってきたのが条約締結のきっかけらしい。<br />
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既にアジア各地に植民地獲得の爪を伸ばしていたイギリスやフランス、あるいは南下の動きを見せていたロシアを避けて、日本がこの欧州で急激に勢いを伸ばすプロテスタントの軍事新興国を明治維新後の富国強兵のお手本にしたのは正解だろう。プロイセンとて極東での植民地獲得の野心を持って極東にやって来たのであろうが、当時は何分いまだドイツとしての統一前後でもあり、欧州での自らの足元固めに専念するのが先決であったであろうから、日本にとっては組みやすい相手だ。<br />
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プロイセンはこの日本との条約締結の 5年後の1866年には普墺戦争でオーストリアを破り、更にそのまた 5年後の1871年には普仏戦争でナポレオン三世のフランスを破って、破竹の勢いであった。この結果、同じ年にプロイセンが主導してドイツ各地の王国、公国、大公国、司教領等の領邦を取り纏めて統一的なドイツ帝国の成立を果たすのである。<br />
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実はこのドイツ帝国成立の1871年から第一次世界大戦が始まる1914年までの 44年間は欧州には戦争がない、安定した平和が保たれた時代であった。言うまでもなく、英仏露独墺の列強の間で見事な勢力均衡(Balance of Power)が成立っていたからである。この44年間という時間の長さを感覚でとらえ様とすれば、それは丁度1945年の日本の敗戦から1989年のベルリンの壁崩壊までの東西冷戦時代の長さと同じである。<br />
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それでは何故、新興軍事国プロイセン主導によるドイツ帝国の出現によって、欧州内の勢力均衡バランスの変化が生じたにも拘らず、半世紀近くも平和が保たれたのだろうか。それはドイツの鉄血宰相(der Eiserne Kanzler)と言われているビスマルクの絶妙な外交手腕によるものである。ビスマルクはあくまでも現実主義的な観点に徹して、誕生間もないドイツの欧州内での地位を確固なものとし、その国益と生き残りの為を思い、外交手腕を発揮した。ビスマルクは当時複雑に絡み合う英仏露墺の列強間の利害・敵対関係を徹底的に分析利用して、各国間での協商や同盟を画策し、独自の安全保障体制を作り上げたという事なのだ。これこそが結果的に欧州内で見事な勢力均衡を生み出したという事であり、決してビスマルクは平和主義者でもハト派でも何でもない。<br />
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同様に戦後日本の平和と経済的な繁栄は、何も憲法9条があったからや平和念仏を唱えていたからの結果からではない。これはあくまで米ソ間での「核の攻撃には核で対抗」という軍事力での勢力均衡が保たれていた結果であり、また日本が日米安保条約に基づいて米国との軍事同盟関係を持つという正しい政治的選択をした結果であるのは言うまでもない。<br />
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歴史を振り返れば勢力均衡が崩れて、突出した軍事大国が出現した時ほど大規模な戦争の惨劇が生まれる時はない。欧州の例ではナポレオンのフランス、ヒトラーのドイツ、スターリンのソ連である。そしてこれから間違いなく起こるであろう事は急速な軍事的拡張を続ける中国による東アジアでの覇権である。おまけに中国の人民解放軍は国家の軍隊ではなく、中国共産党に属する組織である。<br />
<br />
その後、ドイツ帝国はビスマルクを疎んじたウィルヘルム二世により誤った方向に路線変更がなされ、ビスマルクが築いた平和の遺産を生かす事なく第一次大戦に突入した。その100年前においてでさえ、ドイツ帝国では議会の総選挙が実施されていた。例え統帥権が独立していたとは言え、言論の自由は確保されて、社会民主党が大躍進した様な国である。この事を思えば、この東アジアにおいて今後勢力均衡が崩れる様な事ともなれば、惨劇の歴史が繰り返されるのは必然であろう。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-52767824881580934392011-04-23T11:30:00.000-07:002011-04-23T13:57:21.974-07:00自主防衛論<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgMrq_ldG2NG3DTnNU9zsssXpLiBZtApNqdOPmrCngJVy6rNIZxpOGYX2CfpnrjgT1HtICb43loEq2wM-WOpfZuT_E74x-mhkxbdNBEfUXhNst0H0eDiG5jKdosbGyW8wY4WbShxkB0Jeo/s1600/%25E4%25BC%258A%25E8%2597%25A4%25E8%25B2%25AB.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" i8="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgMrq_ldG2NG3DTnNU9zsssXpLiBZtApNqdOPmrCngJVy6rNIZxpOGYX2CfpnrjgT1HtICb43loEq2wM-WOpfZuT_E74x-mhkxbdNBEfUXhNst0H0eDiG5jKdosbGyW8wY4WbShxkB0Jeo/s1600/%25E4%25BC%258A%25E8%2597%25A4%25E8%25B2%25AB.jpg" /></a></div>在米の政治・経済評論家、伊藤貫氏が日下公人氏との共著で「「自主防衛を急げ!」という本を最近出版した。実はまだ読んでいないので詳しい内容は知らないままであるが、国民の核アレルギーが極限にまで高まろうとしているこの時期にこそ、敢えて正面から「自主防衛」や「核保有」について改めて議論を深めるという事は意義ある事だと思う。今回の福島原発事故の対応で明らかとなった様に結局は核保有国の米国やフランスが核兵器テロや原発事故に対する備えや訓練では日本では比較にならないほど数段進んでいたという事である。また日本人がこういう安保・軍事というものに対するアレルギーを持つにより、直面する課題に正面から向き合おうとしなかった事が、政府の後手後手に回る対応結果となり、人災を招いたという事だろう。 <br />
<br />
伊藤貫氏の説明を聞くと、同氏が取り上げている点で客観的事実として注目すべきは、「米国の財政赤字悪化がもたらす東アジアでの軍事力不均衡」の危険性である。詳しくこの背景を補足説明すれば以下の通りとなる。<br />
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1. 米国の年間財政赤字は過去最大の GDP比10%にも達していて破綻寸前<br />
2. 米国の歳出で医療費、社会保障費、国防費だけで全体の 3/4を占めている<br />
3. メディケア受給資格者はベビーブーマー高齢化で 50百万が78百万人になる<br />
(メディケアとは高齢者障害者向け公的医療保険で医療費が最大項目)<br />
4. メディアケアの医療費と年金の社会保障費は「義務的支出」で削減不可能<br />
5. 従い、米国は「裁量的支出」の中の最大項目の国防費を削らざる得なくなる<br />
6. 米国の経常収支赤字と国債引受の両面から最大の相手国が中国である<br />
7. 米国は東アジアでの国防費を削減し、軍事的プレゼンスを後退させる事に<br />
8. 中国は経済成長を背景に政権が国内締付けを強化し民主化は進展しない<br />
9. 中国は軍事費拡張のテンポを更に加速化させて東アジアの覇権を確実に<br />
10. 東アジアでの軍事力の均衡状態が一気に崩れて軍事的緊張が高まる<br />
<br />
なお、上記の2,4,6,8,は当方で勝手に追加説明を加えたものである。 (詳細に付いては、4/14付け「米国の財政赤字」をご参照下さい)<br />
<br />
伊藤氏はまた現在の日本外交に関する主張の違いは次の四つのグループに分類されると指摘している。 1. 護憲左翼 2. 親米保守 3. 真正保守 に加えて、4. リアリスト派があり、自分は4であると解説している。この中で戦後日本の歴史で米国隷属をしてきたのは、米国の押し付けた憲法9条を守っていれば良いとする1の護憲左翼と、世界の政治・経済の覇権国家である米国に追随していれば良いとする 2の親米保守であるとしている。<br />
<br />
また、過去の世界の歴史を振り返れば判るとおり、これら1. と 2の勢力はコラボレーショニスト(collaborationist、占領軍に協力する属国主義者)だと言うわけだ。これはまた今後間違いなく起きてくる中国の東アジア覇権の動きの中ではまたぞろ、国内で中国の露骨な内政への影響力に迎合するコラボレーショニストを生み出すであろう事を示唆している。<br />
<br />
一方、リアリスト派の例として判りやすいのは、2003年のイラク戦争の際に米国内で開戦に反対した、スコウクロフト(父ブッシュ政権補佐官)、ブレジンスキー(カーター政権補佐官)、ハンティントン(学者)、ミアシャイマー(学者)といった人達がリアリスト派であった事だ。彼らはイデオロギーからのハト派としての立場で反対したのではなくて、「中東に民主主義をもたらす」等という誤った判断のもとでの「米国の深入りしすぎる介入」が中東の勢力均衡バランスを崩すから反対したのだという説明である。<br />
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我々も海外にいて米国や西欧諸国の動きを見て常に痛感する事は、外交安保の課題は単純なイデオロギーや感情論では解決できない、いや誤った結果しか生み出さないものであって、国家が平和に生き延びる為には現実に向きい、勢力均衡を保つリアリズムの立場を取るしかないという事だ。<br />
<br />
この伊藤氏と日下氏の共著の中ではこれ以外に新たな視点から見た様々な意見が書かれているようであるが、それらについては正直なところ評価は分かれるだろう。しかし、少なくとも近い将来東アジアでの軍事力均衡が崩れて日本の独立性が危ぶまれる事と、そうした国際政治の動きに対して日本はリアリスト派の立場に立って正しい選択の道を歩むべきであると言う点については説得力があるものだ。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-23588739901596870812011-04-22T08:57:00.000-07:002011-04-22T10:07:51.542-07:00日独友好決議なるもの<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhoEaMJqsgSYq_C9M6rOhdQxcPiKpzel-sABKQXhJkGjR7fTK33g4PQ1kHGo8ZqBiBuu3deFjpop0ysu8SYp2kwyoA9NBjDqkBP-xvhGS9z-q186HxwP2pd0WjGiH7x2gYUCqd_W9H-RH0/s1600/%25E6%2597%25A5%25E7%258B%25AC%25E5%258F%258B%25E5%25A5%25BD.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" i8="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEhoEaMJqsgSYq_C9M6rOhdQxcPiKpzel-sABKQXhJkGjR7fTK33g4PQ1kHGo8ZqBiBuu3deFjpop0ysu8SYp2kwyoA9NBjDqkBP-xvhGS9z-q186HxwP2pd0WjGiH7x2gYUCqd_W9H-RH0/s1600/%25E6%2597%25A5%25E7%258B%25AC%25E5%258F%258B%25E5%25A5%25BD.jpg" /></a></div>22日の衆議院本会議で政府・民主党主導による「日独友好決議」なるものが採択された様だ。安倍、麻生、元首相ら40名の自民党議員が退席し、また一部の自民党議員が反対する中での決議採択だ。そもそもこの日独友好決議は、1861年の日本とプロイセンとの修好通商条約締結の150周年記念という事で出された民主党案が、自民党との話合いで一部内容が修正されてきたものらしい。<br />
<br />
具体的には、「両国は、その侵略行為により、近隣諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えることになった」となっていた民主党案を、ホロコーストなどのナチスの戦争犯罪と同一視していると受け止められかねないため、自民党側がこの点につき強く反発していた。3月末時点では「侵略行為」という表現を削除し、「両国は、近隣諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えることになった」と修正する方向で進んでいたという事だ。<br />
<br />
しかし、本来重要な事実として、謝罪や反省をすると言っても戦後のドイツと日本は全く異質だという事をまず理解しておかねばならない。つまり<br />
<br />
1. ドイツは「全てナチスが悪かった」という事で、戦前の体制を全面否定した別の国家となった。<br />
2. 日本は終戦後もそのままの国体を維持して、象徴天皇制にする事で国家は継続した。<br />
3. ドイツは英米仏露の共同管理となり、しかも東側は体制の異なる別個の国家となった。<br />
4. 日本は米国の占領下となったが、ドイツの様に体制の事なる形での国の分断ななかった。<br />
5. ドイツは英米仏らとの集団的自衛権に基づく NATO体制に組み込まれた。<br />
6. 日本は米国だけとの日米安保条約(しかも当面集団的自衛権なし)だけの体制となった。<br />
<br />
一言で言えば、米英仏、特に米国にとればソ連・東欧の社会主義体制国との対峙と、また同時に血を分けた同盟国イスラエルとの関係上、西ドイツをして「全てナチスが悪かった」事を全面に打ち出させ、NATO加盟とEC共同体結成により「西欧への統合化」を進めさせる事が必然であったわけだ。また西ドイツとしても、「全てナチスが悪かった」に基づき、この「西欧への統合化」の流れに身を委ねるのが必然の選択であり、同時に将来の東独の統合を目指しての国家再興の道でもある。つまりは、厳しい冷戦体制下で生き延びる上での「したたかな」で「狡猾」な道とも言えるのだ。<br />
<br />
しかしそうは言っても、一方では常識的に見て、ドイツ国民として「ナチスのホロコーストを見過ごした」というキリスト教神学的な原罪意識というものもあったであろう事は充分考えられる。これゆえ、一般的な理解としてはこの西ドイツの「したたかさ」や「狡猾さ」は、日本人にとってはそれこそ150年前からの潜在意識にある所の「お手本とする尊敬すべきドイツ人」のイメージを損ないかねないので表面化されないだけだ。<br />
<br />
またドイツの「全てナチスが悪い」という点については、戦後の日独両国における国際軍事裁判でも大きな違いを見せている。ニュルンベルク裁判でのナチスによるユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)は「人道に対する罪」であり、「平和に対する罪」とか「戦争犯罪」とは全く異質であって、日本は「人道に対する罪」では何も裁かれてはいない。天皇陛下がこれら三つの罪により裁判で裁かれるという動きさえもなかったし、また後から出て来た確たる根拠のない従軍慰安婦問題などは全く提議さえされていなかったのである。<br />
<br />
こういった根本的な違いを理解せずして、単純に「戦前は両国とも悪うございました」と国会で決議するのはドイツ側から見ても噴飯モノかも知れない。「オトナでしたたかな国」ドイツにすれば、その口から出てくる外交上の美辞麗句は別として、内心では「まあ日本と言う国はなんと国際音痴で、ウブで、ナイーブな事」と見られる事は間違いない。民主党政権による外交音痴がここに来てまたまた取り返しのつかない国難の元を生み出しているのである。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-67599971460840252122011-04-20T12:05:00.000-07:002011-04-20T21:39:26.336-07:00過越祭<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiFh40O8z2CIQA4SrrYP7U9h6oOJNXFbZWZFvCibNOrOo27ki5TLKAtw9taQ9Gw8UrfZfEOZi9JBq1fOhIUS036zuORd9jcnLVpTBbblpl77tgb9k5pgDQ54X2v-WQkg9JAwex5B0sBZ34/s1600/%25E5%258D%2581%25E6%2588%2592.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" i8="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEiFh40O8z2CIQA4SrrYP7U9h6oOJNXFbZWZFvCibNOrOo27ki5TLKAtw9taQ9Gw8UrfZfEOZi9JBq1fOhIUS036zuORd9jcnLVpTBbblpl77tgb9k5pgDQ54X2v-WQkg9JAwex5B0sBZ34/s1600/%25E5%258D%2581%25E6%2588%2592.jpg" /></a></div>米国の昨日 4月19日はユダヤ教の Passover 「過越祭」の日である。米国でカレンダーを買うと必ずユダヤ教の祝日も記載されているが、過越はヨム・キップル(10/7)とハヌカ(12/20)と並びユダヤ教では大事な祝日だ。過越は正確に言えば前日18日の日没から始まる。ルース米大使のツイートでも「昨夜も、今晩も家族と友人と共にユダヤ教のセデルの晩餐を楽しみました。過ぎ越しの祭りにみなさんの幸福を祈ります。」と大使らしく敬虔だ。<br />
<br />
昔子供の頃に初めて聖書を読んだ時に「過越の祭り」でイエスがどうしたとかの事が書いてあっても、今ひとつ何の事か背景が良く理解出来ない事があったし、あの映画「十戒」を見て、兵士が家々を回って男の子の赤ちゃんを殺していくというシーンに子供ながらに衝撃を感じた事もある。しかし、それらは西洋社会では極めて重要な史実でもあるというのが判るのはもう少し大人になってからの話だ。<br />
<br />
その昔、モーゼがエジプトのファラオに奴隷となっているヘブライ人を自由にする様に頼んだが、ファラオはそれを拒絶した為、神がエジプト人に「全ての初子を撃つ」という災いの罰を与えたというお話からだ。そこでヘブライ人の家の門には子羊の血を塗り目印とする事で、この神の災いが過ぎ去る(過越)というのが過越の由来だ。仏教徒の日本人には「子羊の血を塗る」というだけでも何とも血なまぐさく恐ろしい話であろうが、他民族による支配が当たり前の中東や欧州は平和な島国日本とはそもそも歴史の血生臭さが違うのだ。<br />
<br />
さてその後の歴史でも近年まで迫害、差別、離散で苦労を強いられ続けてきたユダヤ人達にとっては自由の国アメリカは「故国」イスラエル以上の安住の地だ。彼らにとっては何よりも身の安全が保障される永住権や市民権が取れる事と、ドルという世界最強通貨で資産を維持運用できる事の魅力は絶大だ。それに米国政府は歴代いかなる政権でも常に故国イスラエルを「血を分けた同盟国」としての立場で強固な関係を維持してくれるので、この米国にはいかなる国にも変えがたい信頼感がある。<br />
<br />
日本人にとっては普段日本ではほとんど接触する機会のないユダヤ人とも、米国企業と取引をしたり米国に住む事で接する機会は大いに増え、また彼らに対する理解もより深まるのは大変恵まれた事だ。私個人の事を言えば、米国に住むユダヤ人とのお付合いでは例えば世話になる弁護士、重要取引先、ビジネスパートナー、不動産取引の相手といったあらゆる局面で少なくない。勿論、ユダヤ人にも色々な人間がいると思うので一概に言うのは妥当ではないが、自らの経験だけを振り返れば、ユダヤ人の人々の印象と評価はすこぶる良い。勤勉で真面目で真摯で誠実で質素で謙虚、とくれば日本人のメンタリティーに合わないわけがない。巷に言われている貪欲で陰謀のかたまりのユダヤ人などはどこにいるのかと思うほどだ。<br />
<br />
米国へのユダヤ人の移民は、彼らのルーツの欧州域内での離散流浪先によりアシュケナージと言われるドイツ系とスファラディと言われるラテン系の二種類に分かれるが、この二派の間でも外観や気質の違いはある様だ。例えば、知合いのスファラディ系のおばさんはスペイン語の姓を持ち、気質もラテン的でのんびりしており、住宅バブル投資に失敗しサブプライムローン返済に困ると言う風である。一方、彼女をクライアントとする不動産屋のアシュケナージ系おばさんの姓は完全なドイツ語であり、気質もしっかりしすぎるほど厳しいという風にである。<br />
<br />
米国における政治、科学、学問、芸術、音楽、法律、医学、経営といった知的職業分野でのユダヤ人の活躍は目覚しい。彼らユダヤ人の事を思うと、今回の大震災での放射性物質汚染で某隣国が「日本沈没」と騒ぎたてた様な事態ともなれば、果たして日本人もあの「日猶同祖論」なるものが現実となってこの米国で生きていくしかない運命なのであろうかという思いが一瞬頭をよぎった次第だ。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-21890068690005154982011-04-18T10:23:00.000-07:002011-04-18T10:35:43.743-07:00小沢氏に関してもう少し<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg43FS1i-0LEpO8uFukDfV4gjwPzRjwHUfEJO03A-nNnMnwop74Jmuom6JH6RAXpGG8TmvhNJAMODlx31_fVFLKk000UKbLCyUZ050R1bXtPeCFPM8QrcldqAehhy7kSaGaf-_ZjFut5Jk/s1600/%25E5%25B0%258F%25E6%25B2%25A22.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" r6="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg43FS1i-0LEpO8uFukDfV4gjwPzRjwHUfEJO03A-nNnMnwop74Jmuom6JH6RAXpGG8TmvhNJAMODlx31_fVFLKk000UKbLCyUZ050R1bXtPeCFPM8QrcldqAehhy7kSaGaf-_ZjFut5Jk/s1600/%25E5%25B0%258F%25E6%25B2%25A22.jpg" /></a></div>Twitterというものはタイムラインを流し読みしていると、必ずふとマウスのホイールボタンを止めてリンクが貼られている先を見てみたくなる様な殺し文句が見つかるものだ。そういうものの中で2009年末に韓国ソウルを訪問した際に市内の大学で行った小沢氏の講演の YouTube動画が紹介されている。そういえば確かにこういう内容の発言を小沢氏が韓国でしたという事を聞いてはいたが、その収録ビデオを見るとそれをどう評価しどう捉えるかは別として、その動画のタイトルにある通りあまり先例のないの「爆弾発言」ではある。<br />
詳細は <a href="http://www.youtube.com/watch?v=UswizjEHAbk">http://www.youtube.com/watch?v=UswizjEHAbk</a> をご覧下さい。<br />
<br />
これを見ると小沢氏の講演内容の概略は下記の通りだ。<br />
1. 近代における日韓の間の不幸な時代は日本国民としてまず韓国に対して謝罪しなければならな い歴史的な事実である。<br />
2. 朝鮮半島南部の権力者が九州に来て、更に海伝いに三重に上陸し、奈良に入って政権樹立をしたのが日本の神話で語られている神武天皇であるという「神武東征」説が江上(波夫)先生の説である。<br />
3. 仁徳天皇稜の発掘は宮内庁が認めておらず、江上波夫氏が(自民党)幹事長時代の小沢氏に対し宮内庁に働きかけて何とか発掘を認めてもらう様依頼した。これを発掘できれば(江上氏が主張する様な)歴史の謎が解明する筈だ。<br />
4. これを私(小沢氏)があまり言うと日本に帰れなくなるが(笑い声)、江上氏説は歴史的事実であると思う。<br />
5. 794年の平安京を作った桓武天皇の生母は百済の王女であった事を天皇陛下も挨拶で「言った事」(敬語ではない)であり、認めている。<br />
6. しかるに、日本人は自分で勉強し判断する自立心が最も足りない国民である。<br />
<br />
この小沢氏が事実だと考える江上波夫氏の「騎馬民族征服王朝説」をどうとらえるかは歴史学上で諸説あるが、小沢氏が敢えて「これが歴史的事実である」とソウルで講演した意図はどういうものなのであろうか。おそらく韓国の人達にあなた方は我々日本人が戦前神と崇めてきた天皇のルーツだったという事を言いたかったのであろうか。講演を聞く韓国人にしてみれば、何やら自尊心がくすぐられる様で悪い気はしないだろうから、小沢氏とすれば日韓親善の為に敢えて爆弾発言を行ったのであろうか。また最後の部分の「日本人は自立性が最も足りない国民である」にいきなり論理が飛躍するのも今ひとつ理解できないが、要はこれもひたすら日韓親善の為に、韓国人に対してへりくだって「日本人はダメな国民ですよ」と言いたかったのであろうか。<br />
<br />
ここで我々政治のシロウトの頭を更に混乱させるのはいわゆる真正保守と言われる人々の中にも小沢氏待望論を唱える人々がいる事だ。真正保守の人々にとってはこの小沢氏のソウルでの講演内容は受け入れ難いものであろうと思うが、むしろ「大局を見るホンモノの政治家としてのかような発言は敢えて問題視すべきものでもない」ものなのか。つまり、これも小沢氏が中国訪問時に胡錦濤主席に対して述べた「私は自民解放軍の野戦軍司令官」という発言と同様に相手を「おちょくったもの」と理解すべきものなのであろうか。その辺が正直よく判らない。このYouTube動画を見る限り、小沢氏は自説を述べるのに堂々としており、これが捏造されたものでもなくまた曲解されたものでもないのは明らかだ。また時期的にも例の習近平氏の天皇会見問題の直前であった事からも一連の流れに沿うものであろう。<br />
<br />
こうなると小沢氏の「理念よりも権力」だと言う今までの極端な変節の経歴を、仮に「政治は行動と結果」だからそういうものだと言う事で理解するにしても、ここで小沢氏がまた再び政治権力の最高実力者になろうとする場合はいかに変節するのか、あるいはこのソウルでの講演内容に沿う様な考えのままで新たな変節をせずに押し通すのかが、またこれも我々凡人には良く理解できないところであるが。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-64111350102933472292011-04-16T15:54:00.001-07:002011-04-17T22:03:03.470-07:00原発問題と台湾<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEirFQaAqi2-VHNgI0NXMACYUlgC_c3WaFCPSvxsBI2wdLmMLL9wc6SnmMiDGqQkRybrpau143oa3SaIoMGWuF2JplbKEwhUbVvLPLXKwVGkuxFRwZLNeQASrf-pH4k0GGccJywENP0BIbo/s1600/%25E8%2594%25A12.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" r6="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEirFQaAqi2-VHNgI0NXMACYUlgC_c3WaFCPSvxsBI2wdLmMLL9wc6SnmMiDGqQkRybrpau143oa3SaIoMGWuF2JplbKEwhUbVvLPLXKwVGkuxFRwZLNeQASrf-pH4k0GGccJywENP0BIbo/s1600/%25E8%2594%25A12.jpg" /></a></div>未だに収拾の見通しがつかない福島原発問題がきっかけとなり、今や原発の安全性の問題は世界的な規模での広がりを見せている。そんな中でWall Street Journalによる Scores of Reactors in Quake Zones(地震地帯にある原発の評価)と言う調査結果は一見に値する。WJSによれば World Nuclear Associationの原発に関するデータを使い、世界の 400以上の現存する原発と、更に100以上の建設予定の原発の中から地震活動地域に的を絞りその危険度の分析を行ったものだ。<br />
<br />
その結果、世界の原発全体の約20%の90の原発が地震活動地域にあり、そのうちの8%である34の原発が高危険度であるとしている。問題はこの高危険度の34の原発のうちの 30が日本と台湾にある事だ。また更にその34の原発のうちの 17の原発(福島を含む)が海岸線から 1マイル以内の沿岸地域にあって地震と津波の両方の危険性があるとしている。<br />
<br />
この34の高危険度の原発の中で日本と台湾以外としては、米国のカリフォルニア州の2箇所(1箇所は廃炉)とアルメニア、スロベニアの各一箇所がある。つまり事実上、世界の中で「地震と原発」という面からの危険度が日本と台湾に集中しているという事だ。日本の原発だけに限れば、福島、浜岡をはじめ女川、美浜、敦賀等とほぼ軒並みで高危険度とされていて、日本の原発のあり方についてはこれから国内で色々議論がなされると思うが、もう一つの危険国台湾での動きは参考になる。<br />
<br />
台湾の原発は1970年代末から稼動開始し、既に3箇所あって北部の新竹市(旧台北県)に2箇所、南部の屏東県に1箇所が稼動中である。更に4箇所目が屏東県で99年に着工されたものの、その後原発反対の動きをしていた民進党政権の成立や、国民党が多数を制する立法院との対立から推進と反対が二転三転して現在も完工されていない。<br />
<br />
台湾の原発論議でここに来ての新たな動きは、2012年の総統選挙で民進党からの最有力候補である蔡英文主席(女性)が「2025年までの原発全廃」を打ち出している事である。建設中の第4原発を運転させず、第1-3原発を40年の稼動年限ごとに区切って2025年までには全廃するという計画だ。<br />
<br />
台湾は日本同様にエネルギー源の自給率が3%と極端に低く(日本は 5%)、果たして経済発展をした台湾が原発なしで充分な電力源を確保できるのかどうかが疑問視されているが、総統選挙を機会に日本の先を行くこの原発廃止議論が台湾国内で活発化されるのかどうか、日本も注視すべきだ。<br />
<br />
蔡英文氏は台湾南部の屏東県生まれで、台湾大学法学部卒後コーネル大やロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで学んだ知的エリートであり、同じ客家出身の李登輝前総統の秘蔵っ子とも言われている民進党の若手ホープである。陳水扁政権では行政院副院長(副首相)を務め、2008年の立法院選、総統選での敗北後、野党となった民進党の主席に選ばれている。<br />
<br />
台湾政治の舵取りは難しい。中国という大国とは政治面では対峙しつつも、経済面では今や切っても切れないパートナーであり、かつこの中国の存在で国際社会からは孤立状態に追い込まれ、また中国に併呑される危機にもある。そうした困難な局面の中で、野党の立場から政権復帰を狙うのが蔡英文氏の民進党だ。蔡英文氏の持つクリーンイメージと同様に台湾という近代国家が、その国のシンボルカラーである緑(中華民国を是とする国民党はシンボルカラーが藍)の様な「核なき緑の国」に果たして成り得るのかが今後注目される。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-4400871715160478212011-04-15T16:08:00.000-07:002011-04-15T16:15:27.860-07:00村山内閣との類似性<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgc0PSx-W40IDI0UcGOn0VXHbJIRZvUdgR9sIpDpiXa_ObX3QNbocgMApY9wtakxQdV6QnfQ1-C-NPeK70S_1uzdYJaYrf1Aq0oRkLi02iQKL1aSFYbZzCa1kJhDSFggYeZfSVCPdz5NVs/s1600/%25E6%259D%2591%25E5%25B1%25B1.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" r6="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEgc0PSx-W40IDI0UcGOn0VXHbJIRZvUdgR9sIpDpiXa_ObX3QNbocgMApY9wtakxQdV6QnfQ1-C-NPeK70S_1uzdYJaYrf1Aq0oRkLi02iQKL1aSFYbZzCa1kJhDSFggYeZfSVCPdz5NVs/s1600/%25E6%259D%2591%25E5%25B1%25B1.jpg" /></a></div>今回の東北地方の大震災で「よりによってこの内閣の時に」と、阪神大震災の時の村山内閣の事を思い出された方は少なくないだろう。阪神大震災での村山氏は自衛隊の派遣等で全てが後手後手にまわった事に関して「何分にも初めての事なもので」という馬鹿げた発言で国民の激しい批判を浴び、支持率が急落した。現在の菅内閣が1994年6月に成立したその村山内閣に似ているという指摘がよくなされる。後手後手にまわる「危機対応」ぶりは確かに同じであるが、これ以外の共通点としては「反小沢」であり、もう一つは「外交音痴」であろう。<br />
<br />
今から振り返れば15年前のたった1年半の「村山内閣」というのは一体何だったんだろうと思う。この村山氏ほど首相になる legitimacy(正当性)がない人物はなかっただろう。何故、村山氏が首相になったかは言うまでもなく数合わせの論理の結果だ。つまり、(1) 細川・羽田連立政権での真の実力者である小沢氏が羽田政権樹立時に「社会党・さきがけはずし」を図った事と、(2) 同時に政権復帰を狙う自民党がこの社会党・さきがけという反小沢氏の動きの二党との連立工作をしたのがきっかけである。そもそも小沢派による細川政権の「理念なき野合」が、あい続いで反小沢派による村山政権の「理念なき野合」を作り出したのだ。<br />
<br />
そもそも細川連立政権成立時に社会党が加わったのは自民党政権時代のもとでは同党が70名という最大野党勢力であったからだ。自民党を離党し、反自民党の結集という事で数合わせ上、小沢氏はこの社会党とも手を組む事を決めたのである。そこにおける小沢氏の読みとしては、社会党が連立政権としての数合わせ上は重要であり、また一方では冷戦体制終結で既に賞味期限が切れていて政党としての力を無くししていた事にある。後に「踏まれてもついていきます下駄の雪」と揶揄されるほど細川政権下では小沢氏に舐めきられていたのだ。<br />
<br />
首相として何の功績もなかった村山氏でも戦後50年の節目の1995年に出された「村山談話」だけは有名だ。いわく戦前の日本が植民地支配と侵略によってアジアの国々に多大の損害と苦痛を与えてと言う内容だ。まさに国論を二分するとも言われる歴史観問題ではそれまでにはない踏み込んだ発言だ。この首相談話の内容は村山氏の考えもさる事ながらそこには外務省の意向が色濃く出ているのではないかと思われる。その背景にあるのは鄧小平氏の後継として1993年に全ての権力を手中に収めた江沢民氏による「反日姿勢」の中国にある。<br />
<br />
1989年の天安門事件の民主化の動きに危機感を抱いた江沢民氏は共産党一党独裁体制維持の為の正当化根拠を「反日」に定めたのである。それ以来日本の外務省の対中国交渉では何事につけ中国側からこの「歴史問題」を引き合いに出されて困難を極めた。外交官の頭の中にあるのは必ずしも国家第一ではなく、いかに与えられた仕事を波風立てずそつなくこなすかの官僚的発想だ。そういう彼らには国家観がなく外交音痴の村山首相の登場は渡りに船である。首相談話は首相一人が了承すれば議会の承認がなくとも公表されるものであるので、これがあれば中国、韓国の反日国との外交交渉はスムーズに進むのだ。現在の外交官の中でも村山首相を評価する人が少なからずいるのは、ひとえに村山氏が外交音痴で外務官僚の言いなりで操れる無能の宰相であったからだろう。<br />
<br />
村山氏にとっての労働者は菅氏にとっての市民である。いずれの首相にも共通するのは「労働者ありき、市民ありき」で「国家」なるものが意識にない事にある。そもそも外交とは国家の利益即ち国益と国益がぶつかり合う場であるから、国家観のない首相に外交を担当する資格はない。実際、イタリアのナポリサミットでは晩餐会で各国の首脳が食事に会話にと和やかな雰囲気が作られた中で、普段日本食しか食べる事が出来ない村山首相は終始一切食事には手をつけず全くの招かれざる客であったとの事だ。そもそも村山氏には外交どころか外国とか外国文化といったものにさえ触れる興味と機会はなかった様であるから、外交舞台でいかに振舞うかも知らないリーダーではお話にならない。<br />
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90年代の村山氏はまさに現在の菅氏である。現在の主要な外交交渉の相手は中国だけではない。同盟国である米国こそ常に衣の袖の下に見え隠れするのは鎧であるから、菅内閣そのものが国家の危機である事は言うまでもない。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-2390723710547394490.post-53540700875686206572011-04-14T16:26:00.000-07:002011-04-14T17:45:32.806-07:00米国の財政赤字<div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"></div><div class="separator" style="clear: both; text-align: center;"><a href="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg63J2jZTrm3_-N-MH09vbavrTnBGlAchnOWz2rgyGYNyxW2jYcWXq3DU9yPe1QoGQ4shF0tnhyphenhyphenVCWeMv-5NeeHJN3qwclHdKj31Kqsfr_4JZZITJYfWZ1_eIJ9dxSHm1qmZVIdY_P6aA4/s1600/US+Financial+Deficit.jpg" imageanchor="1" style="margin-left: 1em; margin-right: 1em;"><img border="0" height="199" r6="true" src="https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEg63J2jZTrm3_-N-MH09vbavrTnBGlAchnOWz2rgyGYNyxW2jYcWXq3DU9yPe1QoGQ4shF0tnhyphenhyphenVCWeMv-5NeeHJN3qwclHdKj31Kqsfr_4JZZITJYfWZ1_eIJ9dxSHm1qmZVIdY_P6aA4/s320/US+Financial+Deficit.jpg" width="320" /></a></div>オバマ大統領は13日、今後12年間で4兆ドル(340兆円)の財政赤字削減策を目指す計画を発表した。現在の財政赤字幅の対GDP比 11%を2015年までに 2.5%以内に抑えるというものだが実現は難しいだろう。因みに2010年度で各国の財政赤字対GDP比は日本が 9.8%、米国が11%、PIGSのアイルランド12.2%、スペイン 10.4%、ポルトガル 8.8%、ギリシャ 8.1%である。<br />
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日本の場合の財政赤字は、国債の殆どを国内の金融機関が引受ける事で賄われており、その原資の殆どが国内資金である所が米国との違いだ。これがゆえに日本は政府債務残高が世界一でありながら、一方では対外純資産残高では世界一の債権国と言う結果となっている。米国の場合は国債の引受先を中国、日本はじめ諸外国に依存している為に、政府債務残高では世界でトップクラスであり、かつ対外債務残高でもダントツの世界一の債務国である。<br />
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米国の財政赤字額をグラフ化するといかに驚くべきものかが一目瞭然だ。それは 2008年9月のリーマンショック以降、2009年度(2009年9月末まで)が 1.4兆ドルと2000年以降の水準である 平均 0.3兆ドルの5倍近くに急増しており、続く2010年度も1.6兆ドルと更に過去最高記録を更新する見込みだ。また、これによって連邦政府の累積債務残高は昨年2月に米議会が連邦債務上限法で決めた上限の14.3兆ドルを4月には越えるほどの勢いで膨らんでいる。 また債務残高のGDP比ではこれも史上最高の100%(政府保有の金融資産込みのグロス)となる見込みだ。因みに日本の政府債務残高は約10兆ドルでGDP比約180%(同じくグロス)である。<br />
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オバマ政権側ではこの上限の引上げを議会に求めているが財政の健全化を主張する多数派の共和党は反対の姿勢を示しており、このままだと米国債の発行や利払いに支障を来たして米国債に対する信用問題につながりかねない危機的状況だ。<br />
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この財政赤字の悪化は言うまでもなく、(1) リーマンショック後の景気後退による税収減と7,870億ドルの景気刺激策の歳出増 (2) それ以前からの高齢化と医療費高騰による医療・社会保障費の増大 (3) 2001年、2003年に11年間総額 1.7兆ドルの大型減税を実施した事(1998-2001年の 4年間はいわゆる冷戦終結に伴う平和の配当として財政黒字になった事から) (4) イラク戦争、アフガン戦争の戦費は累計で1兆ドルに達している事、これらが主因である。<br />
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歳出面を項目別にグラフ化すれば、これも一目瞭然であるが、(1) 医療費(高齢者と低所得者への援助) (2) 社会保障費(年金等) (3) 国防費 (4) 国債利払い、これら4項目で実に歳出全体の 72%を占めていて、この中でも医療費と社会保障費の合計は42%と全体の半分近くになっている。歳出項目を大別すれば、Entitlementと言われる社会保障費等の「義務的支出」(法律で毎年の歳出額が自動的に決まる)と、国防費や一般経費などの「裁量的支出」(毎年ごとに立法措置で歳出額が決まる)となるが、義務的支出には Pay-As-You-Go条項という財源確保条件が付けられていて、支出を増加させる場合はそれに見合う増税か歳出削減がなされていなければならない。<br />
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オバマ大統領としては、この Entitlement(義務的支出)の削減に手を付け、更には裁量的支出の国防費等の伸びを凍結する計画である。いずれにせよ、共和党の主張する財政の健全化と大型減税か、あるいはオバマ政権の目指す景気と雇用の回復か、この辺のバランスが難しいところであり、これが当面の与野党の駆引きの焦点だ。Takao Grosshttp://www.blogger.com/profile/04665091813495199765noreply@blogger.com0